学科紹介 分子生命科学科:キーワード解説

分子生命科学科
生物有機化学研究室
分子神経科学研究室
生命分析化学研究室
生物情報科学研究室
創薬化学研究室
生命物理科学研究室
言語科学研究室
細胞情報科学研究室

生体中の分子の機能(Function of Biomolecules)

ヒトを含め、すべての生物、すべての細胞はいろいろな分子でできています。細胞の中でそれぞれの分子はどのように働いているのでしょうか。例えば、有機高分子である酵素が化学反応を行って有機低分子を代謝することでエネルギーを取り出しています。無機イオンは細胞内の浸透圧を維持する他に、酵素の成分として、あるいは細胞内で情報を伝える物質として機能しています。分子と分子の物理的な相互作用によって細胞内のいろいろな構造が形成され、細胞間のコミュニケーションが生まれ、さらに脳のような高次の機能が実現されます。こうした仕組みには、私たちがまだ知らないこともたくさんあります。

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化粧品(Cosmetics)

化粧品とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚や毛髪をすこやかに保つことを目的とするものである。身体に塗ったり、散布したり、その他これらに類似する方法で使用される。また、人体に対する作用が緩和なものである。このような化粧品についての定義は、薬事法第二条第三項に記載されている。

化粧品の成分は主に有機化合物であり、保水性や粘性、色、香りなど、それらの様々な化学的性質・物理的性質・生物化学的性質が重要である。化粧品開発の研究には、有機化学、物理化学、分析化学、さらには細胞生物学などの知識や技術が欠かせない。

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脳科学 (Brain Science)

脳科学とは、脳と心の関係を扱う学問です。物質である脳がどのようにして精神現象を可能にしているのかという、古くからの哲学的問題を科学的に扱います。20年ほど前まえまでは、科学的にこの問題を扱うことは困難で、神経科学者がこの問題をまじめに扱いだすと「あの人も終わりだな、年だからな」といわれかねませんでした。今では分子生物学やイメージング技術の進歩などによって脳活動や行動を観測・操作する手法が発達し、人間ばかりでなく実験動物を使った研究が盛んに行われています。例えば脳神経機能学研究室ではショウジョウバエが視覚刺激に対して行動を起こす際の「ゆらぎ」の原因に興味を持ち、生きたハエの視覚系ニューロン(B)からLEDによる回転視覚刺激に対する神経活動を記録し(A)、特定の調節性ニューロン群の活動を抑えたり高めたりすることの影響を調べています。昆虫の脳と人の脳はびっくりするほどに共通のメカニズムで働いていることが分かってきています。解明が遅れている精神疾患の原因は、むしろショウジョウバエやヒドラなどの単純な神経系の研究から明らかとなってくるのかも知れません。

(A)生きたハエの神経活動を捉える
(B)視覚系ニューロン(LPTC)

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分子・細胞の機能

細胞は生命を構成する基本単位であり、DNAやRNA、タンパク質、糖質、脂質をはじめとする数多くの分子から成る。細胞はそれ自身が持つ遺伝情報に基づき、様々な機能を持つ生体高分子を作り出している。これらの生体高分子の協調的な働きの上に生命活動は成り立っている。

私たちの体を構成する細胞には、小胞体やゴルジ体、ミトコンドリア、エンドソーム、リソソームなど様々なオルガネラが存在し、それぞれが固有の機能を担っている。例えば、小胞体はタンパク質や脂質の合成や輸送、カルシウムイオンの貯蔵、アポトーシス(自発的な細胞死)、オートファジー(細胞内の不要なタンパク質などを分解する仕組み)などに働く。また、ミトコンドリアは好気呼吸により生命活動のエネルギー源であるATPを産生する。ゴルジ体は、分泌タンパク質などの糖鎖修飾や、タンパク質を選別し各オルガネラへと振り分ける輸送の中継基地としての機能を果たしている。

