未来医療創造人育成プロジェクト『BUTTOBE』

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未来の医療を創造する博士人財を育成

「BUTTOBE(Beef Up Toyaku talents TO go BEyond the borders)」育成ビジョン

既存の常識や枠組みにとらわれず、声高く理念を掲げ、能力と技術と人脈により障害となり得るあらゆる境界を越えてその志を形にしていく、「次世代の志士」の育成

かつてない変革期を迎えている日本の医療社会の現状において、学術・創薬・医療の各方位からその変革を力強く導き、持続可能なあり方へと発展させていく人財が今まさに望まれています。そこで本プロジェクトでは、上記ビジョンを掲げ、これを成すために必要なコンピテンシーを育むことにより、日本を取り巻く医療の難局を打破して革新を成し得る、文字通り『ぶっとんだ人財』を社会に輩出することを目指します。

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3つの未来医療人育成コース

BUTTOBEでは、学生が将来活躍する場として学術・医薬品開発・医療社会の3分野を想定し、これら分野を創造する以下の3種の人財像を掲げ、各人財を育成するコースを設けます。各コースでは、プロジェクト学生の専門性を高めるとともにミッション・ビジョン・バリューの形成を進め、各自のアイデンティティを醸成します。一方で、多彩な全コース共通プログラムを設けることにより、全てのプロジェクト学生に対して多様な価値観への理解を涵養し、分野の垣根を越える力・多様な人物と互恵関係を構築する力を育成します。

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本プロジェクトで育成するコンピテンシー

コンピテンシーは「知識・技術・能力を成果へと結びつける力や行動」を意味しますが、未来学術フォアランナー、未来創薬イノベーター、未来社会医療クリエイターには、「変革と開拓の旗手となる志で、同志とともに既成概念により描かれたあらゆる境界を越えていくコンピテンシー」が求められます。そこで本プロジェクトでは、このコンピテンシーの礎を成す以下の3つのコアコンピタンスを育成します。

コアコンピタンス1
既知未知境界を越える行動特性(既知未知境界:既存のもの、または安易に想像できるものと新奇なものとの境界)
コアコンピタンス2
明瞭境界を越える行動特性(明瞭境界:目に見えて明らかな境界 - 国境や学会など)
コアコンピタンス3
疑似境界を越える行動特性(疑似境界:意図せず、または無意識に社会的に形成された境界 - 既成概念など)

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具体的な育成プログラムおよび支援内容

本プロジェクトでは、博士後期課程3年間を基本修了年限とし、各分野に応じたキャリア開発・育成プログラムを提供します。これら育成プログラムは、プロジェクト学生が、コンピテンシー獲得の礎となる専門性とトランスファラブルスキルを磨くことができる内容としています。具体的には以下のプログラムを通じて、対自己スキル(ビジョン・ミッション・バリューの定義、主体性、自律性、レジリエンスなど)、対課題スキル(課題発見力、情報収集力、課題解決力、発想力、計画性、実行力など)、および対人スキル(コミュニケーション能力、リーダーシップ、協調性、共感力、交渉力など)を育成し、これらの能力を基に、俯瞰力と大局観、さらには慧眼を持って自己育成・研究開発における戦略を見定める力を養います。さらに、本プログラムでは、多様な分野の学生が頻回に交流することにより、相互理解を深め、分野を横断した医療イノベーションを創出するような思考環境の構築を促す工夫を加えています。

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BUTTOBE育成プログラム(抜粋) 研究奨励費
  • Boot Camp (マインドセットキックオフ、医療改革プランコンペティション)
  • コースワーク
  • 武者修行(海外編・国内編)
  • アクションプログラム
  • セルフプロデュースプログラム
  • 研究支援プログラム など
  • 18万円/月(生活費相当額として給付)
  • 30万円/年(研究費として助成)
  • 真に優秀な博士学生18名
  • コンピテンシー育成プログラム
  • 生活費相当額(18万円/月)
    研究費(30万円/年)

未来の医療を担う博士人材たち

未来学術フォアランナー

永川 真也

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研究科・課程・学年
生命科学研究科 博士後期課程2年
所属研究室
生物工学研究室

 

