未来医療・共生社会創造人育成プロジェクト『BUTTOBE-NEXT』
概要・背景
東京薬科大学では、2021年度からJSTのSPRING事業「東京薬科大学 未来医療創造人育成プロジェクト(Beef Up Toyaku Talents to gO BEyond the Borders。以下、BUTTOBE(ぶっとべ)」に取り組んでいます。本プロジェクトは、変革期を迎えた日本の医療を発展させる優秀な博士人財の育成・輩出を目指し、「創薬」、「医療」、「学術」の3コースでキャリア開発・育成コンテンツを学生に提供してきました。これまでの修了生は、大学・アカデミア、企業、病院などで活躍しています。
2024年度から新たに「東京薬科大学 未来医療・共生社会創造⼈育成プロジェクト(以下、BUTTOBE-NEXT)(事業統括:降幡知巳教授)」が開始となりました。本プロジェクトでは、新たに「地球共生」、「スタートアップ挑戦」を加えた5つのコースを開設するほか、インターンシップの拡充や大学独自の支援プログラムを追加するなど、従来のキャリア開発・育成コンテンツをさらに発展・拡大させました。本プログラムでは、“境界を超えるコンピテンシーの養成”を目標に、薬学・生命科学の専門を基盤に、共栄社会の実現とSDGsに貢献できる多様な博士人財の輩出を目指します。
お知らせ
- 2024年09月06日
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BUTTOBE-NEXT 2024 Boot Camp1を開催しました
- 2024年02月09日
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BUTTOBE 2023 Boot Camp2 ピッチプレゼンを開催しました
- 2023年12月25日
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第2回 東薬×岐阜薬 次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)事業交流会を行いました
未来の医療を担う博士人材たち
未来学術フォアランナー
永川 真也
- 研究科・課程・学年
- 生命科学研究科 博士後期課程3年
- 所属研究室
- 生物工学研究室
- 研究タイトル
- 染色体欠失症の分子機序解明に向けた21番染色体欠失iPSCパネルと評価系の開発
- 研究概要
- 染色体(領域)の数的異常は、様々な発生異常と関連するが、その作用機序は未解明である。染色体異常症の病態モデルとして、患者由来多能性幹細胞(iPSC)株が近年注目を集める一方、染色体欠失症の多くは患者数が少ないためiPSC樹立が難しい。本研究の目的は、1)独自のメガベース染色体削除法による 21番染色体部分欠失ヒトiPSCパネル作成、および2)試験管内分化させた部分欠失iPSCを用いた疾患責任領域同定と分子機序の解明、である。本研究で得られる知見は、非コード領域を含めた新たなゲノム機能の理解に有用であるとともに、有効な治療法のない染色体欠失症の新規治療法開発に貢献すると期待される。
科学技術で困難を打ち破る
今日の生命科学分野はまさに日進月歩で進化しています。しかし、希少疾患では患者数が少なく、発病の機構が明らかでない・治療方法が確立していないといった問題が存在しています。そこで、疾患特異的細胞を樹立し、その細胞を用いて研究を行うことで問題の解決を図ります。私は自身の強みであるiPS細胞とゲノム編集技術を組み合わせた研究により希少疾患の機序解明と新規治療法の開発に貢献していきます。
川添 輝
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程4年
- 所属研究室
- 薬品製造学教室
- 研究タイトル
- 芳香族ポリケチドの生合成にインスパイアされた非天然型ポリケチドの合成とその利用
- 研究概要
- 多置換・多環式芳香族化合物は,生物活性を始めとする分子機能が期待される化合物であるが,その体系的かつ効率的な合成は極めて困難である。この問題に対し,申請者は,芳香族ポリケチド生合成に着想を得た新たな多置換・多環式芳香族化合物の合成戦略を駆使することで解決を図っていく。同時に本研究で得られる生成物は,「擬似天然物」と呼ぶべき化合物群であることから,化合物ライブラリーの構築と機能の探索も進めていく。合成される化合物は,従来法ではまったくアクセスできない構造をもつ芳香族化合物であるため,その特異な分子構造ゆえに発現する未知の性質を探究し,生物活性を含めた新しい分子,機能性の発現を目指す。
未知への挑戦
