ニュース&トピックス レポート|薬学部 臨床薬理学教室の鈴木教授に臨床薬理学について伺いました

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2024.02.09

臨床薬理学について教えてください。

薬理学と聞くと新たな薬理作用の解明や、薬理作用に基づく新たな知見を探索する研究を想像すると思います。当研究室名は薬理学の前に「臨床」という言葉が付いています。これは医療現場で起こる治療や副作用に関する問題点を、薬理学的な視点から解決するための研究を行う分野を表しています。医療現場に出向き実際の患者さんのデータを解析することで、治療効果の高い薬物や副作用が重篤化しやすい患者さんの傾向等がわかります。重要なのはその原因となる背景であり、患者さん個々の代謝排泄機能の違いや、遺伝情報などの視点から問題解決につながる研究を行っていきます。

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―鈴木先生と臨床薬理学との出会いを教えてください。

私は医療機関在籍時に、臨床業務と並行し抗がん薬の悪心嘔吐予防に関する新たな治療法の開発に関わってきました。病棟業務において当時最適と思われる予防制吐療法を実施しても、まったく症状のない方もいれば、何度も嘔吐を繰り返す患者さんに出会いました。同じ抗がん薬、制吐薬を用いても、症状がこれほど大きく異なることに疑問を抱き、その原因を探索する研究を行いました。この研究では患者さんに採血を行い、大学の協力を得て遺伝情報の解析と臨床症状との関連性を調査しました。その結果、ある特定の遺伝情報を持つ患者さんでは、悪心嘔吐発現率が極めて低いことがわかりました。この経験から、画一的な薬物治療には限界があると同時に、薬の効きやすさを事前に確認することができれば、より適切かつ経済的な治療薬の選択が治療前に実施できる可能性があることに気づきました。これらの経験が臨床薬理学を意識した大きなきっかけの一つであることは間違いありません。

―現在の研究と教室名に込めた思いを教えてください。

抗がん薬治療においては遺伝情報をもとに治療薬を選択する技術、すなわち、個別化医療がすでに臨床導入されています。しかしながら副作用管理における個別化医療はほとんど進化していないのが現状です。また免疫チェックポイント阻害薬のような新規抗がん薬では、臨床効果ばかりが注目されますが、副作用や薬物間相互作用などの情報は乏しく安全に使用するための情報は極めて不十分です。がん薬物治療では抗腫瘍効果とともに副作用の予防や治療を上手に施行することが表裏一体であり、両立してはじめて良好な治療効果に繋がります。患者さんの苦痛を最低限に抑えながら最大限の効果を得られるような治療法の確立を目指したいと考えます。

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―今後の抱負を教えてください。

私がこれまでに培った全国のがん専門病院や大学病院等との研究ネットワークを活かし、今後も引き続き薬物治療の向上に直結する臨床研究を行いたいと考えます。薬剤師の手で世界中のがん患者さんに役立つ治療法の開発を目指します。

―受験生へのメッセージをお願いします。

全国の医療機関に勤務するがん専門医や薬剤師と連携して、治療効果を保持しながらも抗がん薬の副作用を克服するための全国規模の臨床研究に興味がある方、日本のみならず世界のがん患者さんのために役立つ研究を行い、将来のために社会貢献したいという希望を持つ方は、ぜひ我々と一緒に研究しましょう。

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本件に関するお問い合わせ

東京薬科大学 広報課