科学技術で困難を打ち破る

今日の生命科学分野はまさに日進月歩で進化しています。しかし、希少疾患では患者数が少なく、発病の機構が明らかでない・治療方法が確立していないといった問題が存在しています。そこで、疾患特異的細胞を樹立し、その細胞を用いて研究を行うことで問題の解決を図ります。私は自身の強みであるiPS細胞とゲノム編集技術を組み合わせた研究により希少疾患の機序解明と新規治療法の開発に貢献していきます。

研究タイトル
染色体欠失症の分子機序解明に向けた21番染色体欠失iPSCパネルと評価系の開発
研究概要
染色体(領域)の数的異常は、様々な発生異常と関連するが、その作用機序は未解明である。染色体異常症の病態モデルとして、患者由来多能性幹細胞(iPSC)株が近年注目を集める一方、染色体欠失症の多くは患者数が少ないためiPSC樹立が難しい。本研究の目的は、1)独自のメガベース染色体削除法による 21番染色体部分欠失ヒトiPSCパネル作成、および2)試験管内分化させた部分欠失iPSCを用いた疾患責任領域同定と分子機序の解明、である。本研究で得られる知見は、非コード領域を含めた新たなゲノム機能の理解に有用であるとともに、有効な治療法のない染色体欠失症の新規治療法開発に貢献すると期待される。

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加藤 駿

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研究科・課程・学年
生命科学研究科 博士後期課程2年
所属研究室
分子細胞生物学研究室

 

面白い発見を!

先人の研究により、様々な疾患とその発症機序が見出されてきました。しかし、難病と呼ばれる病が未だ多数存在するように、生体内の未解明な現象もまだ多いのが現状です。私は、そのような未解明の現象を紐解き、疾患の発症機序の解明や創薬の礎となる研究をしていきたいと考えています。

研究タイトル
脂質合成酵素acyl-CoA synthetase 3 (ACSL3)のオートファジーへの関与
研究概要
オートファジーは栄養飢餓への応答として発見されたが、今日、疾患を含む様々な生理的プロセスへの関与が明らかとなっている。一方、オートファゴソーム膜脂質の由来や分解された脂質がどのように使われるのかという基本問題についてはまだよく分かっていない。近年、通常は栄養過剰時に形成される脂肪滴が飢餓初期に形成されるという予想外の現象が見出された。オートファジーには脂質合成酵素ACSL4が関与することが最近示唆されているが、栄養過剰時の脂肪滴形成には同じファミリーのACSL3が働く。本研究では、ACSL3のオートファジーへの関与とACSL4との役割分担を調べ、脂肪滴形成とオートファゴソーム形成の関連を解明する。

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川添 輝

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程3年
所属研究室
薬品製造学教室

 

未知への挑戦

私は,分子レベルのものづくりを可能にする有機化学に魅了され,研究者への道を歩み始めました。本プロジェクトにおいて,私は独自の合成戦略を利用し,世界で誰も合成したことのない未踏分子の合成研究を進めます。同時に,ユニークで美しい構造をもつ未踏分子の物理的・化学的特性を追究することで,新たな生物活性分子や機能性分子の創出も目指します。

研究タイトル
芳香族ポリケチドの生合成にインスパイアされた非天然型ポリケチドの合成とその利用
研究概要
多置換・多環式芳香族化合物は,生物活性を始めとする分子機能が期待される化合物であるが,その体系的かつ効率的な合成は極めて困難である。この問題に対し,申請者は,芳香族ポリケチド生合成に着想を得た新たな多置換・多環式芳香族化合物の合成戦略を駆使することで解決を図っていく。同時に本研究で得られる生成物は,「擬似天然物」と呼ぶべき化合物群であることから,化合物ライブラリーの構築と機能の探索も進めていく。合成される化合物は,従来法ではまったくアクセスできない構造をもつ芳香族化合物であるため,その特異な分子構造ゆえに発現する未知の性質を探究し,生物活性を含めた新しい分子,機能性の発現を目指す。

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北谷 菜津美

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程1年
所属研究室
生体分析化学教室

 

計測で切り拓く科学の未来

計測技術の限界に突き当たると、科学および産業の進展は止まってしまいます。しかしながら、計測技術が十分に発展してきた現在においても、計測技術に限界があります。このような社会背景に鑑みて、計測できないものを計測できるような研究者を目指します。分析技術の開発を通して、学術や産業の発展、ひいては社会に貢献します。