私は,分子レベルのものづくりを可能にする有機化学に魅了され,研究者への道を歩み始めました。本プロジェクトにおいて,私は独自の合成戦略を利用し,世界で誰も合成したことのない未踏分子の合成研究を進めます。同時に,ユニークで美しい構造をもつ未踏分子の物理的・化学的特性を追究することで,新たな生物活性分子や機能性分子の創出も目指します。
北谷 菜津美
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程2年
- 所属研究室
- 生体分析化学教室
- 研究タイトル
- 細胞から分泌されるエクソソームのリアルタイム計測技術の開発
- 研究概要
- 刻々と変動する生体高分子の動態を定量的に計測することは生命現象を理解するために必要とされる。本研究では、細胞から分泌されるエクソソームを拡散希釈される前に細胞近傍で計測できるシステムを開発する。本計測技術では、エクソソームの動態をリアルタイムで計測できるため、細胞を化学物質や脱分極の刺激を付与した際に、細胞がどのくらいの時間で、どのくらいの個数のエクソソームを分泌したのか明らかにできる。技術開発に求められる要素は、細胞近傍に接近させることのできる微小センサーの開発とリアルタイム計測が可能な技術であり、これを達成するために光ファイバー表面プラズモン共鳴(SPR)センサーに着目した。
計測で切り拓く科学の未来
計測技術の限界に突き当たると、科学および産業の進展は止まってしまいます。しかしながら、計測技術が十分に発展してきた現在においても、計測技術に限界があります。このような社会背景に鑑みて、計測できないものを計測できるような研究者を目指します。分析技術の開発を通して、学術や産業の発展、ひいては社会に貢献します。
兒嶋 洸貴
- 研究科・課程・学年
- 生命科学研究科 博士後期課程2年
- 所属研究室
- 再生医科学研究室
- 研究タイトル
- 異種間キメラにおける自己免疫反応および免疫寛容機構の解明
- 研究概要
- 動物の発生環境を利用した臓器作製法は、現在のところ多能性幹細胞から完全に機能的な臓器を作出できる唯一の方法である。しかし、異種の臓器をもつキメラ動物では1型糖尿病様の血糖値上昇や重度の皮膚炎など、自己免疫疾患様の症状が確認されている。キメラ動物で見られる免疫反応に関して、これまで詳細な解析はされておらず、動物体内での安全な臓器作製法の確立における一つの壁となっている。本研究では、様々な系統のラット-マウス異種間キメラを用い、新たな免疫寛容誘導システムの詳細を明らかにする。本研究は免疫学の新たな知見の獲得のみならず、臓器創生・移植治療の分野に大いに貢献できると考えられる。
研究を新たな医療に昇華する
iPS細胞の発見から再生医療は目覚ましい発展がなされており、iPS細胞由来のミニ臓器や心筋シート、網膜色素細胞のin vitroでの作製が報告されています。私はそれに続くブレイクスルーとして、機能的なヒト臓器の創生を目指して取り組んでいきます。そして将来的には研究と本プロジェクトで得られた知見を活かし、基礎研究を新しい医療に繋ぐ研究者として先進医療に貢献していきたいです。
佐藤 圭恭
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程2年
- 所属研究室
- 薬物動態制御学教室
- 研究タイトル
- トランスポーターを介した臓器連関の解明
- 研究概要
- 臓器連関とは、細胞と細胞、あるいは組織や臓器との間で行われる恒常性を維持するための情報交換機構です。古くから、臓器間の情報伝達は、ホルモンや神経伝達物質などの制御因子とそれらに対する受容体を介して行われることが知られていましたが、最近では、制御因子を標的細胞内へ送達することで情報伝達を行う機構の存在が明らかになりつつあります。本研究では、臓器連関における制御因子の膜透過を制御するトランスポーターを同定することで、制御因子の膜透過を説明し、臓器連関の詳細なメカニズムの解明に取り組みます。
新たな常識を創造する
私は将来、アカデミア研究を通じて学問にパラダイムシフトを起こすような研究者になりたいと考えています。薬学や生命科学は、今までに積み上げられてきた数々の知見に基づく一方、その常識とされるものの中には根拠が不明確なものもあります。そのような常識にとらわれることのない、柔軟な着想を基に新たな常識を創造することで、医療の発展に寄与できるような研究をしていきたいです。
松沼 菜摘
- 研究科・課程・学年
- 生命科学研究科 博士後期課程3年
- 所属研究室
- 腫瘍医科学研究室
- 研究タイトル
- HMGA2高発現MDSクローンによる器質化肺炎発症機序の解明
- 研究概要
