学科紹介 環境浄化

環境浄化とは、汚染された環境から汚染物を除去し、元の環境に戻すことである。人類の産業活動などに伴い、自然には起きないようなレベルで環境中に物質が蓄積し、生態系に影響を与えることがある。汚染が進むと、ヒトの健康に影響が及ぶ場合もある。このような場合には、環境浄化を行わなければならない。

環境浄化には、物理的手法、化学的手法、生物学的手法がある。物理学的手法とは、抽出、揮発、焼却、などの物理学的手段により汚染物質を除去する手法である。例えば、多環芳香族化合物で重度に汚染されたガス乾留工場跡地の土壌は焼却処理されている。化学的手法とは、化学反応や化学物質を用いて汚染物質を除去する手法である。例えば、海上に流出した油に対し界面活性剤を散布して分散処理が行われる。

生物学的手法は、汚染物質の除去に生物を用いるもので、バイオレメディエーションと呼ばれている。バイオレメディエーションが一躍注目を集めたのは、アラスカで起きたタンカー座礁事故後の油汚染の浄化の際である。この際には、海洋に存在する油分解菌を活性化するために、窒素とリンを含む肥料が汚染海岸に散布された。また、重金属の除去を目的としたバイオレメディエーションでは、微生物により金属を酸化・還元し、沈殿または溶解させることにより除去する。このようにバイオレメディエーションでは、汚染物質を分解または変換する微生物を利用するのが一般的であるが、植物を用いたファイトレメディエーションも知られている。汚染現場に存在する微生物を活性化して浄化を促進させる手法はバイオスティミュレーション、人工的に培養して汚染現場に添加する手法はバイオオーグメンテーションと呼ばれる。バイオレメディエーションの利点は、それ自体の環境影響が小さいこと、比較的低コストなこと、現場での浄化に適していること、などが挙げられる。一方、環境中での微生物の挙動を把握し、効果的に利用するには高度な技術が必要である。微生物の研究を進め、より有効なバイオレメディエーション法が開発されてくることが望まれている。