研究タイトル
細胞から分泌されるエクソソームのリアルタイム計測技術の開発
研究概要
刻々と変動する生体高分子の動態を定量的に計測することは生命現象を理解するために必要とされる。本研究では、細胞から分泌されるエクソソームを拡散希釈される前に細胞近傍で計測できるシステムを開発する。本計測技術では、エクソソームの動態をリアルタイムで計測できるため、細胞を化学物質や脱分極の刺激を付与した際に、細胞がどのくらいの時間で、どのくらいの個数のエクソソームを分泌したのか明らかにできる。技術開発に求められる要素は、細胞近傍に接近させることのできる微小センサーの開発とリアルタイム計測が可能な技術であり、これを達成するために光ファイバー表面プラズモン共鳴(SPR)センサーに着目した。

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兒嶋 洸貴

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研究科・課程・学年
生命科学研究科 博士後期課程1年
所属研究室
再生医科学研究室

 

研究を新たな医療に昇華する

iPS細胞の発見から再生医療は目覚ましい発展がなされており、iPS細胞由来のミニ臓器や心筋シート、網膜色素細胞のin vitroでの作製が報告されています。私はそれに続くブレイクスルーとして、機能的なヒト臓器の創生を目指して取り組んでいきます。そして将来的には研究と本プロジェクトで得られた知見を活かし、基礎研究を新しい医療に繋ぐ研究者として先進医療に貢献していきたいです。

研究タイトル
異種間キメラにおける自己免疫反応および免疫寛容機構の解明
研究概要
動物の発生環境を利用した臓器作製法は、現在のところ多能性幹細胞から完全に機能的な臓器を作出できる唯一の方法である。しかし、異種の臓器をもつキメラ動物では1型糖尿病様の血糖値上昇や重度の皮膚炎など、自己免疫疾患様の症状が確認されている。キメラ動物で見られる免疫反応に関して、これまで詳細な解析はされておらず、動物体内での安全な臓器作製法の確立における一つの壁となっている。本研究では、様々な系統のラット-マウス異種間キメラを用い、新たな免疫寛容誘導システムの詳細を明らかにする。本研究は免疫学の新たな知見の獲得のみならず、臓器創生・移植治療の分野に大いに貢献できると考えられる。

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佐藤 圭恭

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程1年
所属研究室
薬物動態制御学教室

 

新たな常識を創造する

私は将来、アカデミア研究を通じて学問にパラダイムシフトを起こすような研究者になりたいと考えています。薬学や生命科学は、今までに積み上げられてきた数々の知見に基づく一方、その常識とされるものの中には根拠が不明確なものもあります。そのような常識にとらわれることのない、柔軟な着想を基に新たな常識を創造することで、医療の発展に寄与できるような研究をしていきたいです。

研究タイトル
トランスポーターを介した臓器連関の解明
研究概要
臓器連関とは、細胞と細胞、あるいは組織や臓器との間で行われる恒常性を維持するための情報交換機構です。古くから、臓器間の情報伝達は、ホルモンや神経伝達物質などの制御因子とそれらに対する受容体を介して行われることが知られていましたが、最近では、制御因子を標的細胞内へ送達することで情報伝達を行う機構の存在が明らかになりつつあります。本研究では、臓器連関における制御因子の膜透過を制御するトランスポーターを同定することで、制御因子の膜透過を説明し、臓器連関の詳細なメカニズムの解明に取り組みます。

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干川 翔貴

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程4年
所属研究室
薬品製造学教室

 

Go Far, Go Together

私は学部時代の「出会い」がきっかけで、研究の道を志しました。研究者として科学の発展に寄与し、ひいては人々の豊かな生活に貢献したいと考えています。基礎研究での発見が世の中に有用な形で反映されるには、様々な専門家によって知見が深堀りされていくことが必要です。分野に囚われない広い視野を養い、自分がまた「繋がり」のきっかけとなって、あっと言わせるような成果を挙げることのできる研究者を目指します。

