ニュース&トピックス 2018年度 薬学部「米国臨床薬学研修」がUCSFにて行われました
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2019.01.25
本学薬学部では毎年、協定校であるカリフォルニア州立大学サンフランシスコ校(UCSF)薬学部を訪問し、二週間の研修を行います。
今年は15名の薬学部5年生が研修に参加しました。
研修中はUCSFの先生方による授業、施設見学、病棟見学などが行われました。
本記事では学生による研修報告をご紹介いたします。
大学の教室で毎日行われた授業では、HIVの治療、精神病疾患を抱える患者、禁煙治療、糖尿病薬、血液がんの免疫療法などについて学びました。
特に精神病疾患の授業では、幻聴を再現した音声を聞きながら色々なことを行い、統合失調患者の体験をしたことが印象に残っています。統合失調を抱える患者が普段どのような苦しみを抱えて生活をしているのか体験したことにより、精神病患者への理解が深まりました。
アメリカは日本とは制度が異なるため、医療を受けるには患者の金銭的な負担がとても大きいです。そのため、どの授業でもコストの話がありました。アメリカの薬剤師は、いかに医療費を削減するかを重視して働いているという事を知り、日本との違いを感じました。
また、UCSF薬学部の学生が普段プロジェクトとしてショッピングモールで行っている健康フェアでの発表を見せていただきました。そこでは発表だけでなく、骨密度や血糖値、コレステロール値の測定も学生が実際に行っているという事で、私たちも実際に測定してもらいました。UCSFの学生に教えてもらいながら私たちが測定する側も体験させていただき、学生と交流しながら楽しく学ぶことができました。
施設見学
UCSFの関連病院やその薬局(Benioff子供病院、Owens薬局、Radio薬局、Robot薬局)個々に合わせた調剤行っている薬局(Koshlands Independent Community Pharmacy)そして、薬学部が持っているHIVとマラリアに特化した研究を行っている研究所(SFGH Drug Studies Unit)を訪れました。
Koshlands Independent Community Pharmacy
カリフォルニアの薬剤師が服薬指導に時間をかけるための制度だけでなく、体制がしっかり整っていることが分かりました。また、驚いたのは8割の患者さんに調剤した薬を郵送していることです。服薬指導は電話で行い、さらに説明を添付することで郵送を可能にしていました。
Radio薬局
日本では放射線技師が行う仕事をカリフォルニアでは薬剤師が担っており、薬剤師の仕事の広さを感じました。被ばく対策も日本とは異なり、ガウンやマスクでなくデバイス自体に被ばく対策機能を施していることに文化の違いを感じました。
Benioff子供病院
心臓血管外科の見学をしました。小児に特化した病院ということで、子供の恐怖感をなくすためか病院内の装飾やデザインにとても気を使っていることが分かりました。対象が小児であるということから治療方法にも特徴があり、小児の自然治癒力が乏しいことから何度も切開しなくて済むように手術部を縫合せずに保存し、治療が完全に終了してから縫合するということを聞き、とても驚きました。
Owens薬局
完全機械化された施設で調剤を行い、UCSFの経営する4つの病院によく使用する薬剤を配達するという役割を担っていました。すべての薬剤がバーコード管理されており、薬の調剤やピッキング、そして輸液の混合までを機械が行っており近未来的な感じがしました。
病棟体験実習
今回の研修では2日間、UCSFメディカルセンターでの病棟体験を行いました。それぞれ各病棟に分かれ、UCSFの4年生やレジデントの方が薬剤師の業務やシステムについて丁寧に教えて下さいました。病棟では医師・薬剤師・看護師を含む様々な医療従事者が患者さんにとって、より良い治療を提供するために熱心に意見を交換していました。職位に関わらず、平等に意見を交換していた点が印象的でした。また、カリフォルニア州では薬剤師の職能が高く認められているため、一部の処方権を持つなど、日本と比べより治療に関わっている印象を受けました。能力の高い薬剤師を育成するためのシステムがきちんと構築されており、レジデントのみならず学生も実践的に実習を行っていました。学生であっても1人で薬剤師業務を行い、疑問や不明点は指導薬剤師と共に解決できるシステムが斬新で非常に発展的だと驚きました。
2日間の体験実習を通して、カリフォルニアの先進的な医療現場を実際に体験し、非常に貴重な時間になりました。
最終日にはUCSFの先生方や学生の皆さんがFarewell partyを開いて下さいました。学生1人1人に修了証を頂き、今後のモチベーションになりました。多くの知識と貴重な経験ができた充実した2週間でした。