新型コロナウイルス研究 世界を救う

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“世界を救うのは、私たちだ” という使命感のもとに

2020年初めから蔓延してきた新型コロナウイルス感染症は、世界中の国々で医療、健康上の深刻な脅威のみならず、経済面も含めた広範な市民活動の大きな障害となっています。現在、いくつかのワクチンが開発され、ワクチン接種者の割合が増えてきていますが、未だ感染者は増え続け、経済活動を再開することが困難な状況にあります。さらに、より感染性が高く、免疫から逃れる変異株の出現が相次いでおり、ワクチンのみでこの感染症を封じ込めることは不可能と考えられます。従って、PCR検査体制の整備やワクチンに加え、新型コロナウイルスに感染した後に使用できる治療薬の必要性が強く認識されています。東京薬科大学では世界中に蔓延する新型コロナウイルス感染症の危機から救うため、治療薬、ワクチン、検査分析方法の開発に向け、日々研究者が弛まぬ努力を続けています。

東薬が行う新型コロナウイルス研究
  • 治療薬開発
  • ワクチン開発
  • 検査・分析

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注目を浴びる東薬のコロナ治療薬研究を紹介

SARSコロナウイルスプロテアーゼ阻害剤 “YH-53”

  • 薬学部
  • 治療薬開発

薬学部 林 良雄 教授

ウイルスが有するプロテアーゼ(蛋白質分解酵素)の阻害薬は、AIDSやC型肝炎の特効薬です。そして、COVID-19の病原体SARS-CoV-2も独自のプロテアーゼ(3CLプロテアーゼ)を有しており、その増殖に必須となります。したがって、3CLプロテアーゼ阻害薬はCOVID-19治療薬の最も有望な候補であり、ウイルス増殖抑制によりCOVID-19の重症化も軽減できると言われています。我々の研究では、この3CLプロテアーゼ阻害薬であるYH-53を基盤としてSARS-CoV-2 3CLプロテアーゼの選択的新規阻害剤のさらなる創製研究を進めています。

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Pin1阻害化合物から新型コロナウイルス感染症治療薬の開発を目指す

  • 生命科学部
  • 治療薬開発

生命科学部 伊藤 久央 教授

プロリン異性化酵素は、アミノ酸であるプロリンがタンパク質中でシス-トランス異性化を起こすことを触媒する酵素です。プロリン異性化酵素にはシクロフィリンやFKBP、そしてPin1が知られています。シクロフィリンやFKBPは、それらに作用する医薬品が既に開発されていますが、Pin1を阻害する化合物で医薬品となっているものはまだありません。以前からの研究で、複数のウイルスの増殖にPin1が関与していることが報告されていました。我々は、広島大学 医学部および東京大学 創薬機構と共同でPin1と新型コロナウイルス増殖の関係を調べ、Pin1を欠失させた細胞では新型コロナウイルスがほとんど増殖しないことを見出しました。

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新型コロナウイルス対策支援事業

東京薬科大学では上記の研究成果に加え、新たな研究シーズを生み出すことを目的として、学長リーダーシップに基づき「新型コロナウイルス感染症対策支援事業」を立ち上げ、様々な研究支援を行っています。

3CLプロテアーゼ阻害剤の効率的合成および阻害活性評価法の開発

  • 薬学部
  • 治療薬開発

薬学部 今野 翔 助教

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はヒトの細胞に侵入したのち、まずヒト細胞内のシステムをハイジャックして増殖を開始します。この増殖過程で、ウイルスは「3CLプロテアーゼ」と呼ばれるウイルス由来のタンパク質分解酵素を利用します。SARS-CoV-2が増えるために3CLプロテアーゼは必要不可欠な酵素であり、この酵素の機能を止めるとウイルスは増殖できなくなります。また、ヒトは類似の性質を示す酵素をもっていないことから、3CLプロテアーゼは有望な創薬標的といえます。私たちは、ABPによる標識の強弱を様々な阻害剤間で比較することで、細胞膜を透過し、かつ強く3CLプロテアーゼと結合する阻害剤を簡便に探索可能になると期待し、日々研究に取り組んでいます。

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超音波応答性ナノバブル技術を応用したDNAワクチンシステムの開発

  • 薬学部
  • ワクチン開発

薬学部 多田 塁 講師

ワクチンは特定の疾病に対して特異的な免疫応答を引き起こす生物学的製剤の一種で、主に感染症の予防や重症化の軽減のために広く用いられています。ワクチンは人類史上最大の発明の1つと言われ、多くの命を守っています。ところが、現在ワクチンで予防可能な感染症は20種類強しかないのが現実です。したがって、特に高病原性のウイルスや寄生虫に対するワクチン開発が切望されています。私たちの薬物送達学教室では、脂質ナノ粒子の開発を通じて次世代ワクチンとして期待される粘膜ワクチンや超音波応答性ナノバブルを用いたDDSの研究開発をおこなっています。私たちのこれら研究基盤を融合することにより、新しいタイプの核酸ワクチンの開発に繋がると考えて研究をおこなっています。

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遺伝子検査システムのユビキタス化を。分析装置の開発から安心安全の社会を目指す

  • 薬学部
  • 検査・分析法開発

薬学部 森岡 和大 助教

新型ウイルスの流行初期や変異株の出現時には、爆発的な流行を最小限に抑えるための徹底したクラスター対策が必要です。クラスター対策には、できるだけ多くの国民を対象として遺伝子検査を実施することが重要であると盛んに叫ばれてきました。しかし、これは現在においても実現されておらず、課題として残されています。その理由として、遺伝子検査には大型かつ高価な専用装置(リアルタイムPCR装置など)や専門性の高い知識・技能を習得した検査従事者の技術が必要となることが挙げられます。私たちの研究室では、“いつでも” “だれでも” “どこでも” 簡便かつ迅速に遺伝子検査を実施できるよう、ガラスキャピラリーを反応容器として利用する新しい遺伝子検査技術(キャピラリーPCR)の確立とキャピラリーPCRシステムの開発を進めています。

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本件に関するお問い合わせ

東京薬科大学 広報課