研究タイトル
カルボアニオン含有置換基を導入した生細胞イメージングプローブおよび関連置換基の開発
研究概要
私達は最近、有機色素に対し安定なカルボアニオン構造Tf2C(–) (Tf = CF3SO2)を導入すると、その水溶性と親油性が同時に向上することを見いだしました。一般にスルホン酸塩やアンモニウム塩といったイオン構造の導入は、分子の水溶性を高める一方、親油性を低下させます。これら二つの物性は二律背反の関係にあると考えられ、両者を独立に制御することは、従来難しいとされてきました。私は本プロジェクトにおいて、十分な水溶性と親油性(≒細胞膜透過性)をあわせもつ、革新的な生細胞イメージング色素の開発を進めます。また、フッ素原子の数を増減させた関連置換基の開発を進め、化合物のより精密な物性制御法の確立を行います。

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松沼 菜摘

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研究科・課程・学年
生命科学研究科 博士後期課程2年
所属研究室
腫瘍医科学研究室

 

SDMs; Sustainable Development of Medical Standard

私は、持続可能な医療水準の向上「SDMs; Sustainable Development of Medical Standard」を目指して、基礎研究に取り組んでいます。近年、医療は多くの基礎研究により目覚ましい進歩を遂げていますが、各分野が孤立している現状では今以上の創造性は望めません。今後も発展し続けるためには、研究成果をベッドサイドへと効果的に還元するTranslational Researchや、様々な分野を融合した新発想の基礎研究を強化することが必須です。私は、これらを軸とした基礎研究に邁進し、「SDMs」に貢献します。

研究タイトル
HMGA2高発現MDSクローンによる器質化肺炎発症機序の解明
研究概要
骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞に生じた遺伝子異常に起因して発症する難治性造血器腫瘍である。主病態である血球減少や異形成、急性白血病への移行の他に様々な全身臓器障害を合併することが知られているが、それらの詳しい発症機序はよく分かっていない。High mobility group AT-hook 2(HMGA2)は、様々ながんの進展への関与が報告されているがん遺伝子である。造血器腫瘍においては原疾患の病態増悪因子として知られている。MDSにおいても高発現の症例が報告されているが、病態に及ぼす影響については不明である。本研究では、MDS患者検体およびHMGA2高発現MDSマウスの解析を通じ、HMGA2高発現がMDS病態に及ぼす影響とその分子機序を明らかにすることを目指す。

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未来創薬イノベーター

大木 聖矢

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程2年
所属研究室
個別化薬物治療学教室

 

脳研究, NO LIFE

私は、成果をもって、社会を変え続ける研究者を目指します。ここでの社会とは先天性希少疾患の創薬研究に取り組みやすい社会を指します。このような社会を実現させるために、本研究テーマを足掛かりに、希少疾患創薬のあり方を変える、そんな研究を進めてまいります。また、将来は研究領域全体の戦略を立て続けることを仕事としたいと考えています。今は、研究者としてまだまだ未熟ですが、研究テーマやBUTTOBEの多彩なプログラムを通して、BUTTOBE採択期間に大きく成長してみせます。

研究タイトル
希少疾患創薬の活性化を指向した新規ヒト脳モデルの開発
研究概要
先天性希少疾患は、患者数が少なくマーケットが小さことから、製薬企業が創薬に最も取り組みにくい疾患の1つです。特に、中枢症状に対しては、血液脳関門を透過して脳内へ移行できる医薬品がなく、ここに大きなアンメットメディカルニーズがあります。本研究では、希少疾患型ヒト脳モデルを開発し、さらにその治療用高分子の脳移行性と薬効の同時評価への応用までを実証することを目的とします。本モデルを用いることで、ヒト外挿性のある薬物の脳移行性と薬理効果の同時評価をできることが明らかとなります。本研究成果は、希少疾患創薬の活性化に繋がることが期待されます。

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志田 颯

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程3年
所属研究室
薬品化学教室

 

見た目は子供、頭脳は化学者

私は、自身を魅了した「化学」の力で社会貢献したいと考えています。また、単に組織に属するのではなく、リーダーとして常に成長し続けられる優れた組織の構築に尽力したいという志があります。日々の研究活動の中で、子供のような好奇心を忘れることなく化学者としてのスキルを体得し、いつの日か私の目指す組織の構築、ひいては社会貢献に繋がることを期待しています。

研究タイトル
Npys誘導体による新規化学修飾法の基盤構築とその抗体薬物複合体の創製
研究概要
ペプチドやタンパク質の化学修飾は、蛍光分子や放射性タグの導入による分子の高度化のみならず、高分子医薬品の新規創製に繋がる重要な基盤技術である。私は、所属研究室にて独自開発したNpys誘導体によるアミノ酸残基側鎖への反応性を利用した、新たなタンパク質化学修飾法の開発を目指している。本研究では、変異タンパク質を用いた本修飾法の化学基盤構築及び、その応用例として優れた標的指向性を有する高分子医薬品である抗体薬物複合体の創製を試みる。

