ニュース&トピックス 本学教員がアメリカ・イリノイ大学シカゴ校で短期臨床薬学研修コースに参加しました

  • その他

2019.09.12

薬学部 臨床薬剤学教室
平田 尚人 准教授
2019年に東京薬科大学は、イリノイ大学シカゴ校(UIC)薬学部との間に学術交流に関する提携を新たに結びました。これを機に、UICが毎年7月に開催しているInternational Summer Programに、実務系教員の立場で参加させていただきましたので、その内容についてご紹介します。
【コースの概要】
このプログラムは米国の臨床薬学教育の中でも定評のあるUIC薬学部が、特にアジア地域の薬学生や現役薬剤師などを対象として、2013年に創設した4週間の短期臨床薬学研修プログラムです。
参加者の国籍は、アジアを中心に、中国本土、香港、マカオ、台湾、タイ、フィリピン、そしてスペインと多彩で、日本人の参加は今回が初めてとなるため、とても緊張しました。
1.jpg
【講師陣とレクチャーの手法】
このプログラムの責任者であるAlan lau教授をはじめとする講師陣は、全員が附属病院や薬局、外来診療部門で臨床業務に就きながら教鞭をとる実務教員で、日頃から薬学生、PharmDコース、レジデント(PGY:卒後研修生)の教育を担っています。
そのため、毎回の熱心なレクチャーは臨床に即した内容で、医薬品なども実物を持ち込んで実施されます。ディスカッションやロールプレイなどの手法が随所に取り入れられ、ときには現役のPharmDコースの学生やレジデントも一緒に参加してくれるので、充実しているのに授業の時間は短く感じます。
2.jpg
【授業内容】
まず、プログラムの全般的なオリエンテーションでは、米国臨床薬学の歴史と発展の経緯、UICの組織についての導入教育を受けたあと、最初に行うのは患者さんへのインタビューです。
ロールプレイ形式で模擬患者となったUICの臨床教員に対して実際にインタビューを行い、薬学的ケアに必要な情報を得る必要があります。私を含め研修生たちは、教官扮するちょっと意地悪な模擬患者から、英語を駆使して患者背景を聞き出し、何とか情報を獲得することができました。
以降は本格的な疾病各論と臨床薬学のレクチャーが入ってきますが、2週目の頭には、UICの様々な施設を巡るガイド付きツアーがあります。UICはイリノイ州で最大の医療系学部を擁する公立大学であるため、医・歯・薬・看護学部等のほか、5つの大規模な臨床教育病院が集まっており、薬学部はこれらの関連施設に囲まれた立地条件にあります。また、UICが運営する門内薬局や門外薬局があるのも特徴的で、実際に薬剤師たちの活躍を見ることができます。
3.jpg
【附属病院と薬剤師外来における専門薬剤師の活躍】
プログラムの終盤では、レクチャーの合間に、附属病院における病棟薬剤師への同行や薬剤師外来に同席をさせていただき、臨床薬剤師の活動を間近で見ることができました。
病棟回診の前後で実施されるカンファレンスでは、臨床薬剤師の発言力、影響力の大きさに圧倒されます。病棟での臨床薬剤師業務は(医師に代わって検査オーダーや処方指示をする)手順や対処法,具体的な行動指針が体系的にプロトコール(手順書)で管理されていました。
また、抗凝固療法や心不全など、10以上もあるクリニックの専門薬剤師外来では、治療方針の決定や処方調整に薬剤師が直接関わっています。そして、管理者クラスになると、PharmD以外に経営学修士(MBA)を取得している薬剤師も多く、経営学的な手腕を発揮する土壌が整っていることにも驚かせられます。
4.jpg
【各国のコース参加者と研修中のサポートについて】
研修生の構成は、学部2年生∼大学院博士課程、実務系教員、現役の病院薬剤師まで幅広く、原則的に教員の引率なしで、学生が主体的に研修に参加している点が特徴的です。これを可能にしているのが、UICの充実した受け入れ体制で、プログラムには専属の世話人が配属されています。研修前の準備段階からメール等で頻繁に連絡を取ることができ、初日の空港への出迎えから始まり、滞在先となるUICゲストハウスのチェックイン、シカゴ市内の生活全般に関するオリエンテーション、食料や生活必需品の調達方法から健康管理まで、きめ細かいサポートが受けられます。
8.jpg
【課外活動】
週末には貸し切りのスクールバスで行くショッピングモールへのツアー、週2回のペースで提供される合同ランチ、毎週行われるディナーパーティ、看護学部で同時期に行われるサマープログラムとの合同セッションなど、米国版 “おもてなしの精神” に満ちた数々のレクリエーションが用意されています。期間中には、アメリカ人にとって特別な日、すなわち7月4日の独立記念日となるため、国中がお祭り騒ぎ一色になるのを直に経験できるのもサマープログラムの魅力です。
6.jpg
【まとめ】
今回、教員の立場で参加したのは、私と香港大学のKit Ting Wong博士の2名のみでしたが、共通の感想として、UICの教員たちがプログラム研修生に対して労力を惜しまず、非常に熱心な指導を行っている姿に感心し、刺激を受けました。
このプログラムは、現役の薬剤師が参加しても、米国臨床薬学の概要を網羅的に学ぶ事が可能で、薬学生ならば、将来の目指す薬剤師像を決める貴重な経験となることは間違いありません。
米国の臨床薬学に興味があり、最先端を勉強してみたい学生には特にお勧めしたい研修プログラムです。
7.jpg

 

本件に関するお問い合わせ

東京薬科大学 国際交流センター