ニュース&トピックス 分子生命科学科 教員インタビュー第4回 熊田 英峰 先生

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2020.07.20

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分子生命科学科 教員インタビュー第4回 熊田 英峰 先生
インタビュワー 鈴木 然 (生物有機化学研究室 修士1年)

鈴木:専門ではないので理解して質問できるか不安ですが、よろしくお願いします

熊田:よろしくお願いします


k3.png現在の研究について

鈴木それでは順番に質問させていただきます 現在の研究テーマは何ですか?

熊田個人でやっているテーマと研究室のテーマがあります まず個人のテーマでは、炭素の安定同位体比の変化率を詳しく調べています 植物ステロールは環境中で「化合物の由来」が明確なため、マーカー物質として利用できる可能性があります 植物の炭素源は大気CO2ですが、光合成〜脂質合成経路において炭素の安定同位体比が変化します

鈴木なぜ比が変わるんですか?また、研究室のテーマは何をされてますか?

熊田:同位体は重さが異なります 重さが異なると、拡散スピードが変わりますし、化学結合の切れやすさも変わります 軽い同位体は炭素固定されやすい 炭素固定量を推定できると環境変動が分かり、地球温暖化の観点から生物圏の炭素循環の研究へと繋がります

生命科学部ですので、生体内の化学物質を精密に分析する手法を開発する研究です その結果、病気の兆候を素早くキャッチできるようになります 代謝物や脂質といった生体内化学物質を、より少量、よりスループット良く分析できれば、病気の早期診断に貢献できます


z1.png研究との出会い〜研究テーマの変遷

鈴木私が個人的に一番聞いてみたかったことですが、アカデミアの役割は知的好奇心の充足と社会への利益還元とどちらにあると思いますか?

熊田バランスが必要だと思います 研究成果の還元によって人類全体に利益をもたらすことはとても大切だが、それしか考えないと現時点で必要と分かっていることにしか資金が流れず、本当の意味での研究フロンティアは開拓されない、人類は進歩しないと思います

鈴木それでは続いて、学生時代から現在の研究に至るまでの、研究テーマの変遷について教えてください

熊田卒業論文のテーマは窒素安定同位体比の計測でしたので、大きく回って同位体研究に戻ってきた感があります 堀之内近辺で井戸水を採取していました、フィールドワークです                             

大学院時代は、環境解析のためのマーカー物質の探索という視点で、道路や自動車から発生する物質の研究を行っていました

生命科学部へ来て最も力を注いだのは、有機物の燃焼で発生する多環芳香族炭化水素やブラックカーボンの化合物ごとの14C含有率を計測して、化石燃料とバイオマス燃料の影響を見分ける手法の研究です この際、複雑な夾雑物から目的成分を単離するテクニックを用いて、生態系の環境応答を化合物レベルの同位体比計測から調べるという研究へ移行しました


k1.png当時の学生と現在の学生との相違

鈴木現在の学生の印象はどうですか?

熊田とても真面目な人が多い印象 今の大学の授業の組み立てや課題の多さには、自発性を引き出すのとは逆の効果を感じます 大学は自由な時間が多いので、余り時間で自分のやっている研究のことを考えたりする 逆に duty が多すぎると自由時間をただの遊びに使ってしまう 本当の意味で人を育てることに繋がっているのでしょうか

鈴木どんな学生生活を送っていましたか?

熊田当時農工大では三年生で研究室配属が決まりました 自主的に研究室に行って宣言し、テーマも自分で決めていました 一方でやめるのも簡単でしたし、自由に研究室を移ることもできました 研究室にいるのは本当に研究をやりたい人だけでした

鈴木いいですね (笑) 小さい時はどんな子供でしたか?

熊田友人と閉鎖された林業試験場の跡地を探索して野山を徘徊していました

鈴木この頃からフィールドワークに?(笑)

熊田家にいると親から追い出されてました 外に出ると友達に会える 自然とアクティブにならざるを得ない、アウトドア派でした 

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鈴木分析化学、環境化学の魅力は何ですか?

熊田分析化学はいろいろな学問の基盤を支える研究ツールと考えています 大気、水圏、地圏と地球のあらゆる環境で起こる現象は化学物質の変動として記述できるが、化学的に捉えることで過去の環境変動を理解できるようになるし、将来の環境変動を予測することも可能になリます

鈴木研究で楽しいと感じるのはどんな時ですか?

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熊田説明がつかない、仮説に反するデータを説明できた時

鈴木研究者に向いている人はどんな人だと思いますか?

熊田新しい研究ネタを見つけられるという意味でいろいろな情報をキャッチできることが重要360度触手を伸ばし、全く異なる分野からの関連づけができる人 そこから追及するネタを創り出せる人


最後に

鈴木研究生活で大切なことは何ですか?また、将来の夢は?

熊田オフは研究のことを考えない、メリハリでしょうか 土日はボーイスカウトのリーダーをやっています 土日に全く違うことをやると、リフレッシュできていいですね

将来の夢は、学校でも家庭でも教わらないこと、例えばリーダー教育みたいなことをやる いい社会人になるために必要なことを教えることでしょうか

鈴木今日はありがとうございました


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