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高橋 直熙

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程4年
所属研究室
漢方資源応用学教室

 

『PLANT』の創出を目指して

異なる領域の知識を融合させ、その成果を確実に社会へ送り込む研究者を目指しています。具体的には、世界中から植物を収集し、活性評価を行います。活性を示した植物については、活性成分を同定し、構造活性相関の知見を活かしながら最大限活性を発揮できる構造に変換します。そして、変換した化合物を植物が効率的に生合成できるよう遺伝子を改変し、最終的には、植物自体が製薬工場となる『PLANT』の創出を目指します。

研究タイトル
マイトファジー誘導活性に着目した高等植物由来新規がん治療薬シーズの探索
研究概要
本研究は、マイトファジー誘導を作用メカニズムとする天然物由来新規がん治療薬シーズの探索を目的としている。高等植物から見出した新規化合物は強力な腫瘍細胞毒性を示すとともに、腫瘍細胞に対してマイトファジーを誘導する可能性が示唆された。天然物由来化合物のマイトファジー誘導に関する研究例は非常に少ない。本研究では、新規化合物のマイトファジー誘導活性ならびに活性発現に寄与する構造活性相関を明らかにする。また、既存のがん治療薬との併用効果を評価し、がん治療薬の副作用軽減に向けた検討も行う。本研究は、希少がんや難治がんに対する治療薬の選択肢が十分でないという課題解決に向けた成果が期待される。

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松沼 真澄

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程2年
所属研究室
病態生化学教室

 

一つひとつ堅実に前進

私が研究に取り組む原点は、治療困難な疾患の発症機序の解明および治療薬の探索を通じて患者のQOLを向上させるより良い医療を提供することにあります。組織線維化は、様々な器官の機能不全に関与するため、関係する患者数の多い病態の一つです。しかしながら、現在、線維化した組織を修復する有効な治療薬は存在しません。私は最先端の技術や手法を習得し、新しい知見を生み出すことで、組織線維化を克服することを目標としています。研究成果を通し組織線維化のもたらす疾患や社会的負担を広く伝えることで、医療現場や医療制度に貢献することを目指します。

研究タイトル
腎臓の線維化における組織常在性マクロファージおよびラミニンの役割の解明
研究概要
腎臓の線維化は、慢性腎臓病に見られる共通の組織所見である。腎臓だけでなく、線維化した組織の機能回復は高いアンメット・メディカル・ニーズであり、抗線維化に向けたメカニズムの解明が求められている。これまでに、組織常在性マクロファージが線維化に至るプロセスの鍵となることが明らかになっているが、そのメカニズムは十分に解明されていない。最近、組織常在性マクロファージが尿細管周囲の血管基底膜に接着しており、活性化に伴って血管障害をもたらす可能性が示された。本研究では、腎臓の線維化において鍵となる組織常在性マクロファージと尿細管周囲の血管基底膜に含まれるラミニンの役割を明らかにする。

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村野 周子 アンバー

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程1年
所属研究室
薬品化学教室

 

Collaboration of the Japanese Spirt and Globalism

私はバイリンガルである強みを研究に活かします。近年の国際化においては、生まれ育った価値観・国民性を変える柔軟性を問われます。一方で、グローバル化とは国民性をアピールするという矛盾があります。そこで、日本人、国際人としての利点と欠点を実際に経験してきた私は、研究において、日本人の緻密さ、こだわりの強さを残し、国際人の利点である多様性を受け入れるマインドと柔軟さを取り入れることによって、日本の研究者がより社会に貢献できる環境を創りだします。

研究タイトル
SARS-CoV-2 の 3CL プロテアーゼを選択的に光酸素化する触媒-リガンドコンジュゲートの開発
研究概要
新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) の 3CLプロテアーゼ (3CLpro) はウイルスが細胞内で複製されるのに必須であり、その不活化剤は SARS-CoV-2 の治療薬となる。この3CLpro を不活化する新しい方法として、我々は光酸素化に着目している。光酸素化とは、光のエネルギーを利用して酸素原子をタンパク質の構造に挿入する化学反応である。申請者らが開発した光酸素化触媒を 3CLpro のリガンド (阻害剤) と連結することで、3CLpro を選択的に光酸素化し、不可逆的かつ触媒的に不活化することができる。これは新しい抗ウイルス戦略に繋がる。

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山口 泰暉

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程1年
所属研究室
薬物送達学教室

 

流れを見極め、革新的なアイデアを!

