研究活動研究者が語る 東薬の先端研究 「がんをやっつけろ!」を合言葉に医学研究の実践

原田 浩徳 教授

生命科学部 生命医科学科 腫瘍医科学研究室

誰ががん研究をしているの?

医学、とりわけがんの研究をするための条件はあるのでしょうか?がん研究者は医学部や薬学部出身者だけではありません。「がんを治したい」のモチベーションさえあれば、資格はいりません。「病気を診る」のは医師や薬剤師だけではありません。「がんを治す」を合言葉に医学研究の実践と研究者の育成を実践しています。

死因の第1位がんは増えている!

がんの予防、検診、治療技術の向上により、がんの治療成績は良くなっています。しかし、依然として我が国の死因の第1位です。近年、遺伝子配列を高速・大量に解析できる次世代シーケンス技術が進歩し、がん細胞の遺伝子の傷(遺伝子異常)が多数同定されました。これらの遺伝子異常は単独でがんを発症することはなく、いくつもの遺伝子異常が積み重なることでがんにいたることがわかってきました。患者さんの遺伝子異常を一度にたくさん調べる検査も登場しました。このように、がんの原因である遺伝子異常が明らかになってきています。これを、がんを治す治療の開発につなげていくことが必要です。

橋渡し研究:トランスレーショナルリサーチの実践

がん患者の臨床研究(ベットサイド)と基礎研究(ベンチ)がタッグを組まなければ、新規の治療薬は生まれません。患者さんのがん細胞を検査し、得られた遺伝子情報を集め、非常に膨大な情報(ビッグデータ)を網羅的に解析し、得られた結果をもとに基礎研究を行います。この「トランスレーショナルリサーチ」の実践が、画期的な治療薬の開発すなわち治療の向上につながると考えます。

高齢化社会で急増している新たな血液がん「骨髄異形成症候群(MDS)」とは?

MDSは60歳以上の高齢者に多く、貧血など血液細胞が減少する病気で、後に異常な細胞が増えて白血病へと進行するため、「第2の白血病」とも呼ばれています。高齢化社会で患者数が急増していますがよい治療法がなく、治療薬の開発が緊急の課題となっています。我々の研究室では、まずMDS患者の遺伝子情報をバイオインフォマティクス手法により網羅的に解析します。そして得られた複数の遺伝子異常をマウス造血幹細胞に遺伝子導入してMDSモデルマウスを作成し、発症機序の解明と分子標的薬の開発を行います。得られた候補薬はMDSモデルマウスに試して効果を確認し(前臨床試験)、患者さんの治療につなげることを目指しています。

図1

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今後の医学研究は?

超高齢化社会を迎え、今後さらに新たな病気が見つかると予測されます。病気の原因を解明して治療薬を開発するためには、トランスレーショナルな医学研究が必要であると考えます。