ニュース&トピックス レポート|薬学部 分子生物物理学教室の三島教授に研究の魅力を伺いました

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2024.03.12

―分子生物物理学について教えてください。

私たち生き物の体は、細胞でできています。細胞の中には、核やミトコンドリアなどの細胞内小器官があり、それらの機能を担っているのは、DNAやタンパク質です。では、DNAやタンパク質って、何でしょうか。高校で生物や化学を学習した人は、これらが構造式で描かれているのを見たことがあると思います。構造式で書くことができる、そう、DNAもタンパク質も「分子」なのです。分子生物物理学(Molecular Biophysics)とは、1900年頃、物理学者が、遺伝の仕組みなどの生物学の問題を解明しようと参入して創った生物物理学に端を発します。生物物理学はミクロから、個体・集団レベルまで多岐にわたりますが、分子レベルに着目したのが分子生物物理学(構造生物学とも呼ばれます)です。大きな基礎の成果としては、半世紀前のDNAの二重らせん構造の提唱があり、応用面では最近の薬分子のデザインへとつながります。

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―三島先生と分子生物物理学との出会いを教えてください。

生き物を理解するために、マクロな観察でなく、分子の観点で理解したら面白いのではないか、そんなことを高校生のころに思っていました。そのころ『生物物理の最前線』(講談社)、『原子(もの)が生命(いのち)に転じるとき』(光文社)という本に出会いました。迷いはなくなり、物理・化学・生物を広く深く勉強したいと思い薬学部に進学しました。学部生のときは、あえて物理化学の研究室に所属し、大学院では開学したばかりの大学院大学で、活気あふれる構造生物学研究に身を置きました。クローニングされたばかりの遺伝子から、組み換えタンパク質をつくり、その分子構造を調べる。世界で初めて、自分がそのかたちを知り、「あー、こういう官能基(アミノ酸側鎖)の配置だから、あんな機能が発揮できるんだ」、と読み解いたときの、震えるような感動…、一生、この分野の研究から離れられなくなりました。

―現在の研究と教室名に込めた思いを教えてください。

「分子生物物理学」と聞くと、物理と生物と分子(化学)の境界領域として、これらの単語を苦し紛れにくっつけて作った新たな造語のように思うかもしれません。それは全くの誤解です。分子生物物理学とはMolecular Biophysicsの直訳で、欧米では伝統的な学問分野です(検索エンジンで英語で調べてみましょう。どんな大学に設置されているでしょうか)。基礎学問ですが、その成果であるタンパク質の分子構造(構造生物学)の知見は、即、創薬のヒントとなります。薬学部の中に、Molecular Biophysicsの看板を掲げた基礎の教室があること、これこそ将来に向けて大変重要な意義があると思っています。

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―今後の抱負を教えてください。

分子生物物理学教室の総力を挙げ、多次元NMR法(三島、武田)、X線結晶構造解析(永江)、中性子構造解析(永江、茨城大・JAXAとの共同研究による微小重力空間(宇宙)での結晶化)、有機合成(青山)や生化学(全員)のテクニックを駆使して、タンパク質分子の構造解析を推進します。生命現象や、疾患の仕組みの解明(医学)や、薬のデザインの基礎(薬学)に貢献する構造解析を行います。また、タンパク質分子の構造形成のしくみに関する新たな知見を見出しつつあり(新たなタイプの水素結合)、その普遍性、仕組みの理解を確立させます。何より、一緒に研究する仲間から世界で活躍できる人材を輩出させたいと思います。

―受験生へのメッセージをお願いします。

医学や薬学で重要となる生命現象とは、生体内で、化学反応が効率よく進行し、精緻に制御され集積したもの。ですから、医学や薬学に興味があったら、化学の基礎を固めましょう。さまざま解析法を理解するには物理が役立ちます。そして解くべき謎は、体のなか(生物)につまっています。いのちの不思議を、私達と一緒に分子を見る目で解き明かして、薬づくりや治療へつなげませんか?

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本件に関するお問い合わせ

東京薬科大学 広報課