ニュース&トピックス レポート|薬学部 機能形態学教室の大滝教授に機能形態学について伺いました

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2024.04.16

―機能形態学について教えてください。

機能形態学と聞いて何か難しそうと思うかもしれません。実は機能形態学は、私たちが生まれてからずっと実践してきた学問かも知れません。私たちは、子供の頃から「目で見る」、「耳で聞く」、「食べ物を食べるとおなか一杯になる」、「夜になると眠くなる」ということを知っています。機能形態学は、この様な、正しい体の成り立ち(場所)や働きを知る学問です。しかし、それらが正しく働かないと生活に支障をきたします。一般的に、それを病気と呼んでいます。その病気の治療を目指す私たち医療人にとって、正しく体について知ることは、「初めの一歩」です。また患者を中心に考える現在のチーム医療にとって、体(患者)を知ることは、医師・薬剤師・看護師・臨床検査技師などの医療に携わる者の唯一無二の共通言語です。

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―大滝先生と機能形態学との出会いを教えてください。

私と機能形態学(解剖生理学)の出会いは、もう25年近く前になります。大学院(当時の修士課程)に進学していた私は、生化学的な研究結果を学会で発表した際、出席者から「それで体は治るの?」と問われました。病気の診断などに使用する数値である生化パラメータの改善が、体を治すこととイコールだと考えていた私にとって、「体を治す」ということの本質的な意味を考える大きなきっかけとなりました。その後、製薬会社において新薬の開発に携わりましたが、体のことを知らずして薬を創ることはできないと思い、医学部の解剖学教室の博士課程に進学しました。それからも何度となく多くの先生方に「それで体は治るの?」という問いを投げかけられながら、日々その答えを出すために向き合っています。今もなお、講義や研究の中から新しい発見があり、体の奥深さに驚く毎日です。

―現在の研究について教えてください。

現在は、私たちのヒトの活動を支えるメインコンピュータである脳神経系に関する研究をしています。アプローチは様々ですが、一貫しているのは加齢や生活の中にあるストレスが、私たちの脳にどのように影響し、その後の認知症や治療法がない神経変性疾患の引き金を見つけることです。そして、ストレスの要因や付随する体の中の要因をできるだけ早期に見つけ、それを取り除く方法を見つけることにより、多くの神経変性疾患の予防や治療が可能になるのだろうと思います。それは最終的に私たちに健康な老化を導くことを可能にするのではないかと考えています。

006 ootaki3 900.jpgアルツハイマー型認知症患者の脳の細胞に見られる老人斑(図の青色)

―今後の抱負を教えてください。

脳は、私たちヒトの発展の源となっている器官ですが、まだまだ分からないことだらけです。脳の老化やストレスに対する影響を調べることにより、脳の異常を世界中の研究者と共に明らかにしていきたいです。これは一生かけても尽きない研究の課題であろうと思います。それを皆さんと分かち合い、次の世代へ継承していくことをしていきたいと思います。

―受験生へのメッセージをお願いします。

「ヒトの体を知る」ことは全ての科学の根源であると思います。そして私たち自身の根幹をなすものです。私たちの興味も喜びも挫折も私たちの体が起こすイベントです。研究も臨床もゴールは同じ、目の前の患者を救うため、50年後の患者も救うため、私たちと共にミクロの旅をしましょう。

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東京薬科大学 入試・広報センター