学科紹介 細胞外電子伝達

細胞外電子伝達とは,鉄還元菌などの細菌が細胞外の物質に電子を伝達し,呼吸(嫌気呼吸)を行うプロセスである。

生物が呼吸によってエネルギーを獲得する場合、有機物などの代謝に伴って放出された電子が酸素などの電子受容体に受け渡される。この際,電子供与体(代謝によって生み出されたNADHなど)と電子受容体の酸化還元電位の差に相当するエネルギーが放出され、生物は主にこのエネルギーを利用してATP(細胞内エネルギー物質)を合成している。酸素以外の物質を電子受容体として用いる呼吸を嫌気呼吸といい、酸素のない環境に生息する細菌または古細菌(嫌気性菌)は硝酸、硫酸、二酸化炭素などの物質を電子受容体として利用している。嫌気性細菌のなかには酸化鉄などの固体の金属化合物を電子受容体として呼吸を行うものもおり(鉄還元菌)、このような細菌は細胞外に存在する固体に電子を伝達するための経路(細胞外電子伝達経路)を備えている。細菌の細胞外電子伝達能力は環境浄化やエネルギー生産(微生物燃料電池)に利用することができるため、その基礎メカニズムや応用について着目され、研究が行われている。