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医薬品開発

医薬品開発は、まず医薬品の候補となりうる生物活性を持つ有機化合物(生物活性物質)の発見や創製から始まる。そのような有機化合物を見つけ出すために、天然素材(植物・動物・微生物等)からの抽出や、化学合成、バイオテクノロジーなどの多様な科学技術を駆使した手法が用いられる。生物活性を持つ有機化合物が発見された場合でも、さらにその物質の薬効や安全性はもちろんのこと、体内への吸収や分布・代謝・排泄などの性質を最適化する必要がある。医薬品開発においては、こうした性質を十分なものにするため合成化学的な手法により、最適化を行うことがある。このようにして発見および創製された医薬品候補化合物を用いて前臨床(動物実験)を行い、前臨床を通過した化合物を実際に人に投与して有効性と安全性を確認する臨床試験を行う。

生命科学部分子生命科学科では、植物などの天然素材から新規生物活性物質を見つけ出す研究や生物活性物質の化学合成や最適化といった研究が行われている。

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分子計算(Molecular calculation)

タンパク質やDNAなど生命活動を担う分子(生体高分子)は、化学構造だけでなく特有の立体構造をもつという特徴がある。この立体構造は、分子の働き(生理機能)と密接な関係があり、酸やアルカリ、熱などによって立体構造が破壊される(変性)と、分子としての機能も失われる(失活)。したがって、生命現象を分子レベルで理解するには、その立体構造を把握することが不可欠となる。生体高分子の立体構造は、X線結晶解析や電子顕微鏡によって直接形状をとらえたり、核磁気共鳴(NMR)分光法によって分子を構成する原子間の距離情報を集めて求めることができる。また、分子や原子の世界を支配する物理学の法則に基づいて、立体構造を形成する際のエネルギーを正確に計算することにより、安定な構造を予測することができる。新規医薬品をデザインするときにも、標的となる疾患関連タンパク質の立体構造の情報が必要である。

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医薬品(Drugs and Medicines)

病気の予防や治療に用いるもので、日本薬局方に収められているもの。医薬品のほとんどは有機化合物であり、単純な化合物から化学合成により作られる。これまでに多くの医薬品が開発されてきたが、いまだ効果的な医薬品が開発されていない疾病も多く、その治療薬の開発が望まれている。

小児用バファリン(第2類医薬品)と、本医薬品の主成分であり代表的な解熱鎮痛薬のアセトアミノフェン

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有機合成化学(Synthetic Organic Chemistry)

有機化合物を合成するための方法を開発する学問分野。単純な有機化合物から、官能基変換や新たな炭素?炭素結合を作りながら有機化合物を組み立て、複雑な構造をもつ有機化合物の合成法を開発する。有機合成化学を修得すれば、医薬品をはじめとするさまざまな機能性有機分子の開発が可能となる。

生物有機化学研究室で軟体サンゴより発見し、化学合成を達成した天然有機化合物。
分子式C4H8O2の化合物を出発物質とし、26回の化学変化をへて化学合成を達成。

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天然有機化合物(Natural Organic Compound)

微生物、植物、動物などの生物が、その生体内で作り上げる有機化合物。油脂や糖、アミノ酸などを出発原料とし、生体内で数十段階における酵素反応により合成される。天然有機化合物には、複雑な構造を有する化合物が多数存在する。その多くが生理活性を有しており、新しい医薬品開発のための候補化合物となる。

生物有機化学研修室で化学合成を検討している、生理活性を有する天然有機化合物の例。
ここに示した化合物は、植物や動物の生体内で酵素の働きにより、酢酸誘導体から合成されている。

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ショウジョウバエ(Drosophila)

ハエ目ショウジョウバエ科の節足動物。脳神経機能学研究室で用いているのは、そのうちのキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)。代表的な無脊椎動物のモデル動物。遺伝学的手法の開発が盛んに行われ、突然変異体の解析、機能分子の同定・解析などにより、多くの研究成果が得られた。単に、無脊椎動物にとどまらず、広く脊椎動物にも当てはまる機構の発見へと広がる研究が多くなされている。代表的な例として、動物発生において重要な遺伝子群、ホメオボックス遺伝子の発見が挙げられる。飼育が容易で、世代交代が早い(25度で2週間程度)ことも、モデル生物としての利用が広がった理由の一つである。

