ニュース&トピックス 成熟した脳をつくるために必要な遺伝子の発見 -- 損傷脳の再生に向けた新たな治療戦略|プレスリリース

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2022.01.19

プレスリリース

成熟した脳をつくるために必要な遺伝子の発見 -- 損傷脳の再生に向けた新たな治療戦略

ポイント

研究の背景
脳はさまざまな細胞からできている複雑な組織(中枢神経)である。ウイルス感染や炎症、外傷や遺伝的要因で脳が損傷すると障害がのこる場合が多い。その理由は脳神経が再生できないか、ほとんど再生しないことによる。しかし、脳組織には多くのグリア細胞もあり、これらは神経細胞を保護する役割をもつ。そこで損傷後、できる限り早期にグリア細胞を活性化し、神経細胞の損傷を最低限にとどめ、神経組織の保護過程を促進させることが脳損傷を回復させるための重要な課題となっている。
成果について
脳組織(中枢神経)に存在するオリゴデンドロサイト(オリゴデンドログリア細胞)が成熟するために必要な遺伝子をゲノムワイドで解明し、成熟した神経組織の構築に必須の新たな分子メカニズムを提唱した。
今後の展望
成熟神経の構築に関わる分子(Rnd2)を明らかにしたことで、その分子を中心にしたメカニズムを応用することで損傷脳を改善できる可能性が示唆された。これらの証拠に基づいた損傷脳の治療法を確立できることが強く期待される。

20220119-1000_1.jpg図1: Rnd2が減弱されたオリゴデンドログリア細胞(赤)は驚異的に成熟神経組織の構築を促す。ここには神経細胞の核(緑)もある。繊維状の赤いオリゴデンドログリア細胞が成熟した神経組織に相当する。この図は論文の表紙に採用された。

20220119-1000_2.jpg図1: Rnd2を中心としたオリゴデンドログリア細胞の成熟過程の分子メカニズム

概要

Rnd2は成熟神経をつくる初期の発生過程ではRnd2シグナルの下流に存在するRhoキナーゼ(リン酸化酵素)を不活性化し神経成熟を促進する。一方、後期過程ではRnd2はRhoキナーゼを活性化し神経成熟を阻害する。つまり、Rnd2は発生過程における調節因子であることが示唆された。これらの神経成熟の巧妙なメカニズムを人工的に制御できれば、組織の損傷後保護しいては再生過程を促進できると考えられる。

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発表雑誌

  • 米国細胞生物学会誌(Mol. Biol. Cell)に掲載(2021年6月号)
  • また本誌の表紙を飾った
雑誌名
Mol. Biol. Cell
論文名
Rnd2 differentially regulates oligodendrocyte myelination at different developmental periods.
著者
Yuki Miyamoto (筆頭著者), Tomohiro Torii, Miho Terao, Shuji Takada, Akito Tanoue, Hironori Katoh, and Junji Yamauchi (責任著者)
Doi
10.1091/mbc.E20-05-0332

取材に関するお問い合わせ先

東京薬科大学 総務部 広報課

研究に関するお問い合わせ先

東京薬科大学 生命科学部 分子神経科学研究室 教授 山内淳司