ニュース&トピックス 腫瘍医科学研究室の「骨髄異形成症候群に併発する肺障害発症機序」についての論文が米国血液学会から本年度創刊されたBlood Vessels, Thrombosis & Hemostasis誌に掲載されました

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2024.06.20

論文情報

タイトル:” HMGA2 promotes platelet-neutrophil complex formation and pulmonary tissue damage in myelodysplastic syndromes ”

 骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndromes, MDS)は 60 歳以上に好発する血液がんのひとつです。高齢化が進み患者数が急増していることに加え、造血幹細胞移植しか根治療法がなく、治療法の確立が急務となっています。正常な血液細胞が造られなくなるため、貧血、白血球減少、血小板減少をきたします。そのため、めまいや立ちくらみ、感染症にかかりやすい、出血しやすいといった症状がみられます。病気が進行すると白血病へ移行するため、前白血病といわれています。MDSの発症に関わる数多くの遺伝子変異が同定され,MDSの病態形成における炎症性シグナル経路活性状態が明らかになってきました。しかし、MDSは、消化管潰瘍、関節炎、乾癬や非感染性肺障害などの難治性の炎症症候群を合併することがあり、MDSの症状を増悪させる一因となっていますが、その病態は未解明です。

本論文では、MDSに合併する非感染性肺障害の病態を明らかにし、治療法の確立につながる成果を報告しています。非感染性肺障害を併発したMDSでは、クロマチン凝集因子HMGA2が異常高発現した造血細胞によって、好中球と血小板の複合体形成が促進され、肺組織障害を引き起こすことを明らかにしました。さらに、その複合体形成を抑制することで、肺障害が抑制されることを見出しました。本研究成果によって、難治性の炎症症候群合併のMDSに対する新たな治療法開発に繋がることが期待されます。

Doi:10.1016/j.bvth.2024.100014

著者:Natsumi Matsunuma, Yoshihiro Hayashi, Marina Fukuda, Kanako Yuki, Yasushige Kamimura-Aoyagi, Hiroki Kobayashi, Naoki Shingai, Yuka Harada, Hironori Harada

掲載誌:Blood Vessels, Thrombosis & Hemostasis (2024) 1 (2): 100014.

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