学科紹介 高度好熱菌

大腸菌などの腸内細菌は動物の体温付近が生育に適した温度です。発酵に利用される酵母菌は10〜25℃でよく生育します。このように微生物にはそれぞれに最適な温度というものがありますが、中には70℃や90℃といったとてつもない高温を好む細菌がいます。

一般に55℃以上で生育できる細菌を好熱菌といい、生育の上限温度が75℃以上のものを高度好熱菌、90℃以上のものを超好熱菌と呼んでいます。普通の生物が高温では死滅してしまうのは、細胞を構成するタンパク質(酵素)が熱で壊れてしまう(熱変性といいます)ためで、熱に強いタンパク質を持っている高度好熱菌は古くから興味を持たれ、今日でもタンパク質研究の対象になっています。

高度好熱菌のタンパク質は高温でも機能しますが、それだけで生育が可能な訳ではありません。遺伝子DNAは高温条件下では加水分解や酸化などの化学的反応を受けやすく、損傷を受けたDNAを元通りに直す仕組みがとても重要になってきます。食品科学研究室別ウィンドウで開きますでは、高度好熱菌の一種であるThermus thermophiles(サーマス・サーモフィラス菌)を用いて、そのDNA修復酵素の特性に着目して研究を行っています。

微生物を培養するための寒天培地プレート。
75℃で増殖する高度好熱菌を扱うときは、水分の蒸発を防ぐためビニールテープで密封する必要がある。