ニュース&トピックス 東京薬科大学の酵母を利用したクラフトビールを高尾ビール(株)が発売 ~ビール作りを通じて八王子地域の活性化を推進~|プレスリリース

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2021.05.31

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プレスリリース

東京薬科大学の酵母を利用したクラフトビールを高尾ビール(株)が発売 ~ビール作りを通じて八王子地域の活性化を推進~

【ポイント】
  • 八王子市に拠点を置く東京薬科大学と高尾ビール株式会社が共同製作したクラフトビールが発売される。
  • ビールの酵母は、東京薬科大学で採取された「東薬花の酵母」を100%利用している。
  • 「東薬花の酵母」を用いたビール作りを通じて、八王子地域の活性化を推進する。
概要

 八王子市に拠点を置く、東京薬科大学(学長:平塚明)と高尾ビール株式会社(代表取締役:池田周平)※1が共同で製作したクラフトビールが、2021年6月1日(火)に発売となります。
 東京薬科大学 生命科学部 食品科学研究室(旧・応用微生物学研究室、担当:志賀靖弘助教)は、2016年秋より、卒業研究の一環として、東京薬科大学キャンパス内に生息している植物や果実、のべ747種から、出芽酵母菌S. cerevisiaeの少なくとも16系統を単離・分類し、「東薬花の酵母」と名づけ、その特性の評価を行って来ました。また、東京薬科大学イノベーション推進センター(センター長:渡邉一哉教授)では、URA※2が中心となり、研究成果の地域への還元として、それらの酵母を用いた発酵食品の開発を目指して来ました。
 高尾ビール(株)は、“WE HIKE LOCAL,WE DRINK LOCAL”を掲げ、地元農家や農場とのコラボレーションを重ねており、高尾に根差したビール作りを進めてきました。
 八王子市産業振興部企業支援課でのマッチングの結果、地域活性化を共に掲げる高尾ビール(株)と東京薬科大学が「東薬花の酵母」を用いたクラフトビールの共同開発を実施することになりました。

20210531takaobeer1.jpgクラフトビール「やまもも」

 高尾ビール(株)と東京薬科大学では、2019年9月より、「東薬花の酵母」を用い、ビールへの適応性の評価を開始し、予備試験の結果を踏まえ、2020年1月から、八王子市の「市の花」であるヤマユリの酵母を用いた試作品「YMY#2」の醸造を開始しました。2020年4月には、ノハラアザミの酵母と市販のビール(エール)酵母を順次使用する「ハイブリッド方式」で醸造したプロトタイプ「AZM#1」を完成させ、試験的に販売いたしました。
 さらに、研究開発を進め、2020年9月には、コラボレーションの第一弾として、ヤマユリの酵母とビール(セゾン)酵母のハイブリッド方式で醸造した、クラフトビール「やまゆり」の販売を開始しました。このビールは、東京薬科大学のオリジナルラベルを貼付した限定350本が八王子市内の酒販店で販売され、すぐに完売になるほどの人気になりました。

そして、今回、コラボレーションの第二弾としてヤマモモの酵母を100%用いたクラフトビール「やまもも」をリリースすることになりました。ヤマモモは、ブナ目ヤマモモ科ヤマモモ属の常緑樹で、毎年6月頃に暗赤色の果実を付けます。またその花言葉は、「教訓」「一途」など、大学発のクラフトビールにふさわしいイメージを持つものです。「やまもも」は、ヤマモモの酵母が生成する華やかな香りとほのかなスパイシー感が特徴のビールです。梅雨の時期の高い湿度からくる不快さを、一瞬で吹き飛ばすような爽やかさを感じさせる味わいとなっています。さらに、東京薬科大学薬用植物園(担当:三宅克典講師)で栽培されたホップも原料の一部として使用しています。「やまもも」のラベルのデザインは、第一弾「やまゆり」に引き続き、八王子市在住のイラストレーター福岡和政氏が担当しました。それぞれの酵母を育んだ花や果実を、温かみのある線や色でスケッチしたものです。

20210531takaobeer2.jpg東京薬科大学で栽培されている
ヤマモモ

 2018年4月のビールの定義変更や、2020年10月のビールの税額引き下げ、さらには世界的なクラフトビールブームも追い風となり、国内のクラフトビール市場は近年右肩上がりで成長を続けています。「八王子」というキーワードの元で研究開発されている「東薬花の酵母」を使用したクラフトビールのシリーズは、東京薬科大学や高尾ビール(株)が拠点を置く八王子地域への研究成果の還元という当初の目的のみならず、原料として使用する地域特産の農産物の生産者との新たな連携や、八王子市を訪問する観光客向けの土産品としての需要など、八王子地域全体の振興へ寄与することが大いに期待されます。
 本ビールは、2021年6月1日(火)より、順次、八王子市やその周辺地域の酒屋で、合計900本が販売されます※3

今後の展開

 高尾ビール(株)、東京薬科大学では、「東薬花の酵母」を用いたクラフトビールのシリーズを継続していくこととしています。その目玉として、高尾ビール(株)では、「東薬花の酵母」と八王子産のビール麦・ホップと副原料(フルーツ等)を使用した、東京・八王子産原料100%ビールの醸造を計画しています。さらに、過去にも使用したヤマユリやノハラアザミの酵母を100%用いたビールの醸造を始め、新たにカンヒザクラ(寒緋桜)や薬用植物園で栽培されているバナナの花から単離した酵母を利用したビール醸造も計画しています。今後も、高尾ビール(株)、東京薬科大学では、地域に根差したビール作りを推進し、八王子地域の活性化に貢献していきます。

  • ※1
    高尾ビール(株)は、2017年に操業を始めた小規模ビールメーカーで、地場の農作物を活かしたビールづくりを行っています。高尾駅前に直営店舗”高尾ビールタップルーム”と八王子市下恩方町に醸造所”高尾ビールおんがたブルワリー”を構えています。
  • ※2
    東京薬科大学イノベーション推進センターは、研究成果のアウトリーチ活動の推進を目的として、2020年4月に設置されました。URA(University Research Administrator)が中心となり、企業と研究者のマッチングやサイエンスコミュニケーション活動を展開しています。
  • ※3
    販売店の詳細は、高尾ビール株式会社ホームページをご確認ください。
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東京薬科大学 総務部 広報課

 

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東京薬科大学 生命科学部 食品科学研究室 志賀靖弘 助教