ニュース&トピックス 分子生命科学科 教員インタビュー第2回 川本諭一郎先生
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2019.12.02
分子生命科学科 教員インタビュー第2回 川本 諭一郎 先生
インタビュワー 栢木 秋典 (分子神経科学研究室 修士1年)
栢木:本日はいろいろお話しを聞かせてください
よろしくお願いします
川本:普段あらためて自分の話をする機会がないので楽しみです
よろしくお願いします
天然物合成と創薬化学
栢木:早速ですが、先生は現在どんな研究をされていますか?
川本:天然物の全合成と創薬化学です 天然物合成は、複雑な化合物をいかに効率良く短い工程で作るか、という研究です 創薬化学は、医薬品合成の研究になります
現在、大学をあげてアカデミア創薬をやっていますが、メディシナルケミストという医薬品を合成する専門家として大学に呼ばれたという経緯があります 具体的には主に抗がん剤や神経に作用する薬の研究を行っています
栢木:天然化合物を作られているということですが、具体的にはどんなものなのでしょうか?
川本:いろいろありますが、例えば海に生息しているサンゴからとれる天然物とか、中国で古くから薬草として使われているような植物から単離された天然物などがあります
栢木:サンゴからそんな物質がとれるという発想は無かったので、非常に興味深いです
川本:そうですね サンゴのような生物が意外と複雑な化合物を作ったりしていて、おもしろいです
栢木:神経の薬というのはどういうものでしょうか?
川本:神経軸索の保護、神経が壊れていくのを遅らせる化合物の探索を行っています これは、国立精神・神経医療研究センターとの共同研究です また、抗がん剤の研究では、学内の細胞情報科学研究室と共同で研究を進めています
企業から大学へ
栢木:有機化学の魅力はどんなところですか?
川本:自分で化合物をデザインし、作り、それを自在に操れることです 新しいものを人工的に産みだす、物を作る楽しさは人間の欲求に根差した本能的なものではないでしょうか?
栢木:前職はアステラス製薬で研究員としてお勤めなさっていたと思いますが、企業と大学での研究の違いはなんですか?
川本:一言で言うと、チームプレーか個の力を生かして仕事をするかの違いだと思います チームプレーも楽しいですが、自分の力を試してチャレンジしたいと思ったのが、アカデミアへ転身した本質的な理由になります
栢木:生命科学部の研究環境はどうですか?
川本:第一線でご活躍されているBiologyの先生がたくさんいらっしゃって、良い薬のネタ(ターゲット)を探すには非常に良い環境だと思います
薬のターゲットを探すのはとても難しく、ほとんどは薬になりません。その点で、研究のクオリティーが高いことがとても重要で、生命科学部の環境はとても良いと思います
研究について
栢木:研究者に向いている人はどんな人だと思いますか?
川本:研究というのは失敗ばかりなので、忍耐力のある人、粘り強い人がいいですね
発想の豊かな人も向いているかと思います
栢木:発想力というお話しがでましたが、新しいことを発見するためにどんな点を意識して考えていますか?
川本:既存の考え方にあまり捉われない、ユニークさやオリジナリティでしょうか 特に大学の研究で大切なのはオリジナリティですね 「オリジナリティが常識や習慣を打ち負かした結果がクリエイティビティ」だと思っています
栢木:自分も新しいことにチャレンジしたくて、既存のことを本などで読んで勉強しますが、新しいことというのは結局、既存のものの組み合わせで実現するものではないかと考えたりします それについてどう思われますか?
川本:組み合わせでよいと思います ただし、誰も考えつかなかった新しい組み合わせということなのかと思います 組み合わせが遠いところにあるものほどインパクトが大きいのではないかと思います
栢木:創薬の研究にも通じるところがあるでしょうか?
川本:そうですね 創薬の研究では、合成をやる人、Biologyをやる人、毒性をみる人、体内動態をみる人などいろんな分野の人が集まらないと薬はできません
いろんな分野の融合、発想の組み合わせが新しい薬を生み出すためにも重要であると思います
栢木:研究をしていて楽しいと感じるのはどんな時ですか?
川本:山を越えたかな、と思える瞬間ですね まだ問題は山積みでも一番高い山をクリアして先が見えてきた瞬間
夢は創薬!人との繋がりを大切に
栢木:子供の頃はどのようなことに興味を持っていましたか?
川本:普通の子供でした 田舎でしたので、近所の友達と公園で野球したり、川で遊んだり、山にクワガタを取りに行ったり アウトドア派で、外で体を動かすのが好きでした
あとは、地図帳を見るのが好きでした それと関係あるのか、海外旅行が趣味でこれまでに45か国に行っています
栢木:すごいですね 自分も海外旅行が好きです。まだ2か国しか行ったことはありませんが(笑) どこかおすすめの国はありますか?
川本:アジア、ヨーロッパ、アフリカや中東などいろいろ行きましたが、例えば、タイは物価が安いし、象が町中を歩いていたり、おもしろい国です 変わったところではイスラエルとか印象深かったですね 危険そうな感じがしますが、日本の旅行会社もツアーを出していて、意外と行けるものです
栢木:学生が大学生活の間でやっておくべきことはなんだと思いますか?
川本:社会人になったらやれないことをやればいいんじゃないでしょうか
自分はいつも、その年代/年齢の時にしかやれないことをやるように意識しています 後で後悔したくありませんので
学生は時間がたくさんあるのが強みだと思うので、それをいかに使うかが大事だと思います 具体的に何に使うかは人それぞれでよいと思います それが個性なのではないでしょうか
栢木:将来の夢はありますか?
川本:薬を創ることです 企業にいた時から変わりません
薬の開発については、今までは、製薬企業でやっていたことを、最近では大学やベンチャー企業でもやるように場所が変わってきています アカデミア創薬という分野はここ10年くらいで出できたかと思いますが、この分野を中心になって盛り上げていきたいです
栢木:研究生活で大切なことはどんなことですか?
川本:人との繋がりでしょうか 大学の研究は個人プレーに走りがちなので
今も年一回くらいは、大学院の同期の人と集まっています また、出身研究室のイベントも3年に一回くらいあって、研究室の現役生、OB,OGらが100人くらい集まります
こういったつながりを切らずに10-20年続けていると、それが人脈になって、仕事にも生かせるようになってきます
栢木:最後に話したいことがあれば、聞かせてください
川本:なぜ企業から大学へ転身したのかについて
理由は三つくらいあります
一つ目は、個の力を生かして仕事をしたいと思っていたこと
二つ目は、アカデミア創薬をやりたかったから
三つ目は、学生との交流です。エピソードがありまして、数年前に高校の同窓会の幹事をやった時のことです 同窓会と言っても、大学生から80代の年配の方々まで集まる大規模なもので、大学生スタッフをまとめる仕事を分担しました この時の学生とのやりとりを伴った経験が非常に良くて、私にとってインパクトのあるものでした 20代前半くらいの若い人達と接する仕事が良いのではないかと思いました
インタビューを終えて
栢木:先生の人生観や経験したことを話していただける機会は少ないので、良い経験になりました
研究職につきたい学生にはぜひこのインタビューを読んでいただきたいです
(栢木)
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