岩田 大幹

生命科学部 分子生命科学科 4年(取材当時)

神奈川県立七里ヶ浜高等学校 出身

有機化学ならではの”ものづくり”「全合成」に挑戦|私の学修成果

学修成果

  • 計画力・思考力・忍耐力
  • 有機化学の実験手技
  • 異文化コミュニケーション力
  • プレゼンテーション能力

幅広い分野を学べる生命科学部に惹かれて東薬へ

高校の授業で有機化学が薬を含めた様々な素材を作っていると知り、化学に興味を持ちました。東薬を志望したのは、生命科学部で薬学、農学、食品化学、生物、物理など様々な分野を幅広く学べるうえ、薬学部もあるので、自分の可能性を広げられるのではと思ったからです。私が成長を実感した授業の1つは、1年前期の「生命科学と社会Ⅰ」です。グループワークで企業の問題解決を図り、プレゼンテーションをします。コロナ禍でしたが、毎週グループのみんなとオンラインミーティングを行い、入学早々から課題解決力、コミュニーケーション能力、プレゼンテーション能力等を鍛えることができたと感じています。企業広報の方からもフィードバックをいただき、とても刺激を受けました。もう1つは、3年後期の「有機合成実習」です。化学式でしか知らなかった物質を自分の手で反応させて作り出せたことがとても嬉しかったです。実験の考察や反応後の溶媒の処理技術など、研究と実験手技のベースをしっかり学べたことが現在の研究に大いに役立っています。
※「分子生命科学実習」内のプログラム

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有機化学ならではの “ものづくり”、「全合成」の魅力

有機化学の魅力の1つが「全合成」です。「全合成」とは、植物や微生物などの生物が生体内で作り上げた天然有機化合物を、人工的かつ効率的に作り上げることです。高校生の頃から薬のもとになる物質を作ることを夢見ていた自分にとって、全合成はまさに理想的な研究です。現在は、有機化学に特化した伊藤久央先生の生物有機化学研究室で、卒論研究として医薬品のシーズになる可能性を秘めた物質Phomotide A(フォモタイドエー)の全合成に取り組んでいます。実験では、反応にかかる時間を計算し、反応中の時間も活用して効率的に進めていますが、未知の物質の合成は失敗の連続です。理論上うまく進むはずの反応であっても、予想外の変化を起こすこともたびたびあります。反応がうまく進まない原因を考察し、伊藤先生や大学院生の先輩とディスカッションしたり、海外の論文を読んだりして試行錯誤しながら少しずつ合成を進めて化学式を作り上げています。

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海外での研究室や企業訪問で広がった自分の可能性

コロナ禍で大学生活の思い出が少ない中、私が楽しみにしていたのは、8月に参加したカリフォルニア州立大学サンマルコス校(California State University San Marcos)での6週間の海外研修プログラムです。語学力が身につくだけでなく、現地の研究室に所属して海外の研究現場を経験できることが最大の魅力です。私は異分野の生化学のラボで遺伝子組み換え研究を行ったり、大学院生向けのバイオイントレプレナーの授業で起業家マインドを学びました。バイオベンチャー企業やノーベル賞受賞者も輩出した研究所で、研究者とディスカッションし、有機化学で分析する面白さを知ったことも大きな収穫です。また、社会人のクラスメイトが新しいスキルと学位を修得しながらキャリアアップを目指す姿にも触発されました。常に自分をアップデートしながら挑戦し続ける文化と価値観を知って、キャリアに対する考え方が大きく広がったと感じています。

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道なき道の先にある可能性を目指して

有機化学の実験は、道なき道を探検するような険しいものです。それでも全合成達成を目指し、楽しみながら取り組めているのは、全合成した物質が将来医薬品に使用されたり、合成の過程が他の研究者の道しるべになったりする可能性があるからです。私自身、全合成に取り組んだことで、計画性と思考力、粘り強く取り組む忍耐力が鍛えられました。今後は、大学院に進学し、有機化学と応用の可能性をさらに追及していきたいと考えています。また、海外研修以来、研究職だけでなく、さらに英語のスキルを伸ばすことで、語学力を生かせるMR(医療情報担当者)や薬事職などでも働きたいと考えるようになりました。海外での活躍も視野に入れつつ、研究力、知識、プレゼンテーション力をさらに向上させて、社会で活躍できる人材になれるよう一層精進したいと考えています。

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