視運動反応測定中の
ショウジョウバエ

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微小脳(MicroBrain)

節足動物の脳のこと。これに対して、脊椎動物の脳を巨大脳と呼ぶことがある。微小脳は文字通り小さな脳であり、それを構築する神経細胞の数が少ない。しかし、巨大脳と共通した仕組みも見られ、脳の情報処理の基本原理を理解するための良い実験系となるのではないかと考えられている。

ラット脳(巨大脳)海馬スライス標本と
ショウジョウバエの脳 (上川内博士撮影)

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シナプス(Synapse)

神経細胞と神経細胞あるいは筋肉細胞が接触し、情報を伝える場。神経伝達物質を情報伝達に用いる化学シナプスと、直接、細胞間をイオンが通り抜けることができるギャップ結合と呼ばれる結合様式を持つ電気シナプスがある。脳の機能を考える上で、重要な機能単位である。

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分光分析(Spectroscopic Analysis)

光を分光器で分解して波長別に並べたものをスペクトルと呼びます。物質には、それぞれ固有の波長の光を吸収または放射する性質があります。物質が吸収または放射する光のスペクトルを測定することにより、その物質を検出したり存在量を量ったりすることを分光分析といいます。

生命科学の分野では、タンパク質や核酸(紫外線を吸収する)をはじめとした多くの生体物質の存在量を測定するために、紫外可視分光分析が盛んに利用されています。近年では、抗体に蛍光標識を付けて、抗原となる特定の生体物質の存在量や分布を2次元または3次元で画像化するような用途にも分光分析の技術が使用されています。また、分子の構造を調べるために、 X 線分光分析・赤外分光分析・核磁気共鳴分析なども利用されます。

蛍光相関分光法は、観察体積からの蛍光物質の逃散過程から、蛍光試料の形状や大きさを測定するもので、生命分析化学研究室では、タンパク質等の生体高分子による金属変性等を計測するため、蛍光相関法などをつかった分光分析法の開発を行っています。私達が解析した装置を用い、様々な観察体積の蛍光相関法を創出し、大腸菌に対する薬剤によるサイズ変化、円石藻の殻の有無によるる流体学的運動変化、色素分子のブラウン運動に基づく液体の粘度測定、蛍光標識したタンパク質(モノクロナール抗体)の金属変性等を調べています。

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原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)

原子間力顕微鏡とは、探針と試料表面相互作用から、10-6mから10-10mの表面の凹凸を検出する顕微鏡である。探針(カンチレバーとも呼ばれる:先端が10-9m程度)が試料表面をなぞると、試料表面の凹凸に対応して探針が動くので、その動きを測定する。走査型顕微鏡の一種である。探針が、表面の原子に近付くと、原子間力によって試料表面に引き寄せられる。この探針の動きをレーザー光等の反射で検出する方法や、圧電素子によって探針を振動させながら、試料表面の原子に近づけた時に、原子間力が働いて探針の振動数が変化するのを検出する方法、探針を試料に接触させ、探針のしなりを測定する方法などがある。探針としてカーボンナノチューブを用いる方法も存在する。AFM(Atomic Force Microscope)と略され、原子・分子の配列が観察できる。当初は、固体試料の観察が主流であったが、生体試料や溶液への応用も行われている。

AFM本体(左)とカンチレバー(右)

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質量分析(Mass spectrometry)

