学科紹介 生態系

生態系とは、生物が、その生物を取り巻く環境との間で行うやりとりを一つのシステムとして考えた系である。多くの生物種のまとまりである生物群集と、水や空気、土壌などの無機環境は分かちがたく結びついている。草原の草は、空気中の二酸化炭素と土壌中の水から太陽の光エネルギーによって炭水化物(澱粉)を作り、大きくなる。草が大きくなることによって、少し日陰ができ、土壌中の水分が蒸発しにくくなり、飛んできた木の種子が発芽し芽を伸ばす環境へと変化する。木の芽生えが大きくなり樹木になると、樹冠によって太陽の光がさえぎられて涼しくなり、地面には落ち葉が積もり、落ち葉が分解されて栄養分と水分が豊かな土壌へと変化する。このような生態系での生物と環境との関係は、栄養分のやりとりや、物質循環、生物多様性など多方面に及ぶ相互作用である。

栄養分のやりとりから考えてみよう。太陽の光エネルギーによって光合成を行う生物は、独立栄養生物と呼ばれる。他の生物は、独立栄養生物を食べて栄養分をとる、従属栄養生物である。他の生物の遺体などを分解して無機物にする、分解者も生態系では重要な働きをする。独立栄養生物は、生態系での栄養段階の第一歩であると同時に、光合成により地球へ新しい酸素を供給することでも重要である。光合成の詳しい仕組みや進化の歴史を解明して環境改善に応用する研究が、環境応答植物学研究室で行われている。分解者の機能を、排水処理やバイオマスエネルギーに利用する研究が、生命エネルギー工学研究室で行われている。環境と生物とのやりとりが始まった始原生物の姿を明らかにする研究が、極限環境生物学研究室で行われている。

生態系は自律的で安定だと考えられているが、人間活動によりさまざまな影響を受けている。その地域にいなかった生物が持ち込まれる外来種問題も生態系をゆるがす問題である。4万年前に石狩低地帯が陸化することによって2つの島であった北海道が一つになり、違った遺伝的構成を持つ生物間で遺伝子浸透が始まった。この遺伝子浸透を調べて、数万年単位での外来種の影響を明らかにする研究が生態学研究室で行われている。人間活動は有害物質を環境中へ放出してきた。微量な物質の分析と追跡が、生命分析化学研究室で行われている。また微量な物質が生物に与える影響を、遺伝子レベルで調べる研究が、ミジンコや微生物を材料に応用微生物学研究室で行われている。環境応用動物学研究室では、環境ホルモンが生物に与える影響を遺伝子レベルで研究している。以上のように、応用生命科学科では生態系に影響するさまざま問題を取り上げて活発に研究している。