ニュース&トピックス ゲノム情報医科学研究室の土方先生の研究成果が発表されました!

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2023.12.04

次世代シーケンシングを用いた遺伝学的検査の精度指標を考案
〜医療における遺伝学的検査の質保証に貢献〜

遺伝病やがんなどの病気の診断を目的に、次世代シーケンシング(NGS)という21世紀になってから急速に進歩した技術が広く使われています。この方法では100-150塩基ぐらいの短いDNAの配列を大量に決めて、それをヒトゲノムの対応するところに当てはめていくことで、世界的に共通に使われているヒトゲノムの標準データとの違いを検出していきます。

この作業で生じる間違いが、ランダムでは無いことに多くの人達が気づいていたのですが、ヒトゲノムのどの場所で間違いが多いのかを示す定量的な指標を作った人はいませんでした。もしそうした指標ができたら、ヒトの疾患の診断のための遺伝子検査の精度を管理する上でとても貴重な情報になります。

 今回の研究では、短鎖リード型NGSによって解析されたgnomADhttps://gnomad.broadinstitute.org/)という国際ヒトゲノムシーケンスデータベースを使って、ヒトゲノムの遺伝子検査の主な解析対象であるタンパク質コードエクソンのどの部分で間違いが増えるかの指標(UNMETスコア)を機械学習の手法を用いて作りました。

このUNMETスコアによって、短鎖リード型NGSで遺伝子解析した結果のどの部分がシーケンスエラーを含む可能性が高いかを、事前に塩基単位で知ることができるようになりました。

これによって、遺伝性疾患やがんなどの体細胞変異による疾患の遺伝子解析による検査の精度を高く保ち、結果の解釈を誤ることを防ぐことができるようになります。

この成果は、ゲノム情報医科学研究室の土方敦司 准教授、かずさDNA研究所(ゲノム事業推進部、小原收部長)、九州大学生体防御医学研究所(付属システム免疫学統合研究センター、須山幹太教授)を中心として、株式会社DNAチップ研究所、神奈川県立こども医療センター、京都大学iPS研究所、国立成育医療研究センター、岐阜大学、信州大学、鳥取大学、横浜市立大学、株式会社テンクーで遺伝学的検査に関わっておられる多数の方との連携によって得られました。

研究成果は、20231128日に国際学術雑誌「Nucleic Acids Research」に公開されました。

https://doi.org/10.1093/nar/gkad1140
論文タイトル:Exome-wide benchmark of difficult-to-sequence regions using short-read next-generation DNA sequencing.
著者:Hijikata, Atsushi; Suyama, Mikita; Kikugawa, Shingo; Matoba, Ryo; Naruto, Takuya; Enomoto, Yumi; Kurosawa, Kenji; Harada, Naoki; Yanagi, Kumiko; Kaname, Tadashi; Miyako, Keisuke; Takazawa, Masaki; Sasai, Hideo; Hosokawa, Junichi; Itoga, Sakae; Yamaguchi, Tomomi; Kosho, Tomoki; Matsubara, Keiko; Kuroki, Yoko; Fukami, Maki; Adachi, Kaori; Nanba, Eiji; Tsuchida, Naomi; Uchiyama, Yuri; Matsumoto, Naomichi ; Nishimura, Kunihiro; Ohara, Osamu

掲載誌:Nucleic Acids Research 
Doi: 10.1093/nar/gkad1140

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