原 慎太朗

薬学部 医療薬学科 5年(取材当時)

群馬県立前橋高等学校出身

医療機関での研究から見えてきた理想の薬剤師像

乾癬の抑制・予防を目指して

私は、東京医科大学八王子医療センターで乾癬(かんせん)の抑制・予防の研究に取り組んでいます。乾癬の患者数は全国に40~50万人いるとも言われ、抑制法や予防法が待ち望まれている疾患の1つです。「乾癬」と聞くと“皮膚の病気”という印象が強いかもしれませんが、実際には「全身性の炎症疾患」と考えられています。関節炎や肥満、循環器系の疾患、うつ病など様々な疾患を併発するからです。そのため、乾癬の患者は健常な方と比べて平均寿命が約6年短いという衝撃的なデータもあります。私自身も皮膚の難病と長年向き合っており、皮膚の炎症の悪化、関節炎、肥満、心疾患と進む「乾癬の負のサイクル」を断ち切りたいと考えています。そこで私は、卒論教室に医療機関で研究と臨床を学べる医療実務薬学教室を選びました。現在は、東京医科大学八王子医療センター内にある研究室で、皮膚科の医師である加藤雪彦先生の指導のもと、マウスに有酸素運動や筋肉トレーニング、糖尿病の薬などを組み合わせて実施し、乾癬による皮膚の炎症を効果的に抑制・予防できる方法を研究しています。

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成果を待つ患者さんの存在が研究の原動力に

私が医療機関に赴いて実施する研究を選んでよかったと感じる1番の理由は、加藤先生の診察や手術などを間近で見学できることです。診察では私も終末期の患者さんと話させていただいたり、許可を頂いて患部に触らせていただいたりと臨床現場ならではの貴重な学びを経験しています。患者さんと話すことも多いため、相手を不安にさせないような話し方や姿勢が身につくとともに、私自身が学ばせていただくという謙虚な気持ちで診察に同席しています。身近に研究成果を待ち望む患者さんの存在を感じられることも私が研究を進めるうえで、大きな原動力になっています。加えて、時には数週間で命を奪う薬疹(薬の服用や注射で起こる発疹)の種類や治療法、被疑薬特定のための検査など、薬学生の私が医師の視点で学べる機会が多くあります。医師の目線で道筋をつけて病態を分析する思考法は、将来、薬剤師になってからも必ず生きる力であり、臨床に強い東薬を選んでよかったと日々実感しています。

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ジェネラリストの薬剤師を目指して

私が1年生の頃から講義で聞いていた「薬剤師はジェネラリスト」の意味を理解したのは、医師である加藤先生の言葉がきっかけでした。加藤先生の「薬剤師はカルテを通して全体的なデータを見る力がある。その力が医師や医療関係者を助け、治療の精度を上げてくれる」という言葉に、医療現場における薬剤師の重要性を実感するとともに、薬学生であることにも誇りを感じました。

私は、将来、病院薬剤師になりたいと考えています。様々な診療科を経験し、幅広い視野から複合的に課題を解決できる「ジェネラリストの薬剤師」を目指しています。患者さんはもちろん病院内のスタッフに「薬のことはあの人に聞こう」と頼りにされる存在になることが理想です。また、臨床での研究経験を生かし、患者さんと研究者を繋げる医療者でありたいと思います。私自身も皮膚の難病患者の立場で病気について調べた時、得られる情報に限界があることに歯がゆさを感じていました。患者でもあり病院薬剤師でもある私だからこそできる方法で最新の正しい情報を患者さんに伝え、治療を支える力になっていきたいと考えています。

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