ニュース&トピックス 環境応用植物学研究室の「クロレラの固相表面培養環境への応答」に関する論文がFrontiers in Plant Science誌に掲載されました

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2023.11.02

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写真1: 液体培養したクロレラと 固相表面培養したクロレラ

今日地球温暖化が問題となっており、二酸化炭素濃度の増加が1つの要因と考えられています。二酸化炭素は植物や微細藻類による光合成で吸収されます。微細藻類は、数μm~数百μmという非常に小さな植物プランクトンです。彼らは二酸化炭素を吸収するだけでなく、様々な有価物を作り出すこともできます。また、植物と比べて生育が早い利点もあり、人類が抱える様々な問題解決の可能性を秘めています。私たち環境応用植物学研究室では、様々な光合成微生物の生理学的機能や環境応答の解明、微細藻類を大量培養する装置 [SSCC (Solid Surface Continuous Culture) System] の研究・開発を行っています。

この度は、SSCCに関する論文が受理されました。SSCCは液体ではなく、布などの固相上で微細藻類を培養する技術です。微細藻類は海や池などの水中で生育しているものを思い浮かべる人が多いと思いますが、よく見ると土や木の皮や川の岩に付着して空気に接して生育しているケースが多くみられます。SSCCは培地を含ませた布に微細藻類を付着させて成育させるために、液体での培養よりも設備が簡易で藻類の回収が簡便な利点があります。イメージは人工的な葉っぱです。固相上でも細胞は高い増殖を維持でき、布の配置を工夫することにより、限られた敷地面積で大量の細胞を培養できる可能性があります。

藻類が空気に接して生育する際の生理的な挙動には不明な点が多くあります。また、SSCCの高い増殖の根底にある生理学的および遺伝子発現制御機構も不明なままでした。本研究では、Parachlorella kessleri 11hという微細藻類を用い、液体中と固相移動後の細胞のクロロフィル蛍光や遺伝子発現等を比較することで、固相環境への順応メカニズムの一端を解明しました。研究の結果、クロレラ細胞が固相環境に移されると、強光等によるストレスを受けていることが分かりました。しかし、光合成やストレス応答に関する遺伝子が制御されることによって固相環境に順応し、高い細胞増殖を維持していることも分かりました。自然界の石や土壌に付着した藻類でも、同様の代謝が起こっているのかもしれません。

今後は、さらに詳細な解析、およびこのデータを活かした培養装置の開発を進めていきます。(修士課程1年 平川悠太郎さん 記)

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写真2: 著者の宮内さん(現 TOPPAN株式会社 情報コミュニケーション事業本部 フロンティア事業開発センター 研究企画部)、石川さん(現 日産自動車株式会社 日産車体 内外装設計部)、平川さん。CO2班の仲間、鈴木さん(現 株式会社電通)といっしょに。
 

論文情報

タイトル“Cellular response of Parachlorella kessleri  to a solid surface culture environment“

Doi: https://doi.org/10.3389/fpls.2023.1175080

著者: Hiroki Miyauchi, Tomoharu Ishikawa, Yutaro Hirakawa, Ayumu Sudou, Katsuhiko Okada, Atsushi Hijikata, Norihiro Sato, Mikio Tsuzuki, and Shoko Fujiwara

掲載誌Frontiers in Plant Science, 2023

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2023.1175080/full

本件に関するお問い合わせ

東京薬科大学 生命科学事務課