ニュース&トピックス 第1回生命科学セミナーが開催されました。

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2019.04.19

第1回 生命科学セミナーをご案内いたします。
多くの皆様の参加をお待ちしています。

第1回 生命科学セミナー

日時 4月24日(水)17時~
場所 研究3号棟12階 セミナー室 G

演題1:「電気を用いた微生物の代謝制御:その基礎と応用」

演者 廣瀬 篤弥さん
生命エネルギー工学研究室 D3

微生物による発酵は古くから食品生産などに利用されてきたが、発酵産物は細胞内の酸化還元バランスがとれる化合物(エタノールや乳酸など)に限られる。そこで近年、自在に物質生産する新しい方法として電気制御発酵法が注目を集めている。これにおいては、電極との間で電子の授受を行う細菌(電気化学活性細菌、EAB)を用いることで、酸化還元バランスがとれない物質も生産できるようになると期待されている。そこで我々は、EABに関する知見を深めることを目的に研究を行い、これまでにEABのモデルであるShewanella oneidensis MR-1株が電極電位に応じて代謝を制御する機構を明らかにした(Hirose et al. 2018. Nat Commun, 9:1038)。また、この機構を用いた遺伝子発現法として電気遺伝学(Electrogenetics)を提案した(Hirose et al. 2019. Biotechnol Adv In press)。これらの成果は、電気制御発酵法におけるEABの代謝制御の根幹となるものと考えられる。本講演では、これまでの成果を紹介するとともに、電気発酵プロセスの可能性について議論する。

演題2:「染色体工学技術によるヒト / マウス人工染色体ベクターの開発と再生医療応用」

演者 宇野 愛海先生
生物工学研究室 助教

染色体工学技術を用いて、ヒト / マウス人工染色体:Human Artificial Chromsome(HAC) / Mouse Artificial Chromsome(MAC)を開発してきた。従来のトランストランスジェニック技術では導入できる遺伝子サイズに制限があり、導入された遺伝子は宿主の染色体に組み込まれることから、安全性・遺伝子発現制御に課題があった。HAC / MACは、1. 導入遺伝子サイズに制限がない、2. 宿主染色体から独立して保持され、宿主染色体を傷つけることがない、3. 哺乳類細胞・個体内で長期間、安定に保持される。4. 生理的発現制御を受ける、利点がある。再生医療応用への取り組みとして、山中4因子を搭載したHACベクターを用いた、無傷なiPS細胞の作出法の開発、デュシェンヌ型筋ジストロフィーへの遺伝子細胞移植治療法として原因遺伝子DMD, 2.4Mbの導入法の開発などを行ってきた。一方、染色体導入動物:トランスクロモソミックTrans-Chromosomic(TC)動物の開発も行われており、これまでに、ヒト抗体遺伝子座全長を導入したヒト抗体産生マウス、ダウン症モデルマウス、ヒト型代謝マウスなどが作製されてきた。以上のように、染色体工学技術は疾患モデル細胞の作成、遺伝子細胞治療、創薬研究などへの応用が期待される。

問い合わせ先

生命科学セミナー担当
分子生化学研究室 柳 茂