ニュース&トピックス 分子生命科学科 教員インタビュー第6回 野口瑶先生

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2021.05.12

分子生命科学科 教員インタビュー第6回 野口 瑶 先生
インタビュワー 青柳 詠美生物情報科学研究室 修士2年)

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本インタビューはZoomにより、オンラインで行われました (写真はイメージです)。

青柳:本日はお話をする機会をいただきまして、ありがとうございます。
今日は、先生の研究との出会いや研究内容についてお聞きしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします

野口:こちらこそ、よろしくお願いします。



研究との出会い

青柳:野口先生が研究者を志望されたきっかけは何ですか?

野口:4年生から修士の時は、基礎生命科学研究室(今の分子生物科学研究室)に在籍しており、外研で国立医薬品食品衛生研究所にいました。そこで計算化学を用いた薬物の作用評価に関するセミナーを受講しました。
 ある薬物の使用を規制する際に、その薬物の化学構造のすべてを規制してしまうと、研究者が似た化学構造の物質を研究することができなくなってしまいます。そこで、研究活動に支障が出ないよう「危険性の高い化学構造だけを規制する」ために、計算化学を用いて薬物の化学構造を明確にしています。そのセミナーがきっかけで計算化学に取り組みたいと考え、博士課程に進学しました。

青柳:野口先生が研究者を志望されたきっかけは何ですか?

野口:抗がん活性のある環状ペプチドRA-VII の動的性質を解析していました。濃度や温度などの条件によって、RA-VII分子がどんな形になり、どのように動くのかを、実験ではなくパソコンを使ってシミュレーションするんです。
 RA-VIIはアカネ科の植物に含まれるペプチドの1つで、二環性の特徴的な構造を持っています。3つの立体構造が分かっていて、その立体構造によって抗がん活性が違うことが知られています。がんに効く立体構造が、溶液中でどのような動的性質を持っているかを知るために、分子動力学シミュレーションを用いて研究していました。

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東薬の先輩から見た東薬の良さ

青柳:少し研究とは話がそれてしまうのですが、学生時代の東薬と今の東薬との違いはありますか?

野口:今も昔も「広く色々な分野を学ぶ」というイメージです。ライフサイエンスだけをやるのであれば「物理学」や「プログラミング」、「情報科学」という科目を、必ずしも学ぶ必要はないかもしれません。でも、東薬ではこれらを科目とすることで、学生さんの活動の選択肢を増やしていています。私が在籍していた当時から生命科学部の良い点だと考えていますし、そういう点は私が在籍していた時とあまり変わらないと思います。

青柳:教員と生徒の向き合い方というか、授業の良いところは変わっていないということですか?

野口:それに関しては、より進化し続けているという印象です。学生さんにわかりやすくするためにはどうしたらいいのか、先生方がいつも試行錯誤していて、授業の内容や方法だけでなく、パソコンやWebの活用など当時よりアップグレードしているように感じます。



機械学習と科学

青柳:先生が所属されていた統計数理研究所(統数研)は、AIの計算システムの機械学習を使って化学構造を予想するなど、今の時代にホットな研究をなされています。先生が統数研で行なっていた研究について聞かせて下さい?

野口:統数研のものづくりデータ科学研究センターで、「マテリアルズインフォマティクス(MI)」を用いて、新しい材料を探索しようとしていました。私は化学構造を文字列で表現するSMILES記法を用いて、組み合わせや確率的自然言語モデルから化学構造のパターンを作ることや機械学習による物性評価に携わっていました。ようするに、新しい材料を探すために,実験するのではなく,化学物質に関する膨大なデータをパソコンで処理してシミュレーションし,新素材の構造や性質を予測していました。
 そこでの研究をライフサイエンスでも活かしたい、そして、データサイエンスに関する教育に携わりたい思い、生命科学部へ来ました。

青柳:その機械学習という話も出ましたが、東薬では「機械学習」という言葉が出てこない印象があるのですが、野口先生はどうやって勉強されたのですか?Noguchi_B.png

野口:私がいた当時は扱っていませんでしたが、今は「情報科学II」でデータサイエンスに関する講義があります。
 私の習得方法は実際に使ってみることが多いです。「とりあえず手を動かしてプログラムを書いてみよう」というような感じで、会得する過程で原理をその都度学んでいます。


学生の皆さんへのエール

青柳:最後になるのですが、学生さんに向けてエールを!

野口:東薬は自分ができることの可能性を広げてくれるところだと思っています。色々なコンテンツを用意していてくれて、自分が「知りたいもの」を見つけることができます。見つけられたら、研究室のようにそれを「深めていく場所」もちゃんとあります。
 また、様々な研究機器や分析機器が学生さんに開放されていて、実践する場もあります。我々教員は、学生さんの「知る機会」と「学ぶ場所」とそれを「実践する機会」を提供しています。学生さんには色々な可能性がある中で飛び込んでみて、自分がやりたいなと思えるものを見つけて深めていって欲しいなと思います。是非、飛び込んでください。

青柳:本日はお忙しい中、ありがとうございました。


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東京薬科大学 生命科学事務課