学科紹介 組織再生・再生医療

失った手を取り戻したい。失った視力を取り戻したい。そのような願いは、皆さんが共感できる人類共通の願いです。

骨折した骨はやがてつながり、すりむいた傷もやがて治るなど、人間の組織は部分的には再生可能です。しかし、失った手と全く同じ手が再びできるような完全再生は現在のところできません。一方、広く動物界に目を転じると、さまざまな生き物に組織の再生能力を見いだすことができます。イモリの仲間は、失った手足を再生することができますし、眼球も再生します。プラナリアという体長が1cmほどの動物は体を10個ぐらいに切断しても完全に元通りの形をした10個体のプラナリアに再生します。タコやカタツムリなどの軟体動物も強力な組織再生能力を持っていることが知られています。

ノーベル賞を受賞された山中伸弥先生が開発したiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いると人間の組織を完全再生できるのではと期待されています。しかし、そこには多くの困難も予想されます。

もしかしたら、カタツムリ、イモリやプラナリヤの強力な組織再生の仕組みを知ると、人間の組織再生の困難を乗り越えるヒントが得られるかもしれません。山中先生のiPS細胞の開発にもガードン先生(山中先生とノーベル賞の共同受賞者)のカエルの研究がヒントになりました。

環境応用動物学研究室(環境ストレス生理学研究室)別ウィンドウで開きますでは、カタツムリの仲間の軟体動物(イボニシ)の組織再生の仕組みを研究しています。この研究もやがて人間の組織再生や再生医療の技術開発の役に立つかもしれません。

イボニシの2本ある触角の一方を切断してもやがて触角は再生する。
赤丸で切断したところから触角が再生する様子を示した。
3週間程度で切断した触角は完全に再生する。