ニュース&トピックス 光合成によるユニークな β-グルカン合成に関与する遺伝子を藻類 円石藻から同定!

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2023.12.11

当研究室の藻類 円石藻研究グループ(論文筆頭著者は修士課程を卒業した犬飼茉由香さん、小林直矢さんら)は、石灰化するハプト藻(円石藻)から、光合成によるユニークな β-グルカン合成に関与する遺伝子を同定・解析し、その成果を、本年(2023年)9月、英文誌(Front Bioeng Biotech)に発表しました。この成果は、CO2固定技術や生理活性をもつ様々な構造のβ-グルカンの合成に繋がると期待されます。 

研究の背景

光合成を行う生物は、太陽の光エネルギーと大気中の二酸化炭素から生命活動に使うエネルギーや有機化合物を作り出し、グルカンの形で貯蔵しています。貯蔵するグルカンの形は陸上植物ではデンプンですが、藻類では種によってさまざまで、大きな多様性がみられます。

成果のポイント

1 PhTGS/PhTGSの解析:酵母の細胞壁β-1,6-グルカン合成酵素と相同性のある円石藻の遺伝子(PhTGS)に注目し、RNA干渉によりPhTGS発現量を抑制したところ、β-グルカン量が減少し、同時に脂質量の増加も観察されました。このことから、この遺伝子がβ-グルカン合成に関与し、その発現抑制により炭素代謝の流れが大きく変化したことが分かりました。

2 PhTGS mRNAの明条件での多量発現:PhTGS mRNAの発現パターンを調べたところ、暗条件よりも、光合成によりβ-グルカンが活発に合成されている明条件での多量発現が検出されました。

3 PhTGSタンパク質のβ-グルカン伸長活性: PhTGSタンパク質を大腸菌で発現させたところ、β-グルカン伸長活性を有することが明らかになりました。 

考察と今後の展望

以上の結果とこれまでの我々の解析から、PhTGSタンパク質は、主に明条件下において、β-1,6-の分岐を作ることにより、β-グルカン合成に関与している可能性が示唆されました。   

石灰化(炭酸カルシウムの殻の形成)と光合成により海の炭素循環において重要な機能が予想され、光合成においてもユニークなβ-グルカン(β-1,6結合:β-1,3結合=3:2)を合成するユニークな円石藻から得られた今回の成果は、CO2固定技術や生理活性をもつ様々な構造のβ-グルカンの合成にも繋がると期待されます。

図1. 今回の成果から予想されるモデル図

スライド1.JPG

論文情報

タイトルKre6 (yeast 1,6-β-transglycosylase) homolog, PhTGS, is essential for β-glucan synthesis in the haptophyte Pleurochrysis haptonemofera

Doi: https://doi.org/10.3389/fbioe.2023.1259587

著者: Mayuka Inukai, Naoya Kobayashi, Hirotoshi Endo, Koki Asakawa, Keisuke Amano, Yuki Yasuda, Ugo Cenci, Christophe Colleoni, Steven Ball, and Shoko Fujiwara

掲載誌: Frontiers in Bioengineering and Biotechnology, 2023

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fbioe.2023.1259587/full

本件に関するお問い合わせ

東京薬科大学 生命科学事務課