DXで学びに革新を #04

AIで薬剤師の業務をもっとクリエイティブに

  • 薬学部
  • 人工知能 AI
  • 対人業務

薬学部 医療薬学科
薬学実務実習教育センター 堀 祐輔 教授

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  • AIが薬剤師業務の向上に
  • 最新の薬局業務を理解
  • AIと協働できる薬剤師育成

医師の治療方針に対応した調剤の実施で、待ち時間を短縮

近年、薬剤師業務の中心が、「対物業務」から「対人業務」に移行してきており、各患者の求めに応じたケアが重要となって来ています。これまで時間の掛かっていた、監査、調剤、服薬指導業務などへのAI技術の導入により、正確で的確な服薬指導が可能となると考えられます。本学では時代のニーズに合わせた最先端の教育を行い、次代を担う薬剤師の育成に努めてまいります。日々、応需する処方箋には処方内容によって、患者の病状に従い処方量を適宜増減させることや、医師独自の経験や治療方針に基づいて書かれていることが多く、全ての処方箋が添付文書通りに記載されていないことがあります。また、患者の希望や好みによって、疾患名が同じであっても患者毎に処方内容や処方量が異なることもあります。薬剤師はこれらの違いを、経験を重ねながら理解、記憶し、調剤、監査、服薬指導を行っています。AIを活用することで、各医師の処方方針や処方量を学習させ、過去の疑義照会の内容を効率的に提供させることで、不要な疑義照会を減らすと同時に精度の高い処方提案が可能になると考えられます。その結果、新人薬剤師や、異動などにより勤務地が変わった薬剤師でも、正確な判断が素早くできることになり、最終的には薬局における患者の待ち時間短縮にも繋がると考えられ、今後はAI技術の活用が進むと考えられます。

edudx_05-2.jpg堀 祐輔 教授

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最新の薬局業務の理解と、あるべき薬剤師像の構築

edudx_05-4.jpg事前実務実習の様子

edudx_05-5.jpg実際の薬局で使用されている機器を扱います

edudx_05-6.jpg大型モニターによる手技の実演

edudx_05-7.jpgオンデマンドで学習できるビデオ教材

病院、薬局ではレセコンだけでなく、多くの調剤機器や鑑査機器などが導入され、在庫管理と同時に、鑑査、調剤、服薬指導が効率的に行われています。一方で多くの薬学部では、依然として旧来からの調剤技術に関する教育が主に行われている状況に有り、卒業生が新人薬剤師として就職した後に、各種機器の機能や操作方法を学ぶ必要が有ります。本学では、これらの調剤技術の学習において、実習室内に設置されたビデオカメラと複数の大型モニターを用い、教員の手技が教室内のどこからでも確認できると同時に、ビデオをWeb上に公開して何度でも確認できる環境を提供しています。このため学生は、予習、復習したい時に、いつでも視聴することができます。また、就職後の機器操作にも困らないよう、最新の調剤機器を実習中に操作し、即戦力としての知識・技能の習得させます。今後も更に各種最新機器の導入を進めて行く予定です。

AIとの協働により国民に信頼される薬剤師へ

一部の人の中では、AI技術の発展、普及により薬剤師業務が奪われ、最終的には薬剤師が不要になるとの誤った認識を持つ方がいらっしゃいます。前述しましたが、薬剤師業務は大別すると「対物業務」と「対人業務」が有り、対人業務は薬剤師しかできない業務と考えられます。また対物業務においても最終的には薬剤師による鑑査が必須なものです。

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これまで、鑑査能力は薬剤師経験によってその精度も変化することから、多くの医療機関では主にベテランの薬剤師が担当することが多いです。また、様々な疾患で複数の医療機関を受診している患者もおり、それぞれ医療機関へ求めるものが異なっています。薬や副作用の説明をじっくりして欲しい方もいれば、説明は簡潔にして直ぐに帰りたい方もいます。また、薬に関する知識、認識、コンプライアンスやアドヒアランスにも個人差が有るため、薬剤師は過去の薬歴で患者の希望や特性を確認、理解してから服薬指導を行っていいます。本学では、ゼミナールなどにおいて他大学や企業との連携を通し、学生に対してAI技術の有用性および活用の方向性について教育すると同時に、レセコンや電子薬歴や調剤機器へのAIの活用方法について少人数で討論を実施し、結論をグループ毎に発表する課題を出しています。このように学生には、AIの活用方法などを論議し、AIと協働する方法を探る思考や習慣を身につけさせ、薬剤師の能力向上と職域拡大を目指した、次代を担う人材の育成に取り組んでいます。これまでのような経験や薬剤師個人の能力だけに依存した専門職から、新人でも即戦力として実力を発揮したり、立案できる、総合的な能力を有した学生を育てる環境を構築中です。国民から信頼され、皆の健康維持に貢献できる薬剤師を多く輩出してまいります。

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