川野 真秀

医療経済研究機構 企画調査部

長野県 松本県ヶ丘高等学校 出身

将来の国民全体へ貢献できる、やりがいある仕事です

医療経済研究機構(IHEP)とはどんな組織?仕事内容を紹介します。

現在、一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構(IHEP)にて企画調査部長を務めております。一般の方にはあまり馴染みのない組織だと思いますので、まずは組織について解説させていただきます。

本組織は、わが国における医療経済および医療・介護政策に関する研究を促進することを目的とした研究機関です。医療・介護政策の発展・向上のために、経済学等の手法により、さまざまな事象を実証的に研究しています。

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また、わが国のヘルスケア政策に関する研究機関として、医療・介護・健康増進・疾病予防も含む「ヘルスケア」全般を研究領域として、さまざまな調査研究事業を行っています。重点的な研究分野は以下の6分野になります。

  1. 医療費・介護費に関する研究
    毎年増加している国民医療費を中心に、マクロ的な視点から医療費・介護費の動向、医療費の増加要因の分析等の諸問題に取り組んでいます。医療制度改革、介護保険制度の見直しの議論の中で、近年注目されている分野であり、政策的提言に結びつく研究を進めています。
  2. 診療報酬・介護報酬に関する研究
    診療報酬体系・介護報酬体系の在り方を検討するための基礎的研究を行っています。具体的には、医療費の原価に関する研究、重症化予防の経済的評価に関する研究、薬剤政策に資する研究等の広範な課題に取り組んでいます。
  3. ヘルスケアの提供体制に関する研究
    地域におけるヘルスケアの提供体制の在り方に関する検討などを行っています。また、「健康日本21」の推進など近年ますます重要性を増している健康増進にかかわる研究も実施しています。
  4. 医療・介護サービス提供施設に関する研究
    近年、医療施設・介護施設の運営についての関心が高まっており、これからの施設におけるサービス提供の在り方や、施設運営等についての研究を行っています。
  5. ヘルスケア産業に関する研究
    医薬品、医療機器等、ヘルスケアを取り巻く産業組織論や経済的評価、経営指標等の研究を行っています。
  6. 諸外国のヘルスケアに関する研究
    欧米諸国をはじめとする諸外国の医療・介護制度に関する基礎的な情報の収集・整理や、国際比較研究等に取り組んでいます。

上記のうち、私が取り組んでいるのは、6.諸外国のヘルスケアに関する研究です。

医療政策や国民の健康増進のための政策に寄与する

私は諸外国(イギリス・アメリカ・ドイツ・フランス)のヘルスケアに関する研究を行っています。具体的には、各国の医療保障制度の概要と薬剤給付、医薬品の価格決定システム、医薬品の償還制度、医療経済評価、後発医薬品に関する動向、薬剤師の業務範囲に関する動向を中心に調査を行っています。調査手法は文献からの情報収集、現地の公的機関や製薬企業などに直接インタビューががあります。また、コロナ禍ではオンライン面談が中心でしたが、海外渡航が緩和された現在では現地への出張による調査も実施しております。こういった調査を行うためには、先述の具体例に挙げた薬剤関連制度の理解が重要ではありますが、語学力や文化に対する理解なども重要です。そして、調査結果は報告書にまとめ、毎年発行しています。こうした調査研究業務を通じて、時代の変化に即応した政策へ寄与できるよう微力ながら業務を進めております。

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また、上記のような研究活動に併せ、医療経済および介護保険制度に関する公開シンポジウムや各種研究会の開催等による、普及啓発事業を進めております。その中で、当機構の賛助会員向けに機関紙「Monthly IHEP」の企画・編集に関わっており、当機構の賛助会員の関心を持っていただける誌面作りに継続して取り組んでおります。

これらの業務を通じ、得られた情報や分析・考察結果を医療経済を取り巻く各ステークホルダーに届けることで、将来の日本の医療政策に役に立ち、ひいては日本の国民の皆様の健康増進に繋がっていくことが、この仕事のやりがいだと感じています。

大学生活で得られた様々な経験が、今の自分を形作っています。

大学では、勉学・部活動・課外活動など様々な活動へバランスよく時間を割いた学生生活を送ってきたと思います。勉学では、薬学に関する知識を得て、特に薬理学という学問に魅せられ力を入れて勉強してまいりました。高学年からは研究活動に従事。課外活動では、多様なアルバイトを経験し、また軽音部・モダンJAZZ研究部の部活動でドラムを担当。オルタナティブロック・J-POPs・メタルJAZZなどさまざまなジャンルの音楽を楽しんできました。

同級生や教職員のみならず、色々な人とコミュニケーションした経験は、大学生活で得られたかけがえのないものです。現在の業務でも、薬学の幅広い知識やさまざまな立場の人と交流できる社交性・コミュニケーション能力は非常に重要な能力であると感じています。

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将来の日本の医療や健康に役立ちたいと願う皆さんへ。先輩からのメッセージ。

医薬品を取り巻く環境は、もはや日本だけでは完結せず、グローバルで物事を考えなければいけない時代です。こうした環境に適応するためには、薬学という専門分野を生かしてグローバルな環境で仕事をしていくこと、そしてそのためには語学のみならず多様なバックグラウンドや異文化に対する理解を深めることが重要なことだと感じます。

自分の仕事で誰かの役に立ちたいと願う人は少なくないでしょう。そのための仕事や手段としてたくさんの選択肢があるかと思います。この仕事は決して認知度が高かったり目立つものではありませんが、自分の行った研究で将来の国民全体に貢献できるのではないかと信じております。

大学在学中は、まさか自分がこの仕事に就くとは思ってもおりませんでした。深く調べて初めて見えてくる仕事もたくさんあると思います。薬学の知識を高めていくことは不可欠なことですが、色々な人とコミュニケーションし、高校生では得られない知見や社会人になってからでは得られない経験を、大学生活で味わっておくことも重要ではないかと思います。

P1533764 (3)900x600.jpg「私にとって、東京薬科大学は」