ニュース&トピックス “いつでもどこでもだれでも”高感度バイオマーカー計測!!--1 cm 角キュベットを利用する“その場”イムノアッセイ法|プレスリリース

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2022.04.27

プレスリリース

“いつでもどこでもだれでも”高感度バイオマーカー計測!!--1 cm 角キュベットを利用する“その場”イムノアッセイ法

東京薬科大学薬学部 生体分析化学教室の東海林敦准教授,森岡和大助教,薬学部6年生中村好花さんの研究チームは、東海光学株式会社の加藤祐史氏,熊谷直也氏との共同研究で、市販の1cm角キュベットを試料セルとして利用するイムノアッセイ法を開発しました。この方法は,多くの生体分子を吸着できるジャングルジム形状の3Dプリント構造体と、ポータブル蛍光光度計FC-1を使用して、生体試料中の微量バイオマーカーを高感度に計測できます。本法は、検査設備が充実していない診療所や屋外などでも容易に実施できるため、高度医療を実現するための計測技術として発展が期待されます。

ポイント

  • 容易に入手できる市販の 1 cm角キュベットを試料セルとして使用するイムノアッセイ法を開発しました。
  • 表面積が大きいジャングルジム構造体の表面に抗体を固定化することで、目的とする生体分子(バイオマーカー)を大量に捕捉することができます。
  • 血中の炎症マーカーとして知られるC反応性タンパク(CRP)を本法で高感度に測定することに成功しました。
  • 本法は、単純な操作で、バッテリー駆動の小型蛍光光度計を使用して測定できるため、いつでもどこでもだれでも‘その場’で実施できます。医療検査だけでなく、食品検査や環境分析などにも利用可能です。

概要

 高度な医療を患者に提供するために、血液や尿などの生体試料に含まれるバイオマーカーを計測することはとても重要です。イムノアッセイ法は、バイオマーカーを計測するための代表的な分析手法であり、大型病院などで日常的に検査に利用されています。一方で、中小規模の医療施設では、バイオマーカーの計測を外部施設に委託することも多く、検査結果を取得するために数日ほど要することもあります。より迅速にバイオマーカーを計測して結果を取得するために、“その場”で計測できる高性能な小型分析装置を利用した、高感度なイムノアッセイ法の開発が望まれてきました。
 私たちの研究グループは、東海光学株式会社の加藤氏,熊谷氏と共同研究を進め、ジャングルジム構造体(図 1a)とポータブル蛍光光度計FC-1 (東海光学製)(図 1b)を用いて、市販の 1 cm 角キュベットを試料セルとして利用するイムノアッセイ法を開発しました。本法により、血中の炎症マーカーとして知られる C 反応性タンパク(CRP)をモデルとする実証実験を行いました(図 2)。

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 まず、血清中の CRP をジャングルジム構造体 に結合させます。そのジャングルジム構造体に酵素標識抗 CRP を結合させた後、試料セル内の基質溶液に浸すと酵素反応が進行します。酵素反応で生じる物質の蛍光強度をポータブル蛍光光度計で測定することで、CRP が血清中に“どのくらいの量含まれているか”を明らかにできます。

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本法は、以下のような特徴があります。

  1. 小型(30 mm×140 mm×62 mm)で軽量(600 g)、バッテリー駆動(単三乾電池2本)可能なポータブル蛍光光度計を使用します。
  2. 市販の1 cm 角のキュベットを試料セルとして使用します。
  3. 表面積の大きいジャングルジム構造体(表面積:1.1×103 mm2)を抗体固定化媒体に利用することで、より多くの CRP 分子を捕捉でき、検出感度が向上します。

 開発したイムノアッセイ法は、熟練したスキルは不要で単純な操作で実施できるので、いつでもどこでもだれでも“その場”でバイオマーカーを計測できます。例えば、居宅やクリニック、災害時の避難場所など、検査施設が充実していない場所での医療検査に大いに役立ちます。また、医療検査のみならず、河川や土壌中の環境汚染物質の測定や、食品中のアレルゲン物質の検出など、様々な用途に利用できる分析技術として発展が期待されます。
 この研究成果は、本学の生体分析化学教室 東海林敦准教授、森岡和大助教、中村好花さん(6年生)の研究グループと、東海光学株式会社 加藤祐史氏、熊谷直也氏との共同研究により得られたものあり、日本分析化学会から発行されている和文誌「分析化学」で公開されています。また、本論文は同誌の 2021 年「分析化学」産業技術論文賞を受賞いたしました。

ジャングルジム型構造体を抗体固定化媒体とする簡易ELISAシステムの開発

熊谷 直也, 森岡 和大, 中村 好花, 千明 大悟, 北谷 菜津美, 加藤 祐史, 東海林 敦

分析化学, 70(12), 721-728 (2021)
DOI: https://doi.org/10.2116/bunsekikagaku.70.721
分析イノベーション交流会
http://bunseki-innovation.net/result_220426.html
東海光学株式会社 ポータブル蛍光光度計FC-1

https://www.tokaioptical.com/products/optical_technology/fc-1/

 

関連リンク

【取材に関するお問い合わせ先】

東京薬科大学 総務部 広報課

【研究に関するお問い合わせ先】

東京薬科大学 薬学部 生体分析化学教室 准教授 東海林敦