坂本 菜沙

大塚製薬株式会社 製剤研究所

東京都立八王子東高等学校 出身
薬学部 医療薬学科 薬物動態制御学教室 卒業

自身が物性評価した化合物の製品化を目指して。製薬企業の研究職としての挑戦。

創薬の上流段階からプロジェクトに入り、良い物性の原薬を見出せたときの達成感は格別です。

開発候補化合物(原薬)の溶解性や結晶形といった物性評価や安定性評価を実施し、上市後も品質の変わらない製品を患者さんに使用してもらえるための原薬形態選択に携わっています。例えば、化合物が難溶性の場合には溶解性に優れた塩形態などを提案します。物性に優れ、安定性も良い原薬は実は多くなく、後に製剤化や包装の工夫が必要となる場合があります。そういった場合にはコストにも影響するため、できるだけ創薬の段階で物性面を配慮した構造展開が重要になってきます。また、創薬の早い段階からプロジェクトに入り込み、良い物性の原薬を見出せたときはやりがいを感じます。研究職として働く上で、自ら課題を見つけ、関係者とのコミュニケーションを取りながら研究の質を高め、さらにその幅を広げていくことを常に心掛けています。

化合物のポテンシャルを引き出すための製剤を。その思いから製薬企業へ。

5年次の病院・薬局実習で、製剤は化合物のポテンシャルを最大限に引き出すことができる分野だと感動したことがきっかけで製剤研究を志しました。普通錠から水なしで飲める口腔内崩壊錠にしたことで飲み忘れが減った患者さん、経皮吸収剤(パッチ剤)では患者さんだけでなく、その家族やケアギバーさんまで救えることを目の当たりにしたとき、ひとつの化合物から複数の剤形(製剤)で展開する意味を実感し、製剤研究に惹かれました。

臨床現場での実習経験は、製薬企業において薬学部出身の“強み”です。

5年次の病院・薬局実習で実際の医療現場で学ぶことができたこと、患者さんと接することができたことは貴重な経験であり、製薬企業の研究職として“薬学部出身の強み”だと感じます。薬局実習中に出会ったある患者さんは、一包化したことで飲み忘れが減り服薬アドヒアランスが大きく向上しました。その時、全ての錠剤が一包化できればいいのに…、と感じたのですが,実際会社に入ってみると製剤化の工夫無しに一包化に対応するには、原薬が低吸湿性でないといけないことが分かりました。良い原薬選択は製剤の選択肢を広げ、患者さんのアドヒアランス向上に繋がることを肌で感じることができるのは、薬学部での病院・薬局実習の経験があったからだと思います。

授業にサークル、研究に没頭した薬学部6年間。

毎日午前中は授業があり、午後は夕方まで実習、その後週2~3回の塾講師のアルバイトもしていました。学生当時は忙しくも充実していた記憶があります。アスレチック研究会というサークルに入っており、みんなで夏季合宿や冬はスノーボード合宿を楽しんだのがとても思い出に残っています。3年生後期から薬物動態制御学教室に所属し、研究の基礎を学びました。「医薬品添加剤が消化管吸収に及ぼす影響」という薬物動態と製剤を結びつけるテーマに携わっていたことは、後に製剤研究所を目指すきっかけの一つであったと思います。

薬を通じて様々な側面から医療貢献を。薬剤師としての強みを活かして。

両親や親戚に医療関係者が多く、漠然と医療関係の仕事に就きたいと思っていた中、高校の先生の勧めで薬剤師を志望しました。受験生の頃は病院や薬局で働く薬剤師を想像していましたが、病院・薬局実習や研究室での経験から、「薬を創る立場で仕事をしたい」と自身のキャリアビジョンを少しずつ形成していきました。薬剤師といっても、病院や薬局だけでなく製薬企業などその活躍のフィールドは多岐にわたります。薬を通じて様々な側面から医療貢献できることが薬学部の強みだと感じます。