- 骨髄異形成症候群(MDS)は、造血幹細胞に生じた遺伝子異常に起因して発症する難治性造血器腫瘍である。主病態である血球減少や異形成、急性白血病への移行の他に様々な全身臓器障害を合併することが知られているが、それらの詳しい発症機序はよく分かっていない。High mobility group AT-hook 2(HMGA2)は、様々ながんの進展への関与が報告されているがん遺伝子である。造血器腫瘍においては原疾患の病態増悪因子として知られている。MDSにおいても高発現の症例が報告されているが、病態に及ぼす影響については不明である。本研究では、MDS患者検体およびHMGA2高発現MDSマウスの解析を通じ、HMGA2高発現がMDS病態に及ぼす影響とその分子機序を明らかにすることを目指す。
SDMs; Sustainable Development of Medical Standard
私は、持続可能な医療水準の向上「SDMs; Sustainable Development of Medical Standard」を目指して、基礎研究に取り組んでいます。近年、医療は多くの基礎研究により目覚ましい進歩を遂げていますが、各分野が孤立している現状では今以上の創造性は望めません。今後も発展し続けるためには、研究成果をベッドサイドへと効果的に還元するTranslational Researchや、様々な分野を融合した新発想の基礎研究を強化することが必須です。私は、これらを軸とした基礎研究に邁進し、「SDMs」に貢献します。
田中 美有
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程2年
- 所属研究室
- 薬品化学教室
- 研究タイトル
- ペプチド環化酵素の機能解析と誘導体合成への応用
- 研究概要
- 近年、耐性菌出現により抗菌薬の開発に問題が出ています。抗菌薬の中には微生物の二次代謝産物である環状ペプチドが用いられており、それらは微生物内にある生合成酵素の中の「環化酵素」によって環化されます。環化酵素を有効活用することは様々な活性を有する環状ペプチドの創製に繋がります。しかし環化酵素における基質の認識の機序は未だ明らかになっておらず、環化酵素の機能改変に歯止めがかかっています。本研究では、基質と環化酵素の複合体を再現する技術を開発し、環化酵素における基質認識の機序解明を目指します。
カンカコウソは砕けない
私は、生命の生きる知恵を社会へ還元できる仕組みを目指します。生命は生存競争のために驚くべき工夫を施します。もし、我々がその工夫の原理を明らかにできれば、耐性菌やウイルスの出現等、変わりゆく環境の中で、先手を打つことができます。誰かが犠牲になる前に対応し、誰もが健康に過ごせる社会を構築できることを目標に、BUTTOBE-NEXTで邁進して参ります。
未来創薬イノベーター
大木 聖矢
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程3年
- 所属研究室
- 個別化薬物治療学教室
- 研究タイトル
- 希少疾患創薬の活性化を指向した新規ヒト脳モデルの開発
- 研究概要
- 先天性希少疾患は、患者数が少なくマーケットが小さことから、製薬企業が創薬に最も取り組みにくい疾患の1つです。特に、中枢症状に対しては、血液脳関門を透過して脳内へ移行できる医薬品がなく、ここに大きなアンメットメディカルニーズがあります。本研究では、希少疾患型ヒト脳モデルを開発し、さらにその治療用高分子の脳移行性と薬効の同時評価への応用までを実証することを目的とします。本モデルを用いることで、ヒト外挿性のある薬物の脳移行性と薬理効果の同時評価をできることが明らかとなります。本研究成果は、希少疾患創薬の活性化に繋がることが期待されます。
脳研究, NO LIFE
私は、成果をもって、社会を変え続ける研究者を目指します。ここでの社会とは先天性希少疾患の創薬研究に取り組みやすい社会を指します。このような社会を実現させるために、本研究テーマを足掛かりに、希少疾患創薬のあり方を変える、そんな研究を進めてまいります。また、将来は研究領域全体の戦略を立て続けることを仕事としたいと考えています。今は、研究者としてまだまだ未熟ですが、研究テーマやBUTTOBE-NEXTの多彩なプログラムを通して、BUTTOBE-NEXT採択期間に大きく成長してみせます。
志田 颯
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程4年
- 所属研究室
- 薬品化学教室
- 研究タイトル
- Npys誘導体による新規化学修飾法の基盤構築とその抗体薬物複合体の創製
- 研究概要
- ペプチドやタンパク質の化学修飾は、蛍光分子や放射性タグの導入による分子の高度化のみならず、高分子医薬品の新規創製に繋がる重要な基盤技術である。私は、所属研究室にて独自開発したNpys誘導体によるアミノ酸残基側鎖への反応性を利用した、新たなタンパク質化学修飾法の開発を目指している。本研究では、変異タンパク質を用いた本修飾法の化学基盤構築及び、その応用例として優れた標的指向性を有する高分子医薬品である抗体薬物複合体の創製を試みる。
