学部紹介 学部長からのメッセージ

生命の普遍的な真理を求めて

生命科学は20世紀後半に長足の進歩を遂げました。生命科学の一分野である医学分野も近年急激な進歩を遂げ、例えば、20年前までは有効な治療法が存在しなかった進行癌も、新しい抗がん剤や免疫療法の開発によって、その予後が著しく改善しました。一方で、医学・薬学分野にも環境分野にも、生命科学の力を持ってしても未だに解決できない課題が多く存在しています。さらに、昨今の新型コロナウイルス感染症は、我々の生活に多大な影響を及ぼす深刻な課題を生命科学に突きつけています。生命科学分野は、より良い人類の未来を築くための課題に溢れています。

生命科学の様々な課題の解決を困難にしている要因の一つは、生物の多様性です。多様な進化を遂げたそれぞれの生物種は、独自の自己複製法や生存戦略を有しています。その複雑さゆえに、研究者はこれまでに、生物種や個体差を超えた普遍的な原則を数えるほどしか発見できていません。生命科学の多くの研究者は、解析技術が飛躍的に進んだ現在でも、それぞれの生物、組織、細胞が織りなす一つ一つの現象を丁寧に観察し、その因果を明らかにするという地道な努力を続けています。これらの地道な努力による知の蓄積の先に、まだ見ぬ普遍的な原理の発見があることを期待して、日々研究に邁進しているのです。

tanaka1-1.jpg生命科学部長 田中 正人

私たちの学部は、1994年に我が国最初の生命科学部として設立されました。設立当初より、生命科学が包含する医学・薬学・理学・農学・工学の各分野の教員が一堂に会し、複雑な生命現象を学際的に解析することで、その謎を解明することを目指してきました。学生は、充実した研究環境のもと、世界の第一線で活躍する教員とともに生命科学の諸課題に真剣に取り組むことで、生命科学の広範な知識と技術を身につけるとともに、未来を自ら切り拓くための課題解決能力を身につけていきます。設立以来、約4600人の学生が卒業し、大学や研究所、製薬関連・化粧品・食品・化学・IT等のさまざまな企業、あるいは教員や公務員として活躍しています。

本学を卒業した学生が、生命科学の急速な発展を支え、その成果を社会に還元する人材として活躍するためには、従来の生命科学の枠組みを超えた様々な知識や技術の習得、並びに、国際的な枠組みで協調的に行動できる素養が必要とされています。生命科学部では、そのような社会的要請に応えることを目的として、国際的人材の養成を目指すグローバルキャリアプログラム、研究成果とビジネスを結びつけるアントレプレナー養成プログラム、生命科学分野においてもその重要度が飛躍的に高まっているデータサイエンスプログラムの3つのプログラムを新たに創設しました。生命科学部は、これらのプログラムを通して、生命科学を基盤とした様々なキャリアに挑戦する人材の育成をサポートしていきます。

おかげさまで、生命科学部は、設立以来極めて高い進学率と就職率を維持して参りました。これは、個々の学生の弛まぬ努力に加えて、OB、OGの皆様、大学関係者や地域の皆様方の心温まるご支援のおかげと感謝しております。今後も、生命科学の未来を担う人材の育成と研究を通じた社会貢献に、ますます努力して参りますので、変わらぬご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

生命科学部長 田中 正人