DXで学びに革新を #02

学修者本位の教育実現に向けた基盤整備 ~AI 活用に向けて~

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薬学部 医療衛生薬学科
薬学教育推進センター 黒田 明平 教授

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  • 入学から卒業までの学びを視覚化
  • AI導入に向けデータを集積
  • カルテをキャリア教育や就活にも活用

入学~卒業・進路のデータを統合・整理する

「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」(中央教育審議会)では、「学修者本位の教育への転換」が基軸となっており、その背景には IoT や AI 等の技術革新の普及が挙げられます。AI を活用した学修者本位の教育実現に向けた基盤整備を目的とし、学生ごとのデータ(入学前、学修、進路等)を教職協働(入試センター、薬学事務課、キャリアセンター)で集積し、統合・整理しています。具体的には、出身高校と成績、入試形態と得点率、入学前教育(指定校、AO、一般公募入学生を対象)への取り組み状況、1~6年次のGPA、4・6年次の総括的試験(卒業試験含む)と模擬試験の得点率、就職活動と進路データを学生ごとにまとめています。各学生を「点」ではなく、入学から卒業・進路までの「線」で捉えることで、見えてくることが必ずあると思います。薬学部の教育DX化、さらにはAI導入に備え、可能な限り多くのデータを統合・整理し、シームレスなデータ解析をするとともに、機械学習用のデータを集積していきます。

edudx_01-2-1.jpg黒田 明平 教授

edudx_01-8.jpg各学生の入学前から卒業(進路)までのデータを統合・整理し、シームレスなデータ解析へ

edudx_01-9.jpg統合・整理したデータを解析し、入試センター、薬学事務課、キャリアセンターへフィードバック

学修カルテで学習履歴を「見える化」する

edudx_01-3-1.jpg学修カルテ|基礎情報と1~4年次までの成績

edudx_01-3-3.jpg学修カルテ|4年次総合演習Ⅱ試験と6年次総合薬学演習Ⅱ(卒試に相当)の成績

学生が学期末に受け取る成績通知書には、各科目の成績評価(S・A・B・C…)は記載されていますが、複数年次を通してどの科目区分(例えば生物系薬学、薬学臨床など)でよい(あるいは悪い)成績をおさめているかを、学生は把握しにくいのが現状です。本事業では、「学修カルテ」用の成績データをワンステップで作成・出力できるように、成績管理システムの補修を実施します。学修カルテでは、科目区分ごとに平均GPAを算出し、レーダーチャートを作成することで学修成果を視覚化(=見える化)するとともに、自分自身のストロングあるいはウィークポイントを確認できます。さらには4年次後期に実施される総括的な試験(総合演習II試験)のデータも加え、学生がまず4年次終了時に学修カルテを出力できるように準備を進めています。学修カルテは、6年次後期の総括的な試験(総合薬学演習II試験。卒業試験に相当)と薬剤師国家試験に向けての教員からの学習指導のほか、就職活動にも役立てられることが期待されます。課題研究(=卒論研究)成果の「見える化」を目的の一つとして、6年次には「卒業論文研究ディプロマ・サプリメント」が発行されています。卒業試験の結果も記載される学修カルテは、卒業時にも発行することを想定しており、大学が発行する成績証明書を補完する「学修ディプロマ・サプリメント」と言えるかもしれません。

データを解析し、共有する

edudx_01-4-1.jpgAI分析を志向した教職協働による基盤整備

 統合・整理したデータを用い、入試情報、入学後の学習プロセス(GPA推移等)、高学年次(4、6年次)の総括試験成績、進路、それぞれの相関を統計解析するとともに、学習への「つまづき」の原因や留年・退学に至った経緯を分析します。また、WebClass(インターネットを利用して、資料の提示、テストの実行、レポートの提出等が行えるシステム)の利用履歴と学習成績との相関性も調査する予定です。統合・整理・解析されたデータは、「AIの機械学習用」として利活用され、各学生への AI による(1)アダプティブ・ラーニング(各学生の学習状況をモニタリングし、過去の学習データに基づき「つまづきポイント」を検出し、習熟度にあわせた学習アドバイスや補習教材を提示)、(2)学修アドバイス(前学期あるいは年次ごとに学修全体に関わるアドバイスや総評)、(3)ロールモデル提示(卒業生プロファイルと比較し、目標やモデルを提示することで成長をサポート)や国試合格率の予測へ繋がることが予想されます。