見た目は子供、頭脳は化学者
私は、自身を魅了した「化学」の力で社会貢献したいと考えています。また、単に組織に属するのではなく、リーダーとして常に成長し続けられる優れた組織の構築に尽力したいという志があります。日々の研究活動の中で、子供のような好奇心を忘れることなく化学者としてのスキルを体得し、いつの日か私の目指す組織の構築、ひいては社会貢献に繋がることを期待しています。
松沼 真澄
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程3年
- 所属研究室
- 病態生化学教室
- 研究タイトル
- 腎臓の線維化における組織常在性マクロファージおよびラミニンの役割の解明
- 研究概要
- 腎臓の線維化は、慢性腎臓病に見られる共通の組織所見である。腎臓だけでなく、線維化した組織の機能回復は高いアンメット・メディカル・ニーズであり、抗線維化に向けたメカニズムの解明が求められている。これまでに、組織常在性マクロファージが線維化に至るプロセスの鍵となることが明らかになっているが、そのメカニズムは十分に解明されていない。最近、組織常在性マクロファージが尿細管周囲の血管基底膜に接着しており、活性化に伴って血管障害をもたらす可能性が示された。本研究では、腎臓の線維化において鍵となる組織常在性マクロファージと尿細管周囲の血管基底膜に含まれるラミニンの役割を明らかにする。
一つひとつ堅実に前進
私が研究に取り組む原点は、治療困難な疾患の発症機序の解明および治療薬の探索を通じて患者のQOLを向上させるより良い医療を提供することにあります。組織線維化は、様々な器官の機能不全に関与するため、関係する患者数の多い病態の一つです。しかしながら、現在、線維化した組織を修復する有効な治療薬は存在しません。私は最先端の技術や手法を習得し、新しい知見を生み出すことで、組織線維化を克服することを目標としています。研究成果を通し組織線維化のもたらす疾患や社会的負担を広く伝えることで、医療現場や医療制度に貢献することを目指します。
村野 周子 アンバー
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程2年
- 所属研究室
- 薬品化学教室
- 研究タイトル
- SARS-CoV-2 の 3CL プロテアーゼを選択的に光酸素化する触媒-リガンドコンジュゲートの開発
- 研究概要
- 新型コロナウイルス (SARS-CoV-2) の 3CLプロテアーゼ (3CLpro) はウイルスが細胞内で複製されるのに必須であり、その不活化剤は SARS-CoV-2 の治療薬となる。この3CLpro を不活化する新しい方法として、我々は光酸素化に着目している。光酸素化とは、光のエネルギーを利用して酸素原子をタンパク質の構造に挿入する化学反応である。申請者らが開発した光酸素化触媒を 3CLpro のリガンド (阻害剤) と連結することで、3CLpro を選択的に光酸素化し、不可逆的かつ触媒的に不活化することができる。これは新しい抗ウイルス戦略に繋がる。
Collaboration of the Japanese Spirit and Globalism
私はバイリンガルである強みを研究に活かします。近年の国際化においては、生まれ育った価値観・国民性を変える柔軟性を問われます。一方で、グローバル化とは国民性をアピールするという矛盾があります。そこで、日本人、国際人としての利点と欠点を実際に経験してきた私は、研究において、日本人の緻密さ、こだわりの強さを残し、国際人の利点である多様性を受け入れるマインドと柔軟さを取り入れることによって、日本の研究者がより社会に貢献できる環境を創りだします。
山口 泰暉
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程2年
- 所属研究室
- 薬物送達学教室
- 研究タイトル
- 超音波応答性遺伝子搭載ナノバブルの開発とがん遺伝子治療への応用
- 研究概要
- これまでに当研究室では、超音波造影と遺伝子導入を可能とする超音波応答性ナノバブル(NBs)を開発してきた。本研究では、従来型NBsよりも安定性の高いアニオン性NBsに対し、カチオン性物質でコーティングすることで全身投与に有用な遺伝子搭載バブル製剤を開発する。さらにゲノム編集技術を融合させ、 ゲノム編集ツールとして働く遺伝子を搭載したNBsと超音波照射の併用により、診断と治療を同時に行うセラノスティクスを可能とする革新的がん遺伝子治療システムの構築を目指す。
本研究により、種々の難治性がん治療のみならず、多岐にわたる疾患の遺伝子治療の突破口となる全身投与型DDS製剤の開発へと繋げていく。
流れを見極め、革新的なアイデアを!
