学科紹介 微生物・微生物利用

“微生物”とは目に見えないほど小さな生物をまとめて表現したもの。生物学的には、原核生物である細菌や、カビや酵母などの菌類、原生動物や微細藻類などの原生生物といったさまざまな生物群を含んでいる。ウイルスのように細胞ではないものでも、“微生物”として扱う場合もあり、病気や生活に関連が深いことから、社会の人々が微生物に関する正しい知識を持つことは、健康的な生活を送るために極めて重要なものとなっている。

増殖がはやいものも多く、培養液の中で育つことから液体として定量的に扱える場合が多いこと、さらには多細胞生物と異なって細胞の機能分化がほとんどないため生命の基本的な現象の解析が容易なことなどから、これまで多くの研究に用いられてきた。

DNAの遺伝情報を明らかにする研究の初期には、大腸菌が多くの研究室で用いられた。原核生物の遺伝情報について理解が進んだ後、真核生物での遺伝情報を理解するために研究材料となったのが、酵母である。生命科学の本質が理解できるようになると、高等動植物を用いた研究が盛んにおこなわれるようになった。生命科学の礎は微生物によると言っても過言ではない。今日でも、DNAの増幅など、研究の手法の一つとして、大腸菌が広く用いられている。

一方、微生物一つ一つは小さいけれど、私たち人間の生活にさまざまな形で関係する。例えば、病原菌。食中毒でO157やO111が原因になることがあり、赤痢やコレラ、マラリアなど感染性の病気の原因に細菌や原生動物が関与することが多い。ノロウイルスやインフルエンザウイルスなどのウイルスは、細胞ではないが、食中毒や病気を引き起こすことから、上述のように “微生物”として扱うことも多いのである。

微生物の中には、人に喜びや楽しみを与えてくれるものも多い。味噌や醤油、そして納豆、ヨーグルト、パン、さらには、お酒なども微生物が作り出すものである。多くは発酵という現象が関連するが、食品産業や製薬産業ではアミノ酸や抗生物質も微生物を利用している。

工業廃水の処理に利用される活性汚泥や石油分解菌など、環境浄化に用いられる場合もある。最近では、自然エネルギーからバイオマス資源の生産に微細藻類が利用できるのではないかという期待から、次々世代のバイオ燃料生産の研究が進められている。

バイオマス資源の生産へ 利用が期待される微細藻類