ニュース&トピックス 応用生態学研究室の「水陸両生植物の水中葉におけるCO2取り込み機構の解明」に関する論文がAnnals of Botany誌に掲載されました
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2023.10.31
めまぐるしい環境変化に曝され続ける植物のなかには、同一個体にもかかわらず陸上と水中の両方に順応できる水陸両生植物が存在します。水中環境では光合成の基質であるCO2の拡散速度が陸上の一万倍遅くなるため、光合成が律速されます。多くの水陸両生植物がアクアリウムなど観賞用として親しまれていますが、このような植物がどのように水中環境でCO2の取り込みを行っているのか、その機構はわかっていませんでした。本研究では、Hygrophila difformis (流通名:ウォーターウィステリア)という水陸両生植物を用いて、水中で展開した葉 (水中葉)のCO2取り込み機構の一端を明らかにしました。水中環境ではCO2の一部が重炭酸イオン(HCO3–)になります。H. difformisの水中葉では、細胞壁などの細胞外に存在するCarbonic Anhydrase (CA: 炭酸脱水酵素) とHCO3–トランスポーターの協調的な働きにより、HCO3–を光合成に有効利用できている可能性が示唆されました。水中葉では、いくつかのCAの発現量が増加していることから、水没したことを認識して見た目に表れない部分も変化させることで、水中環境に適したCO2取り込み機構を構築して水中環境においても光合成を行っていると考えられます。
写真1: Hygrophila difformisの陸上葉(左)と水中葉(右)
写真2: 陸上環境(左)と水中環境(右)でのCO2取り込みの模式図
論文情報
タイトル: “Cooperation of external carbonic anhydrase and HCO3– transporter supports underwater photosynthesis in submerged leaves of the amphibious plant Hygrophila difformis“
Doi: https://doi.org/10.1093/aob/mcad161
著者: Genki Horiguchi, Ryoma Oyama, Tatsuki Akabane, Nobuhiro Suzuki, Etsuko Katoh, Yusuke Mizokami, Ko Noguchi, Naoki Hirotsu
掲載誌: Annals of Botany, 2023
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