私は、新薬開発研究に携わり、世界中の人々の健康へ貢献する研究者になりたいと考えている。現在、世界情勢や研究進捗によって、自身の研究を取り巻く環境は大きく変化している。したがって、アンメットメディカルニーズに応えるために、積極的に世界の研究者と交流を図りながら最先端の研究に携わり、薬物治療の可能性を広げていきたい。また、今後、先見性や変化する状況に対応する能力を身に着けることで、革新的なアイデアでブレイクスルーとなる研究を行い、多くの患者を救う薬を世に送り出したい。
吉澤 由佳
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程3年
- 所属研究室
- 漢方資源応用学教室
- 研究タイトル
- 植物成分を由来とする新規がん治療薬シーズ化合物の探索研究
- 研究概要
- 日本人の死因の1位は悪性腫瘍 (がん) であり、新たながん治療薬の開発が必要とされている。本研究では、腫瘍細胞に対して細胞毒性を示す新規化合物を植物から単離・構造決定し、それらの細胞毒性メカニズムを解明することで、臨床応用の可能性のある新規がん治療薬シーズを見出すことを目的とする。これまでに、キンポウゲ科 Helleborus niger 全草の成分探索を行い、新規ブファジエノリド配糖体を単離した。ブファジエノリド類は一般的には強心活性が知られているが、がん細胞に対する細胞死誘導メカニズムは未解明な点も多いため、その詳細な作用メカニズムの解明を行う。
植物含有成分の力で世界中の人々の健康と笑顔を守る
植物は様々な生物活性を有する化合物を生合成しています。その中には、未だ見出されていない医薬品シーズとなりうる化合物があると考えられます。私は植物から未知の化合物を発見し、その生物活性を明らかにすることで世界中の人々を病から救う医薬品の開発に繋げることを目標に日々研究を進めています。また、本プロジェクトを通じて私自身のスキルアップを図り、女性研究者として日本の研究の更なる発展を目指します。
池川 馨
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程1年
- 所属研究室
- 薬品化学教室
- 研究タイトル
- ON / OFFスイッチ型光反応性基を用いた生体適応型タンパク質修飾法の開発
- 研究概要
- タンパク質化学修飾法の中でも、光によりタンパク質と共有結合を形成する光反応性基を用いた手法は、生命科学・創薬研究で汎用される手法である。しかし、非特異的反応や高侵襲性の紫外光によるタンパク質変性、DNA損傷などの問題があり、生体内応用には至っていない。本研究では、標的と結合時のみ光架橋反応を起こすしたON / OFFスイッチ機能、そして低侵襲性かつ組織透過性の高い近赤外光による励起特性を兼ね備えた新規光反応性基を開発する。さらに、新規光反応性基による標的タンパク質修飾の有用性を示すと共に、光を用いた新たな創薬モダリティーの確立を目指す。
『つなぐ』で叶える明るい未来
私は、光化学とペプチド化学を専門に創薬研究を行ってきました。本研究では、これまでに培った技術を活かし、『つなぐ』をテーマに新規創薬モダリティーの開発に挑戦します。本研究が「分子」だけでなく、異なる「分野」や多くの「人」をつなぎ合わせ、明るい未来が実現することを目標に尽力します。そして、本研究とBUTTOBE-NEXTプログラムを通して、研究者としても大きく飛躍してみせます。
磯貝 隆斗
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程 1年
- 所属研究室
- 個別化薬物治療学教室
- 研究タイトル
- 新規脳疾患遺伝子治療用マルチ特性アデノ随伴ウイルスベクターの開発
- 研究概要
- アデノ随伴ウイルス (AAV) は、遺伝子治療において最も有望な遺伝子導入手段の1つである。しかし現在、AAVを活用した脳疾患の遺伝子治療では、1) 高いヒト脳移行性を示すこと、2) 様々な脳細胞種に広く遺伝子を導入すること、3) 搭載できる治療遺伝子サイズの制限を突破することが必要とされている。本研究では、これら3つの課題に対して、新たなバイオデザインを施した新規脳疾患遺伝子治療用AAVベクター (マルチ特性AAV) を開発することを目指す。本研究成果は、より有効性・安全性が高い治療を生み出し、AAVベクターによる脳疾患遺伝子治療の新たな基盤技術となることが期待される。