質量分析とは、原子や分子の質量を測定する方法です。質量は、質量分析装置によって測定します。質量分析装置は、イオン化部、質量分離部、検出部から構成されています。イオン化部では、試料(分子や原子)をイオン化(帯電)します。イオン化した分子や原子を真空中の電場で加速して質量分離部に導入します。質量分離部は高真空で、イオン(イオン化した分子や原子)を電磁場を利用して分離します。質量の大きいイオンは動きにくく、電荷の大きいイオンは動きやすいので、イオンは質量と電荷の比(質量電荷比,m / z)にしたがって分離します。分離したイオンの量(イオン強度)を検出部で測定します。測定されたイオンの量を質量電荷比に対してグラフ化したものを質量スペクトルといいます。質量スペクトルから、イオンの分子量がわかります。たとえばイオンの荷数が1だと仮定すると図の質量スペクトルから、分子量が3495から3503のイオンが10種類混じっていることがわかります。これは、インスリンというペプチドホルモンの一部(ベータ?鎖)の質量スペクトルです。このイオンを構成する原子(炭素、水素、酸素、窒素)がいくつかの同位体(異なる質量数をもつ原子)からできている事を考えると、この質量スペクトルが一種類の化合物(インシュリンベーター鎖)のものであることがわかります。このように、質量スペクトルを測定すると試料がどのような物質であるのか決めることが可能となります。

従来、生命科学の分野で扱うタンパク質や核酸などの高分子はイオン化が難しく、質量分析はできませんでした。これは、大きな分子のイオン化には大きなイオン化エネルギーが必要で、大きなエネルギーを与えると分子が壊れてしまうためです。近年、生体高分子を壊すことなくイオン化する方法が開発されました。この方法はマトリックス支援レーザーイオン化(MALDI)法と呼ばれています。この方法は日本人の田中耕一氏ら(島津製作所)によって発明されました。田中耕一氏はこの業績が認められ2002年ノーベル化学賞を受賞しました。アメリカ人のジョン・フェン氏らは別のイオン化法としてエレクトロスプレーイオン化(ESI)法を確立しました。現在では、これらの方法を用いて生体分子の質量が測定できるようになっています。

今や質量分析は、生命活動に重要な物質、環境汚染物質、病気の原因となる物質を特定したり量を測定したりする手段として欠くことのできない分析法となっています。

(青木、山岸)

Insulin oxidized β chain の質量スペクトル

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ファイコレメディエーション(Phycoremediation)

ファイコレメディエーションとは、藻類が水中から養分を濃縮する能力を利用して、汚染された水環境から汚染物を除去し、元の環境に戻す環境浄化手法のことである。汚染物質の除去に藻類(光合成生物)を用いることから、バイオレメディエーション(生物による環境修復)およびファイトレメディエーション(植物による環境修復)の一形態である。

ファイコレメディエーションの利点は、水環境中の汚染物質処理が低コストで可能なこと、スラッジ(汚泥)が非常に少ないまたは無いこと、光合成作用により溶存酸素量を増加させること、浄化と同時に温室効果をもたらすCO2を低減できること、増殖した藻類バイオマスがバイオ燃料として利用可能なこと、など多岐にわたる。

現在世界でその枯渇が危惧されている一方で水圏環境の富栄養化の原因ともされるリンを河川・湖沼等から藻類により回収する技術開発も行なわれている。また、 藻類は水中の金属を濃縮する能力にも優れていることが知られており、そのメカニズムや環境影響を研究することは、ファイコレメディエーションによる重金属除去技術の発展に寄与するものと考えられる。

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ドラッグデザイン(Drug Design)

医薬品となる化合物分子を設計すること。通常は、標的疾患の原因となるタンパク質分子の立体構造に基づき、物理化学、計算科学の手法を用いて論理的にデザインする。詳細については、生物情報科学研究室の教員が執筆・監訳した下記の書籍が参考になります。

図 現在の医薬品開発の一般的方法

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バイオインフォマティクス(Bioinformatics)

生命情報科学(生物情報科学)とも訳される。生命科学と情報科学の境界領域の研究分野。ヒトゲノム計画の進行や、その後のポストゲノム研究により蓄積された世界的規模のデータベースの中から、意味のある生物情報を抽出し、創薬や医療等に役立てることを意図している。

鋳型タンパク質のアミノ酸配列との相同性に基づいて予測した、癌に関連するタンパク質の立体構造モデル
(アラインメント、構造とも一部のみ示した)

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X線小角散乱(Small-Angle X-ray Scattering)

