ニュース&トピックス レポート|生命科学部 幹細胞制御学研究室の平位教授に幹細胞制御学について伺いました

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2024.03.18

―幹細胞制御学について教えてください。

私たちの体は、形態的にも機能的にも専門化が進んだ細胞の集合体です。このような多細胞生物を長期に維持する仕組みの1つとして幹細胞システムがあります。幹細胞は、様々な種類の細胞を生み出す能力と、自分自身を複製することのできる能力を兼ね備えており、生涯にわたって必要な細胞を供給し続けることによって生命を支えています。私たちの研究室では、白血球や、赤血球、血小板など、血液の中に存在するすべての細胞の源となる造血幹細胞に注目して研究を進めています。感染や出血など、体の状況の変化に応じて臨機応変に必要な血液細胞を供給するために、造血幹細胞がどのような制御を受けているのか、造血幹細胞の制御の異常がどのようにして様々な疾患の原因となるのか、そのようなメカニズムの解明や、治療・予防戦略の開発を目指します。

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―平位先生と幹細胞研究との出会いについて教えてください。

医学部の学生時代から研究に憧れていたものの、自分が何をしたいのかわからないままに、医師として臨床の現場で働き始めました。そこで出会った治療法が、末梢血幹細胞移植術です。これは骨髄の中にある造血幹細胞を、体中を流れる血液 (末梢血)の中に動員して集め、白血病などの治療で傷んだ造血システムの再構築・再生に用いるというものです。当時としては最先端のこの治療法を経験する中で、造血幹細胞を治療に用いる上での限界や、解決すべき問題点を感じ、造血幹細胞が持つ大きな可能性と、まだ解き明かされていない数々の謎は研究対象として相応しいものだと思いました。さらに、最新の科学的知見が、患者さんの治療の現場で実際に活かされている事実や、そのスピード感にも感銘を受けました。

―研究室名に込めた思いを教えてください。

私は、これまでのキャリアで、内科学、免疫・微生物学、血液・腫瘍学、輸血・細胞治療学と様々な部門を渡り歩いてきました。その結果、臨床部門や、基礎研究部門のみならず、それらの橋渡し的な立場にも身を置き、その時々の持ち場で研究を積み重ねてきましたが、常に造血幹細胞あるいはそのダイナミックな制御機構が興味の中心でした。東京薬科大学に着任するにあたっても、研究の軸足を造血幹細胞に置くことを決め、その成果が血液に限らず幅広く体内の幹細胞システムに波及することを願って、幹細胞制御学という研究室名を選びました。

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―今後の抱負を教えてください。

私自身のライフワークとして、感染などのストレスがかかった時に造血幹細胞がどのように制御されているのか、その全体像を明らかにしたいと考えています。また、血液細胞の中でも最も原始的と考えられている単球という細胞にも興味を持っており、造血幹細胞との共通項から新たな機能や制御機構に迫れないかと日々試行錯誤しており、予想もしないような発見との出会いを楽しみにしています。また、一緒に研究に取組んだ学生さんが、一流の研究者として、あるいは社会人として歩む手助けができれば、研究成果にまさるとも劣らない喜びです。

―受験生へのメッセージをお願いします。

これまでは、教科書に書かれている内容を理解することが大きな目標になってきたと思いますが、これからは教科書の続きを切り拓いたり、その内容を書き換えたりすることが求められます。私たちの大学では、意欲的に取り組む方がそのような夢や目的を実現するための環境が抜群に充実しています。ぜひ一緒にがんばりましょう。

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本件に関するお問い合わせ

東京薬科大学 広報課