夢は目標に変わり、目標は現実に変わる
私は、生まれつき疾患を抱える人が希望を持てる医療に貢献したいと考えている。先天性疾患や小児疾患は、生まれてきて早期に自身の行動とは無関係に発症し、根本的な治療が存在しないものが多くある。私は、遺伝子治療の発展に繋がる本研究テーマやBUTTOBE-NEXTのプログラムを通して、学びを止めることなく、自身のコンピテンシーを磨き続ける。そして将来、私が目指す医療の実現に向けて、社会へ大きくBUTTOBEる人材になることを目指す。
櫻井 諒一
- 研究科・課程・学年
- 生命科学研究科 博士後期課程 1年
- 所属研究室
- 生物工学研究室
- 研究タイトル
- ゲノム編集誘導性分子多様化によるタンパク質分解誘導抗体の表現型スクリーニング
- 研究概要
- 細胞膜受容体を標的とする薬剤は様々な疾病の治療薬となり得るが、構造が複雑な受容体を1つの結合分子で制御することは難しい。近年、ユビキチンE3リガーゼと標的受容体に結合し、後者を分解するタンパク質分解誘導抗体(PROTAB)が注目されているが、表現型スクリーニングが困難という点がPROTABを含めた抗体創薬の課題である。本研究では、哺乳動物由来の培養細胞上で抗体選抜が可能なMammalian Displayシステムを発展させ、増殖シグナルレポーター遺伝子をもつ多様化PROTABディスプレイライブラリを構築し、標的の特定を必要としないがん治療候補抗体の取得を目指す。
道無き道を行く
私を研究者としての道に誘った抗体は低分子に次ぐモダリティですが、近年では標的分子の枯渇や開発の鈍化などの課題に直面しています。私は従来アプローチでは取得困難である機能抗体の表現型スクリーニングシステムの構築に取り組み、抗体創薬に取り巻く現状の打破を試みます。将来的には抗体だけでなく、様々な創薬プロセスを根本から変えるような革新的な技術創出に貢献できる研究者を目指します。
松村 清香
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程 1年
- 所属研究室
- 応用生化学教室
- 研究タイトル
- 血管性認知症の病態形成における脳血管周囲マクロファージの役割の解明
- 研究概要
- 血管性認知症の病態形成には、脳への物質侵入を厳密に制御する血液脳関門を含む神経血管周囲環境の機能破綻が関与する。組織恒常性に関わる組織常在マクロファージの1つである脳血管周囲マクロファージは、神経血管周囲環境の機能維持に関わると考えられるが、その役割の詳細は不明である。そこで本研究では、血管性認知症モデルマウスを用いて、脳血管周囲マクロファージの詳細な生理学的機能および脳血流量低下を原因とする血管性認知症の病態進展との関連性を明らかにすることを目的とする。また、脳血管周囲マクロファージを含めた神経血管周囲環境のin vitroモデル開発とその応用により、新たな治療薬開発を目指す。
“難治”を“根治”へ
医療の進歩が目覚ましい今日においても、適切な治療が存在せず、病態の悪化・長期化に苦しむ患者が多く存在します。このような状態を打開する一手を自身で見出すために、私は難治性疾患研究の道を志しました。今日の医療は、試行錯誤を繰り返しつつ、一歩一歩成果を積み上げてきた先駆者の努力の結晶です。これらと先端的な発想を組み合わせることで “難治”性疾患が“根治”疾患となる未来を目指します。
山内 勇輝
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程 2年
- 所属研究室
- 薬品化学教室
- 研究タイトル
- 薬剤耐性菌に対する新規治療戦略を指向したタンパク質分解誘導薬の開発とその応用
- 研究概要
- 薬剤耐性菌の急速な増加は、既存抗菌薬の効果低下や新規抗菌薬開発・承認の劇的な遅れが原因の一つである。この課題の根本的解決には新たなメカニズムで作用する抗菌薬が必要である。最近、タンパク質分解誘導薬を利用した標的タンパク質分解(TPD)が注目されており、標的タンパク質が変異した場合にもTPDを可能とする。従って、細菌に対するタンパク質分解誘導薬の創製が、薬剤耐性菌に対抗するブレイクスルーになる可能性がある。本研究では、アシルデプシペプチド系抗生物質を利用した細菌のタンパク質分解誘導薬を創製し、細菌感染症に対する新たな治療戦略への展開を目指す。
分子に込めた情熱が、新たな治療を生む
