研究活動研究者が語る 東薬の先端研究 環境に優しい医薬品合成法の開発を目指して!

三浦 剛 教授

薬学部 医療薬物薬学科 薬化学教室

環境に優しい化学合成法の開発

近年、化学工業による環境汚染が問題となり、地球環境を汚さない環境に優しい化学合成法の開発が注目を集めるようになりました。金属は優れた反応剤であるものの、その多くが毒性を示します。また、製品段階での医薬品への金属の混入は絶対に回避しなければなりません。薬化学教室では、環境に優しい化学合成技術を開発することによって、価値ある鏡像異性体を合成し、医薬品開発に貢献できるよう日夜研究に取組んでいます。

有機分子触媒の開発研究

金属を使用せずに、医薬品開発に必須の鏡像異性体を選択的に合成できる化学技術として、有機分子触媒が注目を集めています。2000年に天然アミノ酸のL-プロリンを触媒として用いた立体選択的アルドール反応が報告されて以来、世界的に開発研究が推進されています。薬化学教室では、過去に例のない新規骨格の有機分子触媒を開発し、鏡像異性体を高い選択性で合成することに挑戦しています。

有機溶媒を使用しない反応開発

大半の有機合成反応は、反応溶媒として有機溶媒を必要とします。しかし、使用後の有機溶媒を廃棄しますと、環境汚染に繋がります。焼却処理によって廃棄しますと、二酸化炭素を排出することになり、地球温暖化の原因ともなります。そこで、薬化学教室では、有機溶媒を使用しない水を反応溶媒とした有機触媒反応や無溶媒条件下での反応開発に取り組んでいます。

有機分子触媒のリサイクル使用法の開発

合成反応に使用した触媒は、反応終了後、ほとんどのケースで廃棄されます。環境汚染やコストを考慮しますと、高価な触媒は回収リサイクル使用できることが望ましいです。薬化学教室では、多量のフッ素原子を導入した有機分子触媒を合成し、繰り返し使用可能な触媒開発にも挑戦しています。以上のような環境に優しい有機合成化学技術の開発研究に今後も積極的に取り組み続けることによって、安心安全に医薬品を臨床現場に届けることを目指しています。