研究活動研究者が語る 東薬の先端研究 人工的にヒトを創る!?薬の開発を変えるミニ臓器

降幡 知巳 教授

薬学部 医療薬学科 個別化薬物治療学教室

ミニ臓器ってなに?

ミニ臓器とは、私達が持つ臓器(脳、肝臓、腸など)を実験室で再現したものを指します(人工臓器などとも呼ばれます)。ヒトの臓器は多様な細胞が無数に集まって出来ています(肝臓では7~8種、2500億個の細胞)。以前は各臓器に代表的な細胞1種類だけがヒトの臓器の代わりとして薬の研究に用いられてきましたが、最近では、より精密に・正確にヒト臓器を再現しようとする取り組みがはじまっています。つまり、ヒト臓器を構成する複数の細胞を組み合わせ、さらに細胞以外の要素も組み込んで、本物ソックリのヒト臓器を創ってしまおうということです。

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ミニ臓器で何するの?

ミニ臓器は、薬や治療法の開発になくてはならないものです。薬はヒトで効いて初めて意味があります。ですから、薬がヒトで効くかを知るには、「ヒト」で試す必要があります。でも、どんな作用があるかわからない薬をヒトに投与することは出来ませんよね?そこで活躍するのがミニ臓器!ヒト臓器そっくりだから、薬に対する反応も本物そっくり!ミニ臓器を使えば、ヒトに投与しなくても薬の効果や副作用を調べることができ、薬が分解されていく様子も解析できます。さらに!細胞の遺伝子を人為的に改変したり、病気の環境にさらしたりすることで、ミニ臓器でヒトの病気を再現する研究も進んでいます。

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死なない細胞でいいかげんにヒト脳を創るプロジェクト

私達は、オリジナルの死なない細胞(不死化細胞)を創り、それを使ってヒト脳(ミニブレイン)を創っています。ポイントは不死化細胞を使うことと、いいかげん(加減)であること。死なない細胞を使うことで、いくらでもミニブレインを創ることが出来ます。さらに、本物に近いながらもいいかげんにすることで、誰でも簡単に使えるようにしています(もちろん、本物ソックリのヒト脳の再現にも挑戦するぞ)。だから、誰でも好きなだけ脳の薬や治療法の研究ができる!こんなのなかった!私達だけで使うのはもったいない!というわけで、現在、日本をはじめ世界各国の研究者と不死化細胞の共有を進めています。

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ミニブレインが描く未来

私達のミニブレインは、これまで出来なかったことを可能にします。つまり、ヒト脳疾患に対する治療標的の探索や抗体医薬・核酸医薬など脳疾患に対する次世代医薬のスクリーニングなど、以前は出来なかった切り口で脳の薬や治療法を開発することができるようになります。そこで現在、私達は多くの製薬企業や医学研究者と共同研究を進めています。このようなミニブレインを用いた研究から、アルツハイマー病、脳梗塞、多発性硬化症、パーキンソン病などの脳疾患に対して、画期的な薬が生み出されることを期待していますし、私達のミニブレインが-脳疾患の克服-という明るい未来を描き出すことを夢見ています。

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大学での研究は学生も主役だ!
「こんなこと出来たらいいな」を実現しよう

大学の研究は教員が主役?いやいや、もう一人。教員と学生は二人三脚で研究を進めますが、多くの場合、実験を進めるのは学生さんで、真っ先に学会で発表するのも学生さん。つまり、君がその手で世界で初めての発見をし、それを世の中に公開する。これってもはや主役でしょ?
大学での研究の面白さは、「あんなこと出来たらいいな」に実際に挑戦できること。ミニ臓器の分野では、複数のミニ臓器をチューブでつないで擬似血液を流してヒトそのものを創っちゃおうという試みが!iPS細胞と組み合わせれば、個々人に対する薬の評価(個別化治療)が出来るという夢も!
君が描く「こんなこと出来たらいいな」、私達と一緒に大学で挑戦してみませんか?

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