私は、化学の力を活用して、創薬の視点から社会に貢献したいと考えています。化学の最大の魅力は、自ら創出した分子が新薬として期待される点にあると思います。新薬の創出は非常に険しい道です。しかし、可能性がゼロでない限り努力し、挑戦し続けることが私の使命だと考えています。最終的には、アンメットメディカルニーズの解消に繋がる分子を創り出し、自らの研究を通じて社会貢献に挑戦します。
未来医療社会クリエイター
國枝 美里
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程2年
- 所属研究室
- 薬物動態制御学教室
- 研究タイトル
- 小腸上皮細胞側底膜における中分子ペプチドトランスポーターの同定と機能解析
- 研究概要
- 近年、経口投与可能な新規創薬モダリティとして中分子ペプチド医薬が注目されているが、その腸管における吸収性は低いことが顕在化している。さらに、経口投与製剤の開発においては、小腸上皮細胞の頂端膜だけでなく側底膜における輸送も考慮した高精度な吸収動態の予測や吸収性を高める戦略が必要となる。本研究課題は、小腸上皮細胞の側底膜に局在する中分子ペプチドトランスポーターを同定するものである。さらに、その細胞内局在および機能を制御することで、中分子ペプチド医薬の経口投与製剤の開発に応用できると期待される。
現状に満足せず、未来の常識を創造する
私は将来、「薬学者の薬剤師」として薬剤業務と並行して研究活動することで、臨床現場から医療の進展に貢献したいと考えています。さらに、Reverse Translational Research(臨床問題の解決志向型の研究)を実践できる研究・教育・指導体制をもつ病院薬剤部をつくりたいと考えています。最終的には、日本の臨床薬剤師も研究活動することが常識となった薬剤師業界への改革を目指しています。本プロジェクトを通じて私自身の研究スキルを向上させるだけでなく、組織マネジメントや社会学などの幅広い分野へ見聞を広げることで、夢への第一歩を踏み出します。
未来地球共生デザイナー
鈴木 健斗
- 研究科・課程・学年
- 薬学研究科 博士課程 2年
- 所属研究室
- 免疫学教室
- 研究タイトル
- 肺真菌症の制御に向けた多糖抗原高感度定量法の開発と応用
- 研究概要
- 真菌の細胞壁は、環境ストレスから細胞を保護し、真菌の生存・増殖に重要な役割を果たしている。さらに、細胞壁を構成する多糖は菌種によって異なり、ヒトの体内では抗原として作用して生体防御反応を誘導する重要な分子でもある。従って、これらの多糖は真菌感染症の診断法や治療薬の標的にもなり得る。本研究では、真菌細胞壁を構成する多糖の特異的結合プローブを開発し、真菌細胞壁の詳細な構造解析を可能にする。本研究の成果は真菌感染症診断法の開発、抗真菌薬の開発、農薬の開発等、幅広い応用が期待される。
- BUTTOBEでは、単に研究を行っているだけでは身に付けることができない知識や能力を習得することが出来ました。とりわけ、自身の研究成果をビジネス化し、社会展開を目指す上で重要な考え方(ビジネスマインド)を学ぶことができたのは私にとって貴重な経験でした。私の信念は「研究の力で病に苦しむ人を救う」です。研究成果を論文として発表することは研究者にとって必要不可欠ですが、私はそれ以上に研究成果が社会に還元され、人々に届くことが大切だと考えています。BUTTOBEで得た知識を今後さらに磨いていき、社会に変革をもたらすような研究者を目指していきます。本プロジェクトを企画・遂行してくださった多くの先生方に、この場を借りて深く御礼申し上げます。ありがとうございました。
- 本プロジェクトに参加することで広い視野で物事を考えられるようになりました。その背景には、多くのプログラムを通じて対自己スキルや対課題スキルを習得するだけでなく、自分自身の将来などを見つめ直す時間が設けられており多くの人の意見や話を聞くことができたためと考えています。また、BUTTOBE 活動では定められたプログラムだけでなくセルフプロデュースなどで自身にあった活動を行うことができました。今後はBUTTOBE 活動で学んだことを活かし研究者として活躍していきたいです。
- 1年半BUTTOBE採択生として活動し、採択前と比較して様々な側面で主体性をもてるようになったと感じる。これまで受講してきたいずれのプログラムも自身の成長に寄与したと考えているが、特にBUTTOBEアクションプログラムはその最たるものである。私自身が「やってみたい!」と思ったことに対して先生方や事務局が支援してくれるため、挑戦することに自信と喜びが持てるようになった。