私は、新薬開発研究に携わり、世界中の人々の健康へ貢献する研究者になりたいと考えている。現在、世界情勢や研究進捗によって、自身の研究を取り巻く環境は大きく変化している。したがって、アンメットメディカルニーズに応えるために、積極的に世界の研究者と交流を図りながら最先端の研究に携わり、薬物治療の可能性を広げていきたい。また、今後、先見性や変化する状況に対応する能力を身に着けることで、革新的なアイデアでブレイクスルーとなる研究を行い、多くの患者を救う薬を世に送り出したい。

研究タイトル
超音波応答性遺伝子搭載ナノバブルの開発とがん遺伝子治療への応用
研究概要
これまでに当研究室では、超音波造影と遺伝子導入を可能とする超音波応答性ナノバブル(NBs)を開発してきた。本研究では、従来型NBsよりも安定性の高いアニオン性NBsに対し、カチオン性物質でコーティングすることで全身投与に有用な遺伝子搭載バブル製剤を開発する。さらにゲノム編集技術を融合させ、 ゲノム編集ツールとして働く遺伝子を搭載したNBsと超音波照射の併用により、診断と治療を同時に行うセラノスティクスを可能とする革新的がん遺伝子治療システムの構築を目指す。
本研究により、種々の難治性がん治療のみならず、多岐にわたる疾患の遺伝子治療の突破口となる全身投与型DDS製剤の開発へと繋げていく。

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吉澤 由佳

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程2年
所属研究室
漢方資源応用学教室

 

植物含有成分の力で世界中の人々の健康と笑顔を守る

植物は様々な生物活性を有する化合物を生合成しています。その中には、未だ見出されていない医薬品シーズとなりうる化合物があると考えられます。私は植物から未知の化合物を発見し、その生物活性を明らかにすることで世界中の人々を病から救う医薬品の開発に繋げることを目標に日々研究を進めています。また、本プロジェクトを通じて私自身のスキルアップを図り、女性研究者として日本の研究の更なる発展を目指します。

研究タイトル
植物成分を由来とする新規がん治療薬シーズ化合物の探索研究
研究概要
日本人の死因の1位は悪性腫瘍 (がん) であり、新たながん治療薬の開発が必要とされている。本研究では、腫瘍細胞に対して細胞毒性を示す新規化合物を植物から単離・構造決定し、それらの細胞毒性メカニズムを解明することで、臨床応用の可能性のある新規がん治療薬シーズを見出すことを目的とする。これまでに、キンポウゲ科 Helleborus niger 全草の成分探索を行い、新規ブファジエノリド配糖体を単離した。ブファジエノリド類は一般的には強心活性が知られているが、がん細胞に対する細胞死誘導メカニズムは未解明な点も多いため、その詳細な作用メカニズムの解明を行う。

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未来医療社会クリエイター

國枝 美里

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程1年
所属研究室
薬物動態制御学教室

 

現状に満足せず、未来の常識を創造する

私は将来、「薬学者の薬剤師」として薬剤業務と並行して研究活動することで、臨床現場から医療の進展に貢献したいと考えています。さらに、Reverse Translational Research(臨床問題の解決志向型の研究)を実践できる研究・教育・指導体制をもつ病院薬剤部をつくりたいと考えています。最終的には、日本の臨床薬剤師も研究活動することが常識となった薬剤師業界への改革を目指しています。本プロジェクトを通じて私自身の研究スキルを向上させるだけでなく、組織マネジメントや社会学などの幅広い分野へ見聞を広げることで、夢への第一歩を踏み出します。

