学科紹介 応用生命科学

応用生命科学は、生命科学を応用する学問である。古くは、植物育種学、動物育種学等の育種や、醸造学、発酵学等の微生物を利用した産業応用に関連した学問であった。

しかし、遺伝子操作技術の進歩によってこれらの分野でも遺伝子解析を元にした技術が急速に進歩しつつある。旧来の分野に加えて、微生物エネルギー、植物や動物の生化学、発生、生理学、創薬、タンパク質工学の分野である。

醸造、発酵技術の分野では直接遺伝子操作を行うことは、消費者の抵抗が大きい為に日本ではほとんど行われていない。しかし、発酵過程での遺伝子発現を遺伝子解析で測定する方法や、代謝回路を計算機上でモデル化再現して発酵過程を研究したり操作したりということが行われている。

廃棄物処理には古くより微生物が利用されてきた。今日、そのプロセスをメタゲノム(存在する微生物全体の解析)によってプロセスを理解してコントロールしようという試みが進んでいる。廃棄物処理では処理過程で発生するメタンが利用されてきた。さらに、直接電気を取りだし、燃料電池として微生物を利用する研究が進行している。

植物や動物の育種分野での遺伝子操作はまだ研究段階であり直接応用と結びついてはいない。しかし、植物の生化学反応(光合成、光応答など)や動物の形態形成、生理、病態などは遺伝子レベルでの研究が急速にすすんでおり、やがて遺伝子操作と結びついていくことが予想される。

製薬分野はむしろ古くからの応用生命科学ともいえる。生薬を中心として創薬のシーズ(薬効のある分子)を探し、そこからの創薬が現在も行われている。この分野では、薬製造過程で遺伝子操作をもとに微生物や動植物、で薬を生産するシステムの開発が進んでいる。また、近代的な創薬過程では、様々な病態関連分子(膜受容体や病原体特異的酵素など)を標的として結合する分子設計を計算機を用いて行う方法が急速に進んでいる。

タンパク質工学は、応用生命科学分野でも既に利用が進んでいる分野である。洗剤や食品化工で酵素が利用されている。また、タンパク質そのものを薬品として利用するタンパク質製剤が実用化されつつある。糖尿病を代表とする診断薬、診断装置にも酵素がすでに利用されている。タンパク質工学では酵素タンパク質の設計、酵素耐熱化等の改良と製造過程の効率化の研究が行われている。