学科紹介 微生物のエネルギー源

生物は自分自身の体の維持や運動・増殖のために、周りの環境からエネルギーを取り入れています。我々人間を含む動物は他の生物が合成した有機物を分解してエネルギーを得ていますが、光合成を行うことができる植物は太陽光のエネルギーを利用して生育しています。前者のような生物(動物など)を従属栄養生物、後者のような生物(植物など)を光合成独立栄養生物といいます。では微生物はどのようにしてエネルギーを得ているのでしょうか?

微生物とは肉眼では判別できないほど小さな生物の総称であり、いろいろなタイプの生物が含まれるため、エネルギー獲得の方法も実にさまざまです。動物と同じように従属栄養的に(有機物を分解して)生育するものや、植物のように光合成を行うものもいますが、微生物の中でもとりわけ原核生物(バクテリアや古細菌)がエネルギーを獲得する手段は非常に多彩です。従属栄養的に生育するバクテリアの中には環境汚染の原因となる石油中の成分や発ガン性物質など、動物ではとても分解できないような有機物(難分解性有機物)を分解してエネルギー源にできるものがいます。また有機物ではなく、水素や硫化水素、鉄イオンなどの無機物からエネルギーを獲得できるものさえいます。このような微生物は化学合成独立栄養生物と呼ばれ、太陽光が届かない深海においても、海底火山や熱水噴出孔から湧き出るエネルギー物質(無機物)をエネルギー源として生態系を構築することができます。このように微生物がエネルギーを得る能力は非常に多様性に富んでおり、こうした能力は環境浄化や有用物質の生産などさまざまな技術に応用することができます。そのため世界中の研究者によって新種の微生物の探索やエネルギー代謝のメカニズムの解明などの研究が盛んに行われています。今後の研究によっては従来の常識を覆すような能力を持つ微生物が発見され、人類の役に立つ技術の開発につながることも十分期待されます。

熱水噴出孔