研究タイトル
小腸上皮細胞側底膜における中分子ペプチドトランスポーターの同定と機能解析
研究概要
近年、経口投与可能な新規創薬モダリティとして中分子ペプチド医薬が注目されているが、その腸管における吸収性は低いことが顕在化している。さらに、経口投与製剤の開発においては、小腸上皮細胞の頂端膜だけでなく側底膜における輸送も考慮した高精度な吸収動態の予測や吸収性を高める戦略が必要となる。本研究課題は、小腸上皮細胞の側底膜に局在する中分子ペプチドトランスポーターを同定するものである。さらに、その細胞内局在および機能を制御することで、中分子ペプチド医薬の経口投与製剤の開発に応用できると期待される。

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杉山 滉基

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程4年
所属研究室
薬物動態制御学教室

 

世界に飛び出し、日本を変える

私は、日本の薬剤師という枠に囚われず、海外で研究と臨床に携わり、幅広く活動したい。世界と比べると日本の薬剤師は、職能をいかしきれていないと感じる。さらに、AIやテクノロジーが発展していくこれからの時代に薬剤師として新しい価値を見出す必要がある。だからこそ、世界の医療や研究を経験し、自身が新たなモデルケースとなること、そしてその経験から日本の薬学、医療の進展、改革を目指す。

研究タイトル
小腸上皮細胞基底膜における薬物の排出機構の解明
研究概要
トランスポーターは、受動拡散によって細胞膜を透過しない薬物の吸収に関与している。吸収のメカニズムは、管腔から小腸上皮細胞への薬物の流入と、細胞内の薬物の血液への排出を仲介する2種類のトランスポーターが関与する。現在、頂端膜の流入トランスポーターは同定されているが、基底膜側は、MRP1とMRP3のようなATP依存性の排出トランスポーターを除いて、未だ知られていない。本研究では、基底膜側における促進拡散型の有機アニオントランスポーターを探索し、薬物吸収に関わる分子メカニズム解明に取り組む。本研究で得られた知見は、経口薬の薬物動態予測の精度を向上し、吸収性に優れた医薬品の開発に貢献するものと考える。

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矢野 結友

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研究科・課程・学年
薬学研究科 博士課程4年
所属研究室
薬物送達学教室

 

新たな薬剤師へ+α

私は新時代で活躍する薬剤師を目指すため、+αの知識として統計を身に付けたい。医療分野でもIoT化が加速し、薬のみならず生活環境などの情報も蓄積されつつある。そういったビックデータを生かし薬物治療の質の向上に繋げるには、解析されたデータを吟味する能力や自ら解析する能力が必要である。本プロジェクトを契機に統計やプログラミングを学び、データを活用して最適な薬物治療を提供できる臨床薬剤師を目指したい。

研究タイトル
がんセラノスティクスシステム構築を指向した抗体医薬搭載ナノバブルの開発
研究概要
本研究は、HER2陽性難治性がん(乳がんや卵巣がんなど)の標的化治療に資する抗体医薬を搭載したナノバブルと超音波との併用により、難治性がんに対する診断と治療を行うセラノスティクス(診断と治療の一体化)システムの構築を目的とする。本法では、HER2を標的とした抗体医薬(ハーセプチン®)を利用してナノバブルを効率的にがん組織へ集積させ、周波数の異なる超音波(診断用及び治療用超音波)を併用することで、ナノバブルと超音波照射による抗体医薬のがん組織への効率的送達を達成し、がんセラノスティクスシステムを構築する。本研究の遂行により、臨床応用を見据えた次世代型がん治療戦略の確立を目指す。

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卒業生からのコメント

青栁 泰成

BUTTOBEでは、単に研究を行っているだけでは身に付けることができない知識や能力を習得することが出来ました。とりわけ、自身の研究成果をビジネス化し、社会展開を目指す上で重要な考え方(ビジネスマインド)を学ぶことができたのは私にとって貴重な経験でした。私の信念は「研究の力で病に苦しむ人を救う」です。研究成果を論文として発表することは研究者にとって必要不可欠ですが、私はそれ以上に研究成果が社会に還元され、人々に届くことが大切だと考えています。BUTTOBEで得た知識を今後さらに磨いていき、社会に変革をもたらすような研究者を目指していきます。本プロジェクトを企画・遂行してくださった多くの先生方に、この場を借りて深く御礼申し上げます。ありがとうございました。

