ニュース&トピックス レポート|薬学部 薬物代謝分子毒性学教室の山折教授を取材しました

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2022.10.14

教授の山折先生に、そもそも毒性学とはどんな研究なのか、毒性学との出会いや教室名に込められた思いなどを伺いました。

―毒性学について教えてください。

薬や化学物質が体の中に取り込まれた後、生体内運命(吸収、分布、代謝、排泄)をたどる過程で、化学物質そのものや代謝物が生体成分と作用することによって生じる、体にとって不都合で好ましくない反応(有害反応)を明らかにし、引き起こされた有害作用(毒性)の発現メカニズムを解明する学問です。さらに、発現メカニズムを化学物質の有害作用(毒性)の予測と、人への障害の未然防止に役立てようとする科学でもあります。
現代毒性学の祖パラケルススは「すべての生体異物は毒であり、毒でないものは存在しない。毒物か薬物かの違いはその用量による」と述べています(医薬品トキシコロジー・改訂第2版・南江堂)。薬(クスリ)も使う量が増えれば毒性(リスク)があらわれますので、適正に使用するための知識や技能を身につけることがとても大切です。

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―山折先生と毒性学との出会いを教えてください。

大学院生の時に、薬の中には肝障害や皮膚障害など重篤な有害作用を引き起こすものや胎児に奇形や発達障害をもたらすようなものが意外に多くあることを知りました。このような毒性のメカニズムを明らかにして、未然に防ぎたいと思ったことが毒性学との出会いです。そして、当時の指導教員の「21世紀は毒性学の時代になる。その研究手法は分子レベルにまで発展し、分子毒性学という新しい分野が切り拓かれていくだろう」との言葉に感銘を受け、自分もこの分野の研究に取り組んでいこうと決意しました。指導教員の言葉通り、現在は毒性学の研究者も増え、毒性学を扱う学術誌のインパクトファクター(学術誌のランクを評価する指標の1つ)も上がり、「毒性学」という分野が注目され、拡大していることを感じています。

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―現在の研究と教室名に込めた思いを教えてください。

妊娠中に投与される薬や曝露される可能性のある化学物質の安全性評価と適正使用に向けた研究を行っています。具体的には、胎児肝臓より単離された細胞を用いて、医薬品、アルコール、タバコ、有機溶剤、乱用薬物、農薬、環境汚染物質など様々な化学物質の曝露評価を行ったり、その応答機構の解明に取り組んだりしています。また、産科領域における医薬品情報の調査も行っています。
教室名の「薬物代謝分子毒性学教室」には、薬物代謝酵素が引き起こす薬や化学物質の毒性メカニズムを分子レベルで明らかにしていきたいという思いが込められています。

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―今後の抱負を教えてください。

大学病院で薬剤師の研究・教育に携わった経験を大きな強みとして、学生が患者さんのために活躍できる薬剤師・薬学研究者になれるよう育てていきたいと考えています。大学病院で働く薬剤師は、患者さんに最適な医療を提供するため、データサイエンスを用いて研究を行い、研究成果を治療に還元しながら次の治療課題を見出し、さらに研究しています。学生には、講義・演習・実習・卒業研究など様々な機会を通じて物事を論理的に考え、自ら問題点を見出して解決する力を身につけられるよう、時には臨床現場の熱い思いも伝えながら日々接しています。

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―受験生へのメッセージをお願いします。

今すぐには分からないかもしれませんが、人は皆、その人にしか果たせない使命を持っているものです。ですから、必要とされていない人間など誰もいません。誰かが自分を必要としてくれていることを自覚できれば、自分の使命を果たすことができます。その使命を見つけるために本学の扉を開いてみませんか。

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本件に関するお問い合わせ

東京薬科大学 広報課