X線溶液散乱とも呼ばれ、SAXSと略される。試料溶液にX線を照射し、散乱強度の角度分布から試料内の分子構造に関する情報を解析する方法。溶液中の生体高分子の立体構造を簡便・迅速に測定する手法として、近年注目を集めている。通常は、高エネルギー加速器研究機構(つくば)やSPring-8(播磨)の大型放射光を用いて測定する。

SAXSの光学系(上)とSAXSビームラインの内部(下)

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老化(Aging)

動物個体は、加齢にともなって様々な機能が低下し、生存力や繁殖力が衰える。老化(エイジング)とは、こうした機能低下や、その過程のことを指す。抗老化(アンチエイジング)とは、老化を防ぐような予防医学、あるいはそれに関連した行為のことである。老化や抗老化は古来より人々の関心を集めて来たテーマであるが、科学的な理解はあまり進んでいなかった。近年、モデル生物を用いた研究から、老化や抗老化の分子機構が次第に明らかにされるようになって来た。また、様々な動物種を用いた実験から、栄養のバランスを保った上での低カロリー摂取が平均寿命や最大寿命を延長することが知られている。

老化の原因には、突然変異累積説や活性酸素説などのように生体に傷害が蓄積することによって機能低下が起こるとする考え方と、細胞の分裂回数には限界があるといったことに基づくプログラム説など、従来より諸説がある。遺伝子レベルではモデル生物として線虫を用いた研究が進んでおり、百を超える遺伝子が老化や寿命に関連するものとして知られている。こうしたモデル生物を用いた研究から、老化を遅延したり抑制したりする生物学的メカニズムが知られつつある。

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バイオイメージング(Bioimaging)

「バイオイメージング」とは、そのままでは見ることのできない生体内の分子の挙動を、生きたままの状態で観察できるようにする技術のことを指す。

DNAやタンパク質、あるいは脂質といった生体を構成する分子は一般的に色がついていない。すなわち、可視光を吸収したり発したりすることはない。そのため、細胞や組織、個体レベルで分子そのものを肉眼で観察することは不可能である。そのような分子を見えるようにする技術(バイオイメージング)は、生命科学領域の研究にきわめて有用である。

生命科学において最も汎用されているバイオイメージングは、「蛍光」を原理としたものである。バイオイメージングのツールには、タンパク性の分子としてはGreen Fluorescent Protein(GFP:緑色蛍光タンパク、2008年のノーベル化によっ学賞の対象)、低分子化合物としてはフルオレセインやローダミンなどが汎用されている。見たい分子をGFPやフルオレセインなどの蛍光分子て標識(ラベル)することで、生体内の分子の挙動をリアルタイムで観察することが可能となる。また、蛍光分子の原理を応用することにより、特定の酵素や生理活性分子との反応により蛍光特性(蛍光強度や波長)が変化がする「蛍光プローブ」が数多く開発されている。

低分子型蛍光プローブによるHeLa細胞の薬物代謝酵素活性イメージング

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生物活性物質(Bioactive substance)

生体に作用して何らかの生物反応を起こす化合物を生物活性物質と呼ぶ。

医薬品は薬事法の第2条第1項で定義されるが、その多くは、人または動物の疾病の診断、治療や予防のために投与される生物活性物質と言うことができる。医薬品開発の最初の段階として、目的の生物活性をもった物質を探索することが必要である。これは、目的に応じた試験(アッセイ)法を用いて、天然に由来する化合物や合成された化合物をスクリーニングすることにより見出される。しかし、医薬品として開発するには、薬効や安全性はもちろんのこと、体内への吸収や分布・代謝・排泄における性質、安定性や経済性などの多くの条件を満たさなければならない。従って、生物活性を示す物質のすべてが医薬品開発のシーズとなるわけではない。医薬品開発においては、こうした条件を満たすために合成化学的な展開が可能な化合物をリード化合物として選択し、最適化を行う。

天然薬理活性を持つ生物活性物質を基に合成された合成医薬品例

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コンピュータ(Computer)

コンピュータは、一定の手順(アルゴリズム)を使って、計算などの処理を行う機械のことである。生命科学においても、タンパク質のアミノ酸配列や構造の情報が記録されているデータベースや、タンパク質の液体中での構造や動きを計算するシミュレーションなど、コンピュータは広く使われている。コンピュータと生命科学の両方に優れた人材が必要とされていて、就職の機会も多い。

