ニュース&トピックス 分子生命科学科 教員インタビュー 第1回 伊藤 昭博 先生

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2019.05.18

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分子生命科学科 教員インタビュー第1回 伊藤 昭博 先生
インタビュワー 小林 咲里奈(分子生物化学研究室 修士2年(当時))

小林:今日はよろしくおねがいします  色々とお話聞かせてください

伊藤:こちらこそよろしくおねがいします


タンパクの翻訳後修飾とは?小林さん2.JPG

小林:早速ですが、先生の主宰する細胞情報科学研究室では、どのような研究をしているんですか?

伊藤:タンパク質の翻訳後修飾に興味を持ち、タンパク質のリジン翻訳後修飾に関する研究をしています

小林:翻訳後修飾、授業で習いました  改めて、どのようなものでしょうか? なぜ翻訳後修飾に着目しているのでしょうか?

伊藤:翻訳後修飾とは、細胞内でタンパク質が機能するための化学的な修飾のことです
生命現象には様々なタンパク質が引き起こしていますが、その多くはタンパク質が合成(翻訳)されてから起こる様々な修飾によって調節されています  つまり、タンパク質は翻訳後修飾されることによって、初めてその機能が発揮できるからです

小林:なるほど、タンパク質は作られた後に翻訳後修飾が起こることが、その機能にとても大事だということですね 病気との関わりはどうなんでしょうか?

伊藤:下にある絵にも示しましたが、翻訳後修飾の異常は、がんなどの様々な病気の原因になることが知られています  したがって、あるタンパク質の翻訳後修飾やその役割、その仕組みが分かれば様々な生命現象機構の解明に繋がります

翻訳後修飾図.jpg

小林:化合物を使って翻訳後修飾を自由自在に操るとは!そんな事が可能になるかもしれないのですね!
具体的にはどういった研究テーマを行っているんですか?

伊藤:そこで、細胞情報科学研究室では大きく2つの研究テーマを進めています
一つは、タンパク質のリジン残基上で起こるアセチル化や新しい修飾である長鎖アシル化修飾の研究、もう一つは、それら翻訳後修飾を標的とした化合物の探索と創薬研究です

小林:つまり、「生物の仕組みを明らかにする」ことと、「その仕組みを操る化合物や薬を探す」という研究を行っているんですね


東京薬科大学での研究

伊藤(昭)先生1.JPG小林:先生は以前まで理化学研究所(理研)にいらっしゃいましたよね?なぜ理研から東京薬科大学に環境を変えたのですか?

伊藤:研究室のトップとして、自分の責任で好きな研究をしてみたいからです
理研時代にもかなり自由にさせてもらいましたが、やっぱり自分の責任で好きな研究をやれる立場になってみたいと思いました  私立大学の中では、この大学の研究レベルは高く研究環境も良いといろいろな人から話を聞きて、魅力的だと思ったからため、東京薬科大学の生命科学部の教授というポジションです

小林:大学に来て、不自由さはありましたか?

伊藤:来て見てびっくりしたのですが、東京薬科大学の研究設備はかなり整っていて、ほとんど不自由がありません

小林:生命科学部の研究環境はどうですか?

伊藤:研究テーマによっては、有機化学など私と異なる専門分野の先生からの助言や共同研究が必要になります   そういう場合、生物に加えて、化学、物理の専門家の先生が在籍している生命科学部は、私にとっては非常にやりやすい研究環境だと思っています



小林さん1.JPG小林:そうなんですか  他の場所から来られた先生から見ても、うちの大学は研究するには恵まれた環境なのですね!

伊藤:一方、膨大な化合物コレクションの中から目的の活性を持つ化合物を見つけ出すという、化合物スクリーニングの実験は理化学研究所で行っています

実際、私の研究室の4年生は理化学研究所で化合物スクリーニングの実験をしています  将来的には、東京薬科大学でも化合物スクリーニングできるようなれたら良いですよね 

小林:先生の研究室では、学生が理研で研究しているのですね!研究をやりたい学生さんにとってはすごく羨ましい経験ですね。 逆に良かったことは何ですか?

伊藤:やはり学生さんと話しながら、自分の好きな研究できることが楽しいですね。


研究室は家族的なもの

伊藤(昭)先生2.JPG小林:ところで、研究者に向いているのはどんな人だと思いますか?

伊藤:第一に知的好奇心がある人  私が常に大事だと思っているのは知的好奇心だと思ってます

「わからないことを明らかにしたい  世界で初めてのことをしたい。」という情熱や欲求がある人が向いていると思います  研究へのモチベーションはそれだけでいいのではないかと思っています

小林:他にはどんな人が向いていると思いますか?

伊藤:あとは、楽天的がいい  実験はうまくいかないことだらけじゃないですか  その時にやる気をなくしてしまうと行き詰まる  だから楽天的で絶対いつかうまくいくと思える人、継続できる人が向いていると思うんですよ

小林:研究生活で大切なことはどんなことですか?

伊藤:昆虫などの生き物が大好きで、小学生の頃はファーブル昆虫記やシートン動物記が愛読書でした。よく昆虫などを捕まえに行っていました  草むらに入っていって、昆虫を探すのが大好きなんです

今でも、子供と一緒に昆虫やオタマジャクシなどを捕まえに行きますが、子供より熱中してしまうこともあります  あと、小学校から高校まで卓球をしていましたね  8年間していましたので、そこそこ上手だと自負しています

小林:学生にとってどんな存在でありたいですか?

伊藤:お父さんみたいな存在でありたいですね  研究生活って朝から晩までラボにいて、研究室の人といる時間がすごく長いですよね  私自身も家庭よりも研究室で過ごす時間の方が長いですし  なので、研究室は家族的であるべきだと思いますね

テーマはそれぞれ違っても、話し合うことで人間的にも成長していけると思うので、何かあれば気軽に相談できるお父さんみたいな存在でありたいですね

小林:最後に話したいことがあれば、聞かせてください

伊藤:私は学生と研究して何か新しいことをしたいです  学生さんが私の研究室に来てよかったなと思ってくれたらいいですね  ここでいい研究をして、次の場所へ旅立ってくれるような、いいステップのような場所でありたい

さらに研究を通して、学生と教員がwin-winの関係でありたいですね  せっかく東京薬科大学に来たので、薬の種をぜひ創りたい!定年までは17年あるのでそれまでには実現させたいですね


インタビューを終えて

小林:とてもオープンな雰囲気で迎え入れてくださり、終始楽しくお話しさせていただきました  インタビューをして分かったことは、伊藤先生はご自身のゴールを明確に持っていて、そのために人の力を借りることができる方だということです  また、私から見た伊藤先生の印象は「学生との距離間がちょうどいい先生」です  廊下で学生さんと話している場面をよく見かけますし、つかず離れずの適切な距離感が理想的で素晴らしいと思いました



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