学科紹介 研究紹介|生命医科学科

分子細胞生物学研究室

疾患の原因をオルガネラ(細胞小器官)から探る!

ミトコンドリアは、約20億年前にバクテリアが私たちの祖先の細胞に住みついてできたオルガネラだと考えられています。細胞は小胞体をミトコンドリアに巻きつけて、ミトコンドリアが暴走しないように見張り、コントロールしています。この仕組みが破綻すると、パーキンソン病などの神経変性疾患や糖尿病となることが最近わかってきています。私たちはオルガネラ間のコミュニケーション機構を調べて、病気の原因の解明を進めています。また、ウイルスや病原菌による感染症の発症において、これら病原体がオルガネラの機能をハイジャックすることが知られていることから、感染症とオルガネラに関連する研究も行っています。さらに、細胞のがん化におけるオルガネラの役割も調べています。

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キーワード

神経変性疾患 / 糖尿病 / 感染症 / がん

高校理科から生命医科学へ

生物の構成単位である細胞には、核・小胞体・ミトコンドリア・ゴルジ体などのオルガネラ(細胞小器官)があり、各々のオルガネラが適切な役割を果たすことが細胞、しいては個体の維持に必要不可欠です。各々のオルガネラは独立して機能していると思われがちですが、異なるオルガネラが物理的に接触する場所において様々な機能が備わっています。とりわけ、小胞体とミトコンドリアが接触する場所はシグナル伝達やオートファジー(細胞内の栄養補填や不純物除去に働く機構)に重要な役割を担っていることが知られています。このように、オルガネラコミュニケーション場には多彩な機能があることから、その破綻は種々の疾患につながります。『異なるオルガネラ間でのコミュニケーション』という高校の生物では教わらない現象を研究することは生物学のみならず医学的な側面からも重要となります。

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指導教員

再生医科学研究室

ヒトの臓器を創出する!

臓器移植におけるドナー不足は非常に深刻あり、日本では臓器移植待機患者のうち年間約0.5%しか臓器移植を受けることができないのが現状です。また、拒絶反応の問題もあり、誰の臓器でも移植できる訳ではありません。そのため臓器を作る方法を開発することが急務です。iPS細胞は誰の細胞からも作ることができ、受精卵の細胞と同様の性質をもっているため、体中のどんな細胞にも変化させることができます。そのため、臓器を作る材料として非常に期待されています。臓器移植を待つ患者さんのiPS細胞から臓器を作ることができれば、拒絶反応の恐れもなく、確実に移植治療が行えます。また、その臓器を使って個人の体質に合った薬の選択やその薬の安全性を評価することもできます。再生医科学研究室では、ヒトiPS細胞からの臓器、組織創出技術の開発、創出した組織を用いた精神疾患の研究、ミトコンドリアに注目した創薬研究などを行っています。

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キーワード

1型糖尿病 / 肝硬変 / 精神疾患 / ミトコンドリア関連疾患

高校理科から生命医科学へ

再生医療とは「幹細胞から作製した細胞や組織を利用して病気などで失った組織を治療すること、また、病気の治療法や治療薬を見つけること」であり、これらを研究することが再生医学という学問です。幹細胞とは自分のコピーを作ることができる能力「自己複製能」と様々な機能の細胞に変化(分化)できる能力「多分化能」を併せ持つ細胞で、そのおおもとは、体中のすべての細胞に分化できる全能性幹細胞である受精卵です。受精卵が子宮のなかで発生し、胚となって細胞分裂を繰り返すと、人間だと5.5日目、マウスだと3.5日目に胚盤胞という名前の胚に成長します。この胚盤胞に含まれる細胞は胎盤以外のすべての体細胞に分化できる細胞であり、「多能性幹細胞」と呼ばれます。現在、再生医療の分野で活躍している「iPS細胞」は人工的に作製した多能性幹細胞です。命の源とも言えるこの多能性幹細胞を作る技術の開発はいかに偉大であったか分りますね。

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指導教員

幹細胞制御学研究室

血液と血管の基礎研究から再生医療やがん治療へ

当研究室では、血液細胞や血管の発生・分化、また癌や白血病、敗血症等の疾患におけるそれらの役割について研究しています。血液領域では、主に造血幹細胞と単球・好中球造血に焦点を当てています。造血幹細胞は、身体の需要に応じて全ての血液細胞を一生涯産生し続けます。この機序については未解明の点がまだ多く残されています。私達は、造血幹細胞がどのようにしてオンデマンドの造血を行うことができるのか、その機能障害がどのように老化や慢性炎症、白血病の病態形成に関与するのかを解明すべく研究を行っています。血管領域では、正常の血管発生から、がんの転移や敗血症における血栓症等の疾患を研究対象とします。血管は、「血液を凝固させずに全身に運搬する」という役割を担います。それゆえ血管の機能破綻は、がんの進展に寄与するだけでなく、生命を脅かす疾患に繋がります。そこで私達は、健康な血管機能維持を目指して研究を推進しています。