(写真:コンピュータ・シミュレーションに取り組む大学院生)

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タンパク質(Protein)

タンパク質は RNA 上の遺伝情報に基づいて順序が決まる20種のアミノ酸が結合した一本鎖である。各アミノ酸を特徴づける側鎖とよばれる分子構造の間に電荷による相互作用、分極による相互作用、側鎖の親水性、疎水性に基づく相互作用、水素結合が複合的に働いて、一本鎖の部分的な構造、部分的な構造間の立体配置(モジュール)、モジュール間の立体配置のそれぞれが特有の構造をもつことにより、生体内で機能を発揮する。

(図:癌原遺伝子タンパク質Hras と GTP の複合体)

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生命現象(Biological Process)

生き物が生きた状態にある時に示す固有の現象を表す。典型的な生命現象としては、「自己複製」、「エネルギー代謝」、「死」、「進化」などがある。コンピュータにおける計算能力の向上と共に、生命現象を物理学や数学、生化学の視点から説明しようとする研究として、人工生命(Artificial Life)と呼ばれる分野もある。物理学者シュレーディンガーが発した「生命とは何か」という問いが現在の分子生物学を生み出したように、コンピュータを用いた生命現象の研究は、新しい生命科学を誕生させる可能性がある。

(図:バクテリアコロニーの形成過程)

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応用言語学(Applied Linguistics)

世界に数千(数を特定することが大変難しいので大雑把です)ある人間の言語の様々な面(形=文法、音、意味等)を研究するのが言語学ですが、その知見を言語習得の教育に応用しようとするのが応用言語学です。

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第二言語習得論(Second Language Acquisition)

私達人間が第一言語である母語を獲得したあとに、第二の言語(往々にして外国語ですが)を習得しようとした時、そこには第一言語を習得したときと違った様々な現象が起こります。人間がどのように第二の言語を自分のものとしてゆくか、を見つめるのが第二言語習得論といえるでしょう。

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言語教育(Language Pedagogy)

文字通り言語を教えることで母語教育も含みますが、ここでは特に、人が第二言語をどう獲得するか、脳科学の知見やモチベーションの理論などを応用し、言語の何を、いつ、どのように教えるかを研究します。

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細胞小器官(オルガネラ)

真核細胞は、内部に膜で区切られたさまざまな細胞小器官をもつ。細胞小器官には、全ての真核細胞が持つ核、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、ペルオキシソームなどに加えて、植物細胞だけがもつ葉緑体、液胞などがある。それぞれの細胞小器官は異なる機能をもつ。細胞小器官の欠損や機能障害は、細胞に異常をもたらし、生物個体では器官の機能不全や病気の原因となる。

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メンブレントラフィック(小胞輸送)

タンパク質は、細胞小器官の間を「メンブレントラフィック」とよばれる物質輸送システムで輸送される(図参照)。このシステムでは、タンパク質が脂質の小さな袋(小胞とよばれる)の内部に含まれて、細胞内を移動する。

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慢性骨髄性白血病
chronic myelogenous leukemia(CML)

慢性骨髄性白血病は、染色体の転座によりBCR遺伝子とAbl遺伝子座が融合することによって生成されるBCR-ABLタンパク質が原因と考えられている。

BCR-ABLタンパク質は、活性が亢進したチロシンリン酸化酵素である。BCR-ABLタンパク質の酵素活性を阻害する化合物としてグリベックが開発された。グリベックは最初の分子標的薬であり、現在慢性骨髄性白血病の治療薬として広く使われている。

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チロシンリン酸化酵素(チロシンキナーゼ)

タンパク質のチロシン残基をリン酸化する酵素の総称である。細胞質内にあるSrcやAblなどのタイプと、膜貫通型のEGF 受容体などのタイプに分かれる。チロシンリン酸化酵素は細胞内シグナル伝達にはたらき、様々な刺激を媒介して細胞の増殖や細胞骨格をコントロールする。

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