私はBUTTOBEの選考時に、「学際性の構築」、「(フロントランナーとしての)資質の向上」、「海外経験」の3つを自己育成プランとして掲げた。1年半という期間では十分に達成できたとは言えないが、BUTTOBE活動により、その達成に近づいていると感じている。
またBUTTOBE活動を通じて研究科、学年を超えた意見交換ができたことも意義深かった。他の採択生たちの将来像や夢を聞くことで、自らの研究活動やキャリアパスの構築に対するモチベーションの向上にも繋がった。 - BUTTOBEは博士課程学生の挑戦を後押しする事業であり、今後も未来の医療を担う博士人財の創出のために本支援事業の継続を望む。
- BUTTOBE生として採択され、約1年半に渡り、自らのキャリア開発を行う機会を得ることが出来ました。漠然と考えていた将来の目標を自分の言葉で表現し、学生内で共有することによって、より明確なビジョン、研究者として自分がやるべきミッション、研究を遂行する上でのバリューを確立することが出来ました。
卒業しても変わらずに、感染症で苦しむ人々のための研究を行うことを自らのミッションとして新天地でも研究に励みたいと思います。
最後にBUTTOBEの運営に関わって下さった先生方、事務局の方々にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。 - 今年度はデータベース作成および新規スクリーニング法の確立を行った1年となった。新たな研究計画の立ち上げということもあり、研究者として重要な研究構想の立ち上げ〜実行までを経験できた重要な1年となった。その上で研究奨励費および研究費の支援は、これら経験の精神的支えとなり、この機会を与えてくださったJSTおよび先生方、職員の方々には感謝しかない。
プログラムに関しても有意義なものばかりで、発表技術や英語・実践経験など多角的に鍛えることができ貴重な経験となった。これまで実験の効率化や知識収集にとらわれることが多かったが、様々な視点や刺激を受け研究室生活を通して大きな意味が生まれた1年半であったと感じる。関わってくれた博士学生、このプロジェクトを支えていただいた本学の先生・職員の方々に改めて感謝すると共に、これからの人生を通し社会還元に繋げたい。 - BUTTOBE活動では、自身にはなかった考え方を学ぶことができた。特に、bootcampや基礎コースワーク(ビジネスマインドトレーニング等)を通して学んだビジネスの基本的な考え方は、BUTTOBEに採択されなければおそらく知ることもなかったため、本活動を経験できてよかった。このような考え方は、今後の研究人生おいて、研究成果を社会へ展開し、社会を変えていくために重要であるため、意識し続けていきたい。BUTTOBE活動の多くは他大学では実施されないであろうユニークなものであり、この経験を通して、博士人材の中でも少し特殊な人材になったのではないかと感じる。本プログラムを終えた後も、この経験を糧に挑戦し続け、将来BUTTBEるよう頑張っていきたい。
- 全体を通して意義深いと感じた点は、自らではあまり調べたことのない情報・知識を受動的に学べたということです。例えば、基本コースワークでは、ビジネスマインドに基づいた課題解決のプロセスや組織におけるコミュニケーションを知り、また、希望者のみ受講可能な知財教育プログラムでは、特許等の知的財産における基礎知識や、企業・大学における特許との関わりについて学びました。BUTTOBE活動に参加していなければ、これらの知識を得るのは何年も先だったと思います。
さらに、異なる分野の研究者と関わることができたことも有意義でした。それぞれの研究の立ち位置を理解するきっかけとなったとともに、広い視野で物事を考える大切さを実感しました。 - 東京薬科大学 教学IR研究推進課
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真菌感染症の制御を目指して
近年、高度先進医療の発展により易感染状態となるリスクは増大し、真菌感染症の脅威は増しています。一方で、対策は十分とは言えない現状があります。真菌の細胞壁を構成する多糖はヒトの体内で合成されないことから、真菌感染症の診断や治療薬の標的として着目されています。私は真菌の多糖抗原を特異的に検出・捕捉できるツール開発を通じて、新たな診断法や治療薬の開発に貢献します。