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キーワード

がん / 白血病 / 感染症 / 敗血症 / 肺高血圧症

高校理科から生命医科学へ

全身に張り巡らされた血管と、その中を流れる赤血球・白血球・血小板といった血液細胞、両者は形も機能も全く異なりますが、実は共通の祖先を持っており、お互い密接に関与しています。血管腔の内側を覆う細胞を「血管内皮細胞」と呼びます。胎児の発生過程では、この血管内皮細胞の特徴をもつ特殊な細胞から最初に血液細胞が造られます。胎児がさらに大きくなると、胎児体内の動脈の血管内皮細胞の一部が、全ての血液細胞の元となる造血幹細胞へと変化します。造血幹細胞は血管の中を流れて、最終的に骨の中「骨髄」へと移動して、生涯の定住の地とします。さらに、骨髄の中を走る血管に存在する血管内皮細胞は、私達の身体の状態に応じて造血幹細胞が白血球や血小板といった各種の血液細胞へと分化するのを促したり、完成した血液細胞を骨髄の中から全身の血液循環へ供給するのをサポートしています。

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指導教員

腫瘍医科学研究室

がんをやっつけろ!

塩基配列解析技術の発達に伴い、がんの原因となる遺伝子異常は大部分が明らかにされてきました。しかしながら必ずしも原因が治療標的となるわけではないため、原因がわかっても有効な治療法がない場合がまだまだ多いのが現状です。私たちは、実際のがん患者さんから得られる膨大なデータを基に、がんがどのような機構で病態を引き起こすか仮説を立て、動物モデルを作製し検証します。さらにケミカルバイオロジーの手法を駆使し、細胞レベルで探索した治療薬候補を動物モデルで評価することで、新たながん治療法の開発を進めています。がんを「細胞レベル」からだけでなく、「個体レベル」で捉えた研究を基本に、「がん患者を治す」ためのトランスレーショナル研究を行っています。

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キーワード

がん / 骨髄異形成症候群(MDS) / 白血病 / 悪液質 / ケミカルバイオロジー

高校理科から生命医科学へ

がん細胞は遺伝子の突然変異が蓄積することで生じますが、常に一定の割合で遺伝子の突然変異が起きています。ではなぜ簡単にはがんにならないのでしょうか。それは生体にはがんを未然に防ぐ機構が複数備わっているからです。たとえば細胞には遺伝子の損傷を修復する機能がありますし、異常な細胞は免疫により監視されています。また、一般に「ほくろ」と呼ばれる色素性母斑は、遺伝子変異をもつ前がん細胞が、がんを未然に防ぐ「細胞老化」という機構により増殖を止められた姿なのです!年齢が高くなるにつれてがん発症率が増すのは、こうしたがんを未然に防ぐ機能が低下していくからだと考えられます。

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指導教員

免疫制御学研究室

免疫細胞を味方につけて病気を治す!

我々の体内には、たくさんの種類の免疫細胞がいて、体内に侵入した病原体を素早く感知し、これをできるだけ早く排除しようとします。この免疫細胞のおかけで、我々は健康を保つことができています。しかし、この免疫細胞が働きすぎて、炎症が強く起こってしまうと、それが自分自身の組織、細胞を傷つけることがあります。アンバランスな免疫応答は、がん、肝炎、自己免疫疾患や、感染症など様々な病気を悪化させることがあります。免疫細胞の働きを適切にコントロールする方法を見つけることができれば、難病と言われる様々な病気の画期的な治療法の開発につながります。免疫制御学研究室では、単球、マクロファージや、好中球と呼ばれる免疫細胞を自在にコントロールする方法を発見すべく、日夜研究を進めています。

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キーワード

がん / 肝炎 / 自己免疫疾患 / 感染症

高校理科から生命医科学へ

生物には、病原体が体内に侵入することを防いだり、侵入した病原体を排除する仕組みが備っています。これを免疫といいます。体内に侵入した病原体に対しては、生まれつき備わっている自然免疫や生後獲得する獲得免疫が働きます。自然免疫を担う免疫細胞には、マクロファージ、単球や、好中球などが存在します。マクロファージは、好中球と比較して大型で長寿命ですが、数は少く、主にリンパ節、器官や、組織に常在しています。骨髄で生まれた単球は、血中に入り、毛細血管を抜け、組織でマクロファージへと分化します。好中球は、白血球の中で最も数が多く、感染した組織へ集積して、病原体を食作用で消化します。その際、細胞死を起こすことが多く、細胞としての寿命は短いです。これらの免疫細胞は、通常、病原体の侵入阻止や排除に働いていますが、過剰に働くと病気の発症や悪化に関与することもあります。

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指導教員

細胞制御医科学研究室

公開準備中

指導教員

ゲノム病態医科学研究室

公開準備中

指導教員