石井 大暉

本プロジェクトに参加することで広い視野で物事を考えられるようになりました。その背景には、多くのプログラムを通じて対自己スキルや対課題スキルを習得するだけでなく、自分自身の将来などを見つめ直す時間が設けられており多くの人の意見や話を聞くことができたためと考えています。また、BUTTOBE 活動では定められたプログラムだけでなくセルフプロデュースなどで自身にあった活動を行うことができました。今後はBUTTOBE 活動で学んだことを活かし研究者として活躍していきたいです。

岡元 ちよみ

1年半BUTTOBE採択生として活動し、採択前と比較して様々な側面で主体性をもてるようになったと感じる。これまで受講してきたいずれのプログラムも自身の成長に寄与したと考えているが、特にBUTTOBEアクションプログラムはその最たるものである。私自身が「やってみたい!」と思ったことに対して先生方や事務局が支援してくれるため、挑戦することに自信と喜びが持てるようになった。
私はBUTTOBEの選考時に、「学際性の構築」、「(フロントランナーとしての)資質の向上」、「海外経験」の3つを自己育成プランとして掲げた。1年半という期間では十分に達成できたとは言えないが、BUTTOBE活動により、その達成に近づいていると感じている。
またBUTTOBE活動を通じて研究科、学年を超えた意見交換ができたことも意義深かった。他の採択生たちの将来像や夢を聞くことで、自らの研究活動やキャリアパスの構築に対するモチベーションの向上にも繋がった。
BUTTOBEは博士課程学生の挑戦を後押しする事業であり、今後も未来の医療を担う博士人財の創出のために本支援事業の継続を望む。

小泉 珠理

BUTTOBE生として採択され、約1年半に渡り、自らのキャリア開発を行う機会を得ることが出来ました。漠然と考えていた将来の目標を自分の言葉で表現し、学生内で共有することによって、より明確なビジョン、研究者として自分がやるべきミッション、研究を遂行する上でのバリューを確立することが出来ました。
卒業しても変わらずに、感染症で苦しむ人々のための研究を行うことを自らのミッションとして新天地でも研究に励みたいと思います。
最後にBUTTOBEの運営に関わって下さった先生方、事務局の方々にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

徳弘 拓斗

今年度はデータベース作成および新規スクリーニング法の確立を行った1年となった。新たな研究計画の立ち上げということもあり、研究者として重要な研究構想の立ち上げ〜実行までを経験できた重要な1年となった。その上で研究奨励費および研究費の支援は、これら経験の精神的支えとなり、この機会を与えてくださったJSTおよび先生方、職員の方々には感謝しかない。
プログラムに関しても有意義なものばかりで、発表技術や英語・実践経験など多角的に鍛えることができ貴重な経験となった。これまで実験の効率化や知識収集にとらわれることが多かったが、様々な視点や刺激を受け研究室生活を通して大きな意味が生まれた1年半であったと感じる。関わってくれた博士学生、このプロジェクトを支えていただいた本学の先生・職員の方々に改めて感謝すると共に、これからの人生を通し社会還元に繋げたい。

苫米地 隆人

BUTTOBE活動では、自身にはなかった考え方を学ぶことができた。特に、bootcampや基礎コースワーク(ビジネスマインドトレーニング等)を通して学んだビジネスの基本的な考え方は、BUTTOBEに採択されなければおそらく知ることもなかったため、本活動を経験できてよかった。このような考え方は、今後の研究人生おいて、研究成果を社会へ展開し、社会を変えていくために重要であるため、意識し続けていきたい。BUTTOBE活動の多くは他大学では実施されないであろうユニークなものであり、この経験を通して、博士人材の中でも少し特殊な人材になったのではないかと感じる。本プログラムを終えた後も、この経験を糧に挑戦し続け、将来BUTTBEるよう頑張っていきたい。

望月 美歩

全体を通して意義深いと感じた点は、自らではあまり調べたことのない情報・知識を受動的に学べたということです。例えば、基本コースワークでは、ビジネスマインドに基づいた課題解決のプロセスや組織におけるコミュニケーションを知り、また、希望者のみ受講可能な知財教育プログラムでは、特許等の知的財産における基礎知識や、企業・大学における特許との関わりについて学びました。BUTTOBE活動に参加していなければ、これらの知識を得るのは何年も先だったと思います。
さらに、異なる分野の研究者と関わることができたことも有意義でした。それぞれの研究の立ち位置を理解するきっかけとなったとともに、広い視野で物事を考える大切さを実感しました。

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東